気管支喘息の原因や症状、治し方について解説
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季節の変わり目や風邪を引いた後に起こりやすい気管支喘息。子供に多いと思われがちですが、最近ではストレスや環境汚染などが要因となり、大人になって発症する人の数も増えています。
今回は、喘息の原因や症状、発作が起きた時に実践できる対策方法についてご紹介します。気管支喘息に悩まされている方やそのご家族の方は、ぜひ参考にしてみてください。
気管支喘息とは
気管支喘息とは、呼吸をする時の空気の通り道である気道が慢性的に炎症を起こしている状態のことをいいます。炎症が起こることで気道が狭くなり、息苦しさや持続する咳、喘鳴(ヒューヒューやゼーゼー)といった呼吸器症状が出現します。
正しく治療を受ければ、症状を悪化させることなく、日常生活に支障のない状態で過ごせます。しかし、病状の管理が上手くいっていない場合、発作が出やすい状態に陥りやすく、場合によっては生死に関わる大発作へと繋がってしまうことがあります。
気管支喘息は日本人にとって身近な病気であり、安易に考えられてしまいがちですが、重篤な症状になりうる可能性があることや長期的な管理が必要であることを理解しておきましょう。
気管支喘息の原因
気管支喘息は、アレルギーが関与する「アトピー型」と、アレルギーに関係なく発症する「非アトピー型」の2種類に大別されます。小児期の場合はアトピー型のものが多く、特定のアレルゲンが原因となり発症するケースがほとんどです。大人の喘息の場合は非アトピー型が比較的多い傾向です。
非アトピー型の場合、発症の原因は様々であり、日常生活のあらゆる場面に誘発の原因が隠れています。気管支喘息の原因にはどのようなものがあるのか、項目別にご紹介します。
アレルギー
気管支喘息のなかでも、特定のアレルゲンによって喘息症状を引き起こすアトピー型喘息。その原因となるアレルゲンは個人によって異なりますが、特定の食物や、ハウスダストやダニなどの環境アレルゲンなどが挙げられます。
感染症
インフルエンザや風邪などによるウイルス感染症に罹患してしまった場合、気道は通常より強く炎症を起こした状態になります。普段は気管支喘息の症状が出ていない方でも、感染によって起こる気道の強い炎症により、激しい咳こみや呼吸苦を伴いやすくなります。
日頃から健康管理に努めるとともに、感染によって発症した場合は自己判断で薬を服用せず、医療機関で適切な治療を受けるようにしましょう。
ストレス
ストレスは自律神経と強い関わりがあります。気道は自律神経の乱れによって収縮しすくなる特徴があることから、精神的なストレスは気管支喘息の大きな原因のひとつとなっています。
また、日常的に強いストレスを感じて睡眠が十分にとれない場合、免疫力が弱まることで感染症に罹患するリスクが高まり、感染症による気道の炎症によって気管支喘息が発症する場合もあります。
環境因子
大気汚染(PM2.5や黄砂)
大気汚染により発生するPM2.5や黄砂は、身体に悪影響を及ぼす有害物質です。有害物質に長時間晒された状態でいると、気道は炎症を起こしやすくなります。大気汚染が強く出ている時は、外出を控えたり、マスクや眼鏡を装着したりして、身体を保護するための対策に努めましょう。
気圧や気温の変化
気管支喘息は、季節の変わり目や天気の状態、気温の変化などによっても発症しやすい傾向にあります。とくに冬の寒い時期は、空気が乾燥しているため気道が過敏になりやすく、喘息が悪化しやすくなります。気圧や気温の変化など、外部環境の変化に適応できるよう工夫しましょう。
運動
激しい運動や長時間の運動も、気管支喘息が発症する原因のひとつです。運動により換気量が増大することで、気管支への刺激となったり、自律神経のバランスが乱れたりするためです。
気管支喘息の診断を受けた方は、入念にウォーミングアップをおこなってから活動するようにしましょう。日頃から有酸素運動をおこない、体力作りに取り組むこともおすすめです。
気管支喘息の症状
気管支喘息の代表的な症状は以下のとおりです。
- ●持続する咳や痰
- ●安静時や動作時の息苦しさ
- ●呼吸時に「ヒューヒュー」という笛のような音(喘鳴)の出現
- ●胸の痛み
このような症状が持続している場合は、できるだけ早めに医療機関を受診し医師の診察を受けましょう。
気管支喘息の検査方法
気管支喘息の検査では、身体所見や臨床検査の結果を含めて総合的に評価し診断します。主に以下の流れに沿っておこないます。
問診と聴診
主な症状や病歴、治療薬の使用を確認します。また、聴診で呼気時の喘鳴の有無を聴取します。
胸部X線検査
気管支喘息の症状は他の呼吸器の疾患と類似している部分があるため、鑑別するために画像診断を実施します。
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
