アトピー性皮膚炎の原因とは?症状や治療法について解説
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かゆくて夜も眠れない……。アトピー性皮膚炎のかゆみは強く、眠れない夜を過ごした方もおられるのではないでしょうか。
アトピー性皮膚炎は独特の特徴を持った皮膚炎です。特に大人のアトピーは治りづらく、長引く傾向があります。しかしながら、悪化する原因や改善する方法などを知っておくことで、辛いかゆみにも対処しやすくなるでしょう。
この記事ではアトピー性皮膚炎の特徴や、症状を悪化させないためのスキンケアの方法、注意したい食事のことについて解説しています。アトピーでお困りの方はぜひ、最後までご覧ください。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、強いかゆみを伴う湿疹が出現するアレルギー性の皮膚疾患です。良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、一年中季節を問わず慢性的に発生します。
乳幼児期では4か月児で12.8%、3歳児で13.2%、学童期では小学1年生で11.8%、小学校6年生で10.6%、大学生では8.2%と年齢が上がるにつれて少なくなっているのが特徴です。しかし一方で大人では20歳代で10.2%、30歳代が8.3%、40歳代が4.1%、50代と60代とで2.5%という調査結果があり、広い年代でアトピー性皮膚炎が見られることがわかります。
アトピー性皮膚炎の特徴
アトピー性皮膚炎の特徴は、肌がカサカサとしていて乾燥していること、かゆみを伴った赤いブツブツができたり、掻き壊すとジュクジュクと水が出たり、ボロボロと皮がめくれてくるのが特徴です。良くなったり悪くなったりを繰り返すうちに、肌がどんどんゴワゴワになり硬くなっていきます。
アトピー性皮膚炎の症状が出やすい部位
アトピー性皮膚炎の湿疹は体の左右対称に出るのが特徴です。特に湿疹があらわれやすいのは肘の内側、膝の裏、背中、首、顔、頭などです。年齢と共に、湿疹の出やすい場所は変化していきます。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎の原因はよくわかっていません。アトピーとは「不思議な」とか「よくわからない」という言葉が語源です。健常な人では気にならない程度の刺激にも強い反応を示します。
もともと生まれ持った体質やアレルゲンとなるペットの毛、雑菌、食べ物やダニやカビ、ホコリなどのハウスダスト、ストレスなどが絡み合って発症すると考えられています。次の項では、それらの要因について取り上げます。
肌バリアの低下
アトピー性皮膚炎の方の肌は常に乾燥しています。正常な皮膚は肌バリアが働くため、アレルゲンとなるものに触れても肌の内部への侵入を許しません。それに対してアトピー性皮膚炎の方は肌バリアが弱く、アレルゲンが簡単に肌内部へ侵入してしまうのです。肌内部に侵入したアレルゲンはかゆみや湿疹を引き起こします。
体質的な要因
アトピー性皮膚炎は「アトピー体質」が関係しています。アトピー体質とは、生まれつきアレルギー反応を起こしやすい体質のことです。アトピー体質の人は皮膚症状の他にもアレルギー性の結膜炎やアレルギー性の喘息を持っていることが多く、また家族の中にもそのような人がいるのが特徴です。
さらに、生まれつきかゆみ物質であるヒスタミンを分解する能力が低く、体内に多くとどまっている状態であるということもわかっています。また、アトピー体質の人は皮膚の保湿を担うセラミドを作る能力が極めて弱いのも特徴です。アトピー体質の人のセラミドの量はそうでない人の半分しかないともいわれています。
物理的な要因
アトピー性皮膚炎の原因となる物質的な要因にはさまざまなものがあります。食べ物、ダニやホコリ、カビなどのハウスダスト、ペットの毛やフケなどに触れることによっても悪化することがわかっています。
また自分の髪の毛やウールなどの繊維、汗やよだれなども、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因です。その他にも紫外線や、タバコの煙や花火の煙など化学物質で汚染された空気も刺激となり、アトピー性皮膚炎を悪化させます。
ストレス
