不整脈について症状や原因、治療法を解説
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手首を軽く押さえると、”トクトク”と脈を打っているのを感じると思います。この一定のリズムに乱れが生じることを不整脈といい、脈が速くなったり遅くなったり不規則になったりします。
脈が飛んだり、胸が苦しくなったりなど、不整脈が頻繁に起こると不安になりますよね。実際にも、不整脈は脳梗塞や血栓症のリスク因子になるため、放置せずに病院を受診することが大切です。
この記事では、不整脈の症状や原因から治療法までを解説します。受診すべき症状なのだろうかと迷っている方や、検査や治療に不安があり受診を踏み切れずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
不整脈とは
不整脈とは、一定時間の間に心臓が拍動する回数が多くなったり少なくなったり、不規則になったりする病気です。脈拍を調べる一般的な方法としては、自分の手首に反対の手指をあてて1分間測定します。
また、医療機関で自動血圧測定器を用いて血圧を測定するときには、同時に脈拍も測定しています。脈拍数の正常範囲は安静時で1分間に50~100回程度です。
不整脈の種類
不整脈は、脈拍のリズムのタイプによって3つに分類されます。
- ●頻脈性不整脈
- ●徐脈性不整脈
- ●期外収縮不整脈
それ以外にも、不整脈の起こっている場所によって、上室性や心室性などの分類の仕方もあります。それぞれの特徴についてみていきましょう。
頻脈性不整脈
頻脈とは、脈拍の回数が100回以上/分の状態です。心臓の中で刺激を伝えるための電気信号が作られすぎたり、通常とは別の電気回路を作って過剰に電気信号が送られたりすることで、脈拍の回数が上昇します。
運動したり緊張したりすると一時的に脈拍が上昇する場合がありますが、それらは特に問題ありません。落ち着いた状態で測定して脈拍の回数が多い場合は、頻脈性不整脈の可能性があります。
頻脈性不整脈は、さらに心房細動・心房粗動・心房頻拍や、発作性上室性頻拍、心室細動・心室頻拍に分類されます。心房細動では血栓ができやすくなり、脳梗塞のリスクとなります。
心室細動・心室頻拍は突然死の原因にもなりうる危険な不整脈です。心室は全身に血液を送り出す重要なポンプの役割を担っているので、不整脈が発生すると全身に血液が送り出されなくなり、すぐに心肺停止を起こす危険があります。
通常は正常範囲内にあって、特に激しい運動などしていないのに。急に動悸がして脈拍が上昇するのを感じることがあるかもしれません。短時間の検査ではわかりにくい不整脈の可能性もあるため、このような場合も、医師の診察を受けるようにしましょう。
徐脈性不整脈
徐脈とは、脈拍の回数が50回以下/分の状態です。心臓の中で刺激を伝えるための電気が作られなかったり、うまく伝わらなくなったりして脈拍の回数が低下します。徐脈は、さらに洞不全症候群と房室ブロックに分類されます。重篤な場合は失神したり、意識を失ったりすることもあります。
期外収縮不整脈
期外収縮とは、脈拍のリズムが乱れたり、脈拍が飛んだりする状態です。加齢とともに、多くの人に見られるようになります。
通常は経過観察する場合が多い不整脈ですが、回数が多かったり、何度も繰り返したりする場合は治療が必要になってくることもあります。心室性期外収縮は、心室頻拍や心室細動など危険性の高い不整脈につながる可能性もあり、必要に応じて治療がおこなわれます。
不整脈の原因
不整脈の原因には、以下のようなものがあげられます。
- ●心臓の機能異常
- ●加齢
- ●過度の飲酒
- ●運動不足
- ●過剰なストレスや睡眠不足
- ●カフェインと喫煙
日常生活の中で注意できるものもあるので、原因として思い当たる場合は生活習慣を改善してみましょう。
心臓の機能異常
心臓の刺激伝達をおこなう電気信号に異常が発生すると、不整脈が起きます。心筋梗塞や心筋症などの心臓の病気は、血管や心筋の病気であって、心臓の刺激伝達系の病気ではありません。ところが、二次的に電気系統の異常が生じて不整脈が起きやすくなります。
加齢
加齢によって、心臓の刺激伝達系の機能が低下し、不整脈が起きやすくなります。