呼吸時の吐き出す息の量や速度を測定し、気管支の狭窄状態などを評価します。主に喘息の重症度を判定する指標となります。
呼気一酸化窒素検査(FeNO)
機械に息を吹きかけて、吐いた息の中の一酸化窒素濃度を測定する検査です。この検査の数値によって、気道の炎症状態を調べることができます。
(当クリニックでは取扱いがございません)
血液検査
アレルギーの状態を評価するために採血を実施します。主に好酸球数やIgE抗体の項目を中心的に確認します。
気管支喘息の治療方法
気管支喘息の治療の基本は、薬物療法になります。症状が無いときでも気道に慢性的な炎症が起きていることが多いため、発作が起きたときだけでなく、普段から治療を続けることが重要です。
非発作時の予防的治療法
喘息の発症を防ぐために日常的に服用し、コンディションの良い状態を目指します。治療に用いる薬剤は「長期管理薬」(コントローラー)とも呼ばれます。
<主な薬剤>
- ●吸入ステロイド薬:気管支の炎症を抑えます
- ●長時間作用型抗コリン薬:気管支を長時間拡げ、咳や痰を減らします。
- ●吸入ステロイド薬:気管支の炎症を抑えます。
- ●長時間作用性β2刺激薬:気管支を長時間拡げます。
- ●長時間作用型β2刺激薬配合剤:上記の2つを組み合わせた吸入薬です。
- ●ロイコトリエン受容体拮抗薬:気道の炎症を抑えます。
- ●テオフィリン徐放薬:気道の炎症を抑えます。
発作時の治療法
発作時の喘鳴や呼吸困難などの急性症状を抑制します。治療に用いる薬剤は「発作治療薬」(リリーバー)とも呼ばれます。
<主な薬剤>
- ●短時間作⽤性吸⼊β2刺激薬:気管支を広げる作用が強く、即効性があります
- ●経口ステロイド:重度の喘息憎悪に限り使用されます。吸入に比べ短期間で気道のむくみを取ることにより、喘息憎悪を改善させます。しかし、長期間にわたり内服すると、骨密度の低下や血糖値の上昇、感染症や血栓症のリスクとなるため、投与する際は「短期間」の投与が原則です。
個々の重症度によって、使用する薬剤の種類や量・組み合わせは異なります。自身にとって適切な治療方法を知るために、検査や診察を受け、医師と相談しながら方針を決定しましょう。
喘息発作が起きた時の対処法
気管支喘息の発作時は、重症度に応じて適切に対処することが重要となります。この項目では、発作時の重症度や緊急性の有無、対処法について解説します。
発作の重症度
気管支喘息の重症度評価は以下の5つのレベルに分類されます。
発作強度 | 呼吸状態 | 動作の変化 |
---|---|---|
喘鳴・呼吸苦の出現 | 急ぐまたは動くと苦しい | 変化なし |
軽度
(小発作) |
苦しいが横になれる | 日常生活がやや困難 |
中等度
(中発作) |
苦しくて横になれない状態 | かろうじて動けるがかなり困難な状態 |
高度
(大発作) |
苦しくて動けない状態 | 会話が困難 歩行不能な状態 |
重篤 | 呼吸が減弱または停止の状態 | 会話や動作が不能 意識障害の出現 |
このように、気管支喘息の状態は段階を追って悪化します。普段から気管支喘息のコントロールが上手くいっておらず症状が出現しやすい人や、風邪をひくと急激に状態が変化しやすい人は、身体の状態変化に注意しましょう。
状態が悪化する前に早めに医療機関を受診すること、身体が動かなくなる状態にまで達した場合は救急の必要性も考慮し、迅速に初期対応をおこないましょう。
気管支喘息の発作を予防するためには
気管支喘息の症状を引き起こす原因は、日常のなかに多く潜んでいます。気管支喘息の状態を安定化させ、発作を起こさないための予防法について解説します。
アルコールの摂取を控える
お酒に含まれるアルコールは、肝臓で「アセトアルデヒド」という物質へと変換されます。アセトアルデヒドは、喘息を誘発する原因物質のひとつである「ヒスタミン」を増やす働きを持っています。
アルコールの摂取量が多いほどにヒスタミンの産生量が増え、アレルギー症状が出やすくなります。気管支喘息をコントロールするために、アルコールの摂取はできるだけ控え、適度な量を心がけるようにしましょう。
喫煙を控える
タバコには身体にとって有害となる化学物質が多量に含まれています。喫煙によって有害物質が気道を刺激することで、慢性的な炎症をさらに悪化させ、発作を引き起こす原因となります。
喫煙者だけではなく、受動喫煙にさらされる人も注意が必要です。タバコによって発生する副流煙には、喫煙者が吸入している以上に多くの化学物質が含まれているためです。家庭内や職場内など、生活環境において喫煙環境がある場合には、できるだけ距離を置くよう努めましょう。
医療機関では、気管支喘息患者に対してNSAIDs関連の薬剤使用は禁忌とされています。市販薬の薬剤を使用する場合は成分を確認し、服用には注意しましょう。
気管支喘息に関するよくある質問
この項目では、喘息に関するよくある質問についてご紹介します。
気管支喘息と咳喘息の違いとは?