ストレスはアトピー性皮膚炎を悪化させる大きな要因のひとつです。精神的なストレスが長引くと免疫系や内分泌系、神経系のバランスが崩れ、アトピー性皮膚炎をおこしたり、悪化させたりすることがわかっています。
また、ストレスによって症状が悪化し強いかゆみを感じてひっかくと、それ自体が肌への刺激となりさらにかゆみを増すという悪循環に陥ります。特に、大人のアトピー性皮膚炎においてストレスは悪化の大きな要因です。
年代別の特徴
アトピー性皮膚炎は年代によって出やすい部位が異なります。幼児期に発症して徐々に良くなっていくという経過をたどるのが一般的です。
しかしながら、近年では全年代にアトピー性皮膚炎の患者が増加しています。それは、子どもの頃に発症したアトピー性皮膚炎が治らないまま、大人になっても持ち越している患者が多いからであろうと考えられています。
乳児期
乳児期のアトピー性皮膚炎は生後1~2か月の頃から見られます。初めは頭や顔などに湿疹ができ、だんだん下へ下へと広がっていくのが特徴です。離乳期の頃には口の周りや頬などにも湿疹が見られます。
乳児のアトピー性皮膚炎と診断される条件
- ● 乾燥肌である
- ● 親や兄弟にアレルギー体質の人がいる
- ● 体の両側に湿疹ができている
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーとの関係は薄いとされています。成長期の子どもにとって安易な食物制限は成長を阻害する原因になるため、治療については小児科医とよく相談しながら進めることが大切です。
幼児期
幼児期では6ヵ月以上治りにくい湿疹がある場合にアトピー性皮膚炎と診断されます。アトピー性皮膚炎は2歳未満の頃に発症し、学童期にかけて最も多く見られます。
乳児期に発症したアトピー性皮膚炎は徐々に良くなることが多いものです。特徴としては、顔の湿疹は良くなる一方、首や肘の内側、膝の裏側などの部位に症状があらわれます。
思春期から大人
思春期から大人のアトピー性皮膚炎では肌の乾燥化が進むのが一般的です。肌はカサカサしていたりゴワゴワしていたりすることが多く、ザラザラとしています。掻いた刺激による色素沈着によって黒ずんでいることが多くあります。
額や目の周り、首や手指、背中や胸など、上半身によく湿疹が出ます。慢性化していることが多く、治りにくいのが大人のアトピー性皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療は主に三つの柱から成り立っています。
- 1.アレルギーの原因になっているものを除去すること
- 2.内服薬、外用薬の使用
- 3.スキンケア
これらの全てを同時に行っていくことによって、軽症の状態を長く保たせることがアトピー性皮膚炎の治療の目標です。
アレルギー対策
まずはアレルギーの原因になっているものを見極め、それをできる限り生活の中から取り除いていくことが大切です。
ハウスダスト |
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ペット |
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肌への刺激になるもの |
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汗や汚れ |
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紫外線 |
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薬
かゆみが強い時はステロイドや免疫抑制剤の塗り薬を使用します。かゆみを抑えるために抗ヒスタミン剤や抗アレルギー薬の内服、またイライラをおさえるために漢方薬が処方されることもあります。
ステロイドは適切に使用すれば恐ろしい薬ではありません。特に外用薬には内服した時のような副作用はありません。むやみに副作用を恐れるのではなく、医師の指示に従って症状が良くなるまでしっかり使うことが大切です。
スキンケア
薬を塗るのと同時に保湿が大切です。アトピー性皮膚炎の人の肌は乾燥していてバリア機能がうまく働きません。乾燥した肌からアレルゲンになるものが入り込み、かゆみや湿疹を起こします。