高血圧と糖尿病
高血圧や糖尿病の方は、心房細動を起こしやすいといわれています。生活習慣の改善や薬物治療によって、血圧や血糖値のコントロールをおこなうようにしましょう。
飲酒
飲酒によって不整脈を引き起こすリスクが上昇する報告が多くあり、過度な飲酒は控えるべきだと考えられています。また、最近の研究では、1日1杯程度の飲酒でも不整脈の発生リスクの上昇に関係性することが報告されています。いずれにしても、アルコールと不整脈の発生には関係があり、過度な飲酒は控えた方が良いといえます。
運動不足
心臓は筋肉でできている臓器です。運動不足により心臓の筋肉が衰えると、脈拍が弱まったり、送り出される血流が少なくなったりすることから、不整脈の原因になるといわれています。
適度な運動は心臓の機能を改善し、心肺機能を向上させます。特に30分以上の有酸素運動が適していますので、運動習慣のない方は、水泳やウォーキングなどを取り入れてみましょう。
過剰なストレスや睡眠不足
強いストレスや長期間にわたるストレスがかかると、交感神経がうまく働かなくなり、心臓のリズムが乱れやすくなります。疲労や睡眠不足もストレスにつながる一因であり、生活習慣を整えることが不整脈を防ぐために重要です。
カフェインと喫煙
カフェインの摂取や喫煙も不整脈を引き起こすリスク因子となります。ストレスや口寂しさからコーヒーを多く飲んでいる方は、適度な量に抑えるかカフェインレスのものを選択してみると良いでしょう。また、喫煙は多くの病気のリスク因子であり、禁煙を心がけるようにしましょう。
不整脈の症状
不整脈には、主に以下のような症状があります。
- ●動悸
- ●息切れやめまい
- ●胸痛
- ●失神や意識消失
不整脈を感じることが多い方は、自覚症状のチェックや脈拍の測定をおこない、病院受診の際に症状を正確に伝えられるようにしましょう。ここでは、不整脈の症状と、脈拍の正しい測定方法をお伝えします。
動悸
頻脈性不整脈では、胸のあたりがドキドキするような動悸が繰り返し起こるようになります。
息切れやめまい
徐脈性不整脈では、全身に送られる血流が減るため、体を動かしたときに息切れやめまいの症状が起こりやすくなります。頻脈性不整脈でも、息切れやめまいを感じることがあります。
胸痛
期外収縮不整脈では、脈拍が飛んだ時に、一瞬だけ胸のあたりに痛みを感じたり、不快感や圧迫感を覚えたりすることがあります。ほとんどの場合心配はいりませんが、頻回で繰り返されるような場合は医師の診察を受けるようにしましょう。
失神や意識消失
重症の頻脈性不整脈や徐脈性不整脈では、失神したり意識を失ったりすることがあります。特に心室細動・心室頻拍は、意識消失後に心肺停止し、突然死の原因にもなりうる危険な不整脈です。
動悸・息切れ・めまい・失神など脈拍の異常を感じたら、一度医師の診察をうけておくことが重要です。突然の心肺停止を防ぐためにも、脈拍や心臓の拍動に異常を感じたら、早めに医療機関に行くようにしましょう。
脈拍の正しい測定方法
自分でできる脈拍の正しい測定方法を身につけましょう。毎日の生活の中で安静時に測定して自身の健康チェックをおこないながら、もし動悸や息切れを感じて不安になった場合もすぐに脈拍を測定できるように練習しておきましょう。
- 1.人差し指・中指・薬指を、反対の手の平の親指の下側の手首にあてて、脈が触れるのを確認します。この位置に動脈があり、ここは脈拍を測定するときに一般の方でも脈がわかりやすい場所です。
- 2.21分間脈拍を測定し、途中で脈が飛んだりリズムが乱れたりしないかを確認しながら、回数を数えます。毎日の脈拍や、どんな時に動悸がして脈拍がどれくらいだったかなどを記録しておくと、診察を受ける際に非常に役立ちます。
不整脈の検査方法
不整脈の検査方法は、心電図検査をはじめとして胸部レントゲン検査、血液検査、ホルター心電図、運動負荷心電図、心臓超音波(エコー)検査、心臓電気生理検査などをおこないます。ここでは、不整脈の検査方法について解説します。
心電図検査
心電図検査とは、ベッドに横になり安静な状態で、手首、足首や胸などに電極を取り付け、心臓の動きを心電図として記録する検査です。心電図の波形によって不整脈のタイプを見分けるのに使用します。ただし、一時的にしか発作が起こらない心房細動などの場合は、心電図だけで診断するのが難しいということもあります。