咳喘息とは、風邪や感染症が治癒した後も長期間(約8週間程)咳が持続する場合に疑われる症状のことをいいます。実際には2~3週間程度でも咳が続くと身体への負担が大きいので、咳喘息が疑わしい場合は8週間待つわけではなく積極的に治療を行っております。
夜間や明け方に出現する激しい咳や、特定のアレルゲンが原因となること、季節などの外部環境によって状態が変動するという特徴があり、気管支喘息と非常によく似ています。類似している部分が多く混同されやすい病気ですが気管支喘息と咳喘息の大きな違いは主に3つあります。
- 1.咳こみはあるが空咳が多く痰の絡みが少ない
- 2.呼吸時の音「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」などの喘鳴や呼吸困難は伴わない
- 3.一時的な症状であり、完治する
気管支喘息の場合は、慢性的な気道の炎症であることから完治を目指すことは難しく、長期的な管理が必要となります。一方、咳喘息の場合は1〜2ヶ月程の薬剤の服用で治ることが多いといわれています。
しかし、その時点で薬を止めてしまうと咳症状が再発する方が少なくありません。しばらく咳が出なくても、風邪、季節の変わり目、寒暖差、ほこり、過労、ストレスなどから再発してしまう方が多いです。1年以上治療を行い。ステロイド吸入薬が低用量まで減量できて無症状であれば中止を考慮してもよい報告されております。
ただし、咳喘息を罹患した大人の約3〜4割が気管支喘息へと移行するケース多いと言われていますが、吸入ステロイドの使用により以降率が低下することが示されています。発症した際には早めに治療を受けることが大切です。
気管支喘息は治る?
気管支喘息は、原因は多く存在しており体質によっても異なるため、完全に治すことが難しい病気です。そのため長期的な管理が必要であり、発症を抑えるためには適切な治療を受けることが重要となります。
治療によってコントロールできるようになれば、症状の出現を最小限に抑え、日常生活に支障なく過ごすことができるでしょう。症状が一定期間出ていない状態であっても、気道の炎症はまだ強く出ていることもあります。内服薬を服用している方は自己判断で中止しないようにしましょう。
気管支喘息は遺伝する?
気管支喘息はアレルギー疾患であるため、気管支喘息そのものが遺伝することはありません。しかし、他のアレルギー性の疾患に罹りやすい体質になることがあります。
家族内で気管支喘息を患っている人がいる場合、血縁者は喘息や鼻炎、食物アレルギーなどと関係の深い症状を発症するリスクが通常と比べて高い傾向があることも覚えておきましょう。
まとめ
気管支喘息は、小児期に発症した場合の多くは成長と共に完治しますが、成人になってから発症した場合は完治することが難しい病気です。しかし、適切な治療を受け、薬を正しく服用し続けることができれば、日常生活に支障なく過ごせます。
慢性的な気道の炎症は目には見えないため、症状が出ない状態が続くと完治したように思えますが、風邪を引いた時や季節の変化によって再度状態が変動するということも少なくありません。
気管支喘息は長期的な管理が必要であり、完治を目指すよりも上手く付き合っていくことが大切です。そのために、日常の中で発作の原因となりうることはできるだけ避け、適度な運動や規則正し生活を心がけましょう。
ヒロオカクリニックでは、気管支喘息の診察をおこなっております。ご希望の方は、呼吸器内科をご予約の上ご相談ください。