そのため、肌は常に保湿することを心がけましょう。ワセリンやヘパリン類似物質、尿素製剤などを、使う場所や用途に応じた剤形(クリームやローション、フォームやスプレーなど)で使用すると良いでしょう。
アトピー性皮膚炎を悪化させないために
アトピー性皮膚炎の治療の目標は、保湿剤だけで日常生活に支障をきたさない状態を保ち、長く維持することです。そのため、アトピー性皮膚炎を悪化させないことが大切です。ここからは、アトピー性皮膚炎を悪化させないためにできることを考えてみましょう。
かかない
アトピー性皮膚炎は強いかゆみを伴うのが特徴です。しかし、かくとそれがかえって刺激になり、さらにかゆみを増すという悪循環に陥ります。
そのため、できるだけ爪でひっかかないようにすることが大切です。爪は短く丸く切り、夜間に無意識にかきむしってしまう場合などは綿の手袋をつけて寝ると良いでしょう。
こすらない
毎日入浴し、汚れを落とすことは大切ですが、体を洗う時にゴシゴシ強くこすらないように注意が必要です。低刺激性の石鹸をよく泡立て、手のひらで軽く洗うだけでも汚れは落ちます。どうしてもタオルを使用する場合にはナイロン製のものは避け、綿のもので石鹸をよく泡立てて洗いましょう。
温めない
温まるとかゆみが強くなります。熱いお湯や長時間お湯に浸かることは避けましょう。保湿成分が入った入浴剤を使うのもアトピー性皮膚炎の肌を乾燥から守るのに有効です。
こまめなスキンケア
保湿は絶対に必要です。まずは濡らさないことですが、肌が濡れたらこまめに拭きとりましょう。また水気を拭いたら保湿剤を塗りこんで、水分が蒸発することを避けましょう。
アトピー性皮膚炎を悪化させる食べ物
アトピー性皮膚炎はアレルギー反応のひとつですが、食物アレルギーとは分けて考えられています。特に乳幼児の場合、自己判断で食事制限をすると、必要な栄養素が不足し成長を阻害することになるため注意が必要です。乳幼児の食事については医師の指示に従ってください。
何か特定のものを食べたからといって、アトピー性皮膚炎が悪化することはあまりないと考えられています。そのため、医師から何らかの食事制限を受けているのでない限り、絶対に食べてはいけないものはありません。しかしながら、アトピーを悪化させる食べ物があるのは事実です。
例えば、香辛料の強い食事やチョコレート、糖分の取りすぎはアトピー性皮膚炎を悪化させます。またアルコールは体温を上げるため避けた方が良いでしょう。インスタント食品やマーガリンなど脂肪の多い食品、スナック菓子などに食事が偏ることもアトピー性皮膚炎を悪化させる原因になります。
アトピー性皮膚炎によい食べ物
アトピー性皮膚炎を食事だけで改善することはできません。しかしながら、食事は毎日のことです。毎日少しずつでも体質を改善していくことで辛いかゆみを抑え、肌質を変えていくことは可能です。
最近の研究で、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー体質の人の腸内には乳酸菌が少ないことがわかっています。そのため、乳酸菌を含む食事を意識することでアトピー性皮膚炎の症状を緩和するといわれています。また、乳酸菌の餌となる食物繊維を多くとることでも腸内の環境の改善を図ることが可能です。
よくある質問
ここからはアトピー性皮膚炎に関するよくある質問について取り上げます。
大人のアトピーは治る?
大人のアトピーは改善が難しいといわれています。長期にわたり症状を繰り返し、色々な合併症も併発していることが多いからです。
しかし、根気よく治療を続けることできれいな肌を取り戻し、症状を安定させることは可能です。あきらめないで治療を続けましょう。
アトピーと蕁麻疹の違いとは?
アトピー性皮膚炎は慢性の湿疹です。一方蕁麻疹はアトピー性皮膚炎によく似た強いかゆみを伴う湿疹があらわれますが、数分から数時間できれいに消えてしまいます。アトピー性皮膚炎と蕁麻疹とは全く異なる皮膚疾患です。
まとめ|アトピーと上手に付き合っていこう
アトピー性皮膚炎は乳幼児期から発生し、大人になっても症状が続くことがある疾患です。原因ははっきりわかっておらず、強いかゆみを伴う湿疹が特徴です。食べ物や環境、体質やストレスなどさまざまな要因で悪化します。
大人のアトピー性皮膚炎を完全に治すことは難しいですが、根気よく治療を続けることでコントロールすることが可能です。アトピーの辛いかゆみでお困りの方はぜひ、ヒロオカクリニックへご相談ください。