ホルター心電図検査
ホルター心電図検査とは、小型の心電計を体に装着して持ち歩き、活動時や就寝時などの心電図を24時間記録する検査です。心電図検査のような短時間の検査ではわからなかった不整脈が発見される場合もあります。
運動負荷心電図検査
運動負荷心電図検査では、運動しているときに心電図がどのように変化するのかを検査します。階段の上り下りや、自転車をこいだり歩いたりして体に負荷をかけながら心電図を記録します。運動しているときだけ発作が出るような不整脈は、この検査で発見されることがあります。
心臓超音波(エコー)検査
心臓の超音波検査では、心臓が動く様子を確認できます。心臓の状態を確認し、不整脈につながるような心臓の病気がないかを調べます。
心臓電気生理検査
心臓電気生理検査は、不整脈診断においては非常に重要な検査方法で、その後の有効な治療法の選択にも役立ちます。先端に電極のついた細い管(カテーテル)を足の付け根または鎖骨の下の血管から挿入し、心臓の中まで到達させます。
その後、カテーテル先端の電極を心臓の内側の壁に接触させることで、心臓内のいろいろな場所での詳細な心電図が得られます。また心臓を電気的に刺激した場合の反応を確認することもあります。
検査には麻酔が必要であり、時間も1〜2時間程かかります。そのため、不整脈があることが判明していたり、可能性が高かったりする場合に実施されます。
不整脈の治療法
不整脈の多くは治療の必要がないものですが、脳梗塞や血栓症を引き起こす不整脈や、心肺停止して突然死を招く不整脈など、重篤な経過をたどる可能性のある不整脈など、治療が必要な場合もあります。現在おこなわれている不整脈の治療は、主に4つあります。
- ●薬物療法
- ●カテーテルアブレーション
- ●ペースメーカー
- ●植込み型除細動器(ICD)
このほかに、外科的手術により、不整脈を起こす異常な刺激伝達の電気信号回路を断ち切る方法もあります。ただし、手術による体への負担が大きいことから、同時に他の手術も実施するときや、他の治療法では改善しなかったときに選択されます。それでは、それぞれの治療法について解説してきましょう。
薬物療法
不整脈の薬物療法は、主に頻脈性不整脈に対しておこなわれます。異常な電気信号を抑え脈拍を整えることで、不整脈を起こしにくくします。抗不整脈薬や血栓予防の薬、血圧を下げる薬や狭心症の薬などを症状に合わせて使用します。
カテールアブレーション
カテーテルアブレーションは、頻脈性不整脈の治療に使用されています。足の付け根などから心臓まで血管を介してカテーテルを挿入し、カテーテルの先端についた電極で、異常な電気信号回路に熱を加えて焼く方法です。これによって異常な回路を遮断し、正常な刺激伝達がおこなわれるようになります。
ペースメーカー
ペースメーカーとは、心臓に電気信号を与え、人工的に心臓を動かす小型の装置です。主に徐脈性不整脈の治療に使用されます。ペースメーカーを胸部または腹部の皮膚の下に埋め込んで心臓と接続することで、収縮をコントロールします。
植込み型除細動器(ICD)
植込み型除細動器は、心臓の頻拍の発生を検知すると、自動的に電気刺激や電気ショックで頻脈を停止させ不整脈が停止するように働きます。心室頻拍や心室細動による突然死を予防するために、それらの発生リスクの高い不整脈では植込み型除細動器が治療方法として選択されます。
まとめ
ここまで、不整脈の症状や原因から治療法までを解説してきました。自覚症状だけでは不整脈とわかりにくかったり、そもそも症状に気づきにくかったりして、不整脈を放置したまま生活を送っている方も少なくありません。
動悸、息切れ、めまいや胸の違和感といった症状をたびたび感じる場合は、一度医師の診察を受けることをおすすめします。また、日頃から不整脈の原因となりうる生活習慣を改善し、自分の脈拍を測定できるようにしておくことも重要です。
ヒロオカクリニックでは、不整脈に関する診察や治療をおこなっております。心電図検査をはじめとして、ホルター心電図、エルゴメーターによる負荷心電図検査、心臓超音波検査などが可能です。お困りの方は、循環器内科を予約のうえご相談ください