気管支炎の原因や症状、治し方について解説
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「長引く咳は、気管支炎の症状の可能性がある?」
「気管支炎の原因って何がある?」
咳や痰の症状が長引くと、気管支炎になってしまったのか不安になる方も少なくないでしょう。日常生活にも支障きたし、ストレスを感じる場合もあります。
気管支炎は、ウイルスや細菌の感染が原因となる急性気管支炎と、喫煙が主な原因の慢性気管支炎に大別され、症状や治療も異なります。ここでは、気管支炎の原因から治療、予防法までを解説します。病院を受診すべきか迷っている方は参考にしてください。
気管支炎とは
「気管」は、喉から肺まで続く空気の通り道で、2本に分かれて左右の肺に入ります。この枝分かれした管が「気管支」です。さらに細かく枝分かれし、肺の奥の部分まで到達しています。肺や気管、気管支を含めて呼吸器と呼びます。
気管や気管支で炎症が起き、咳や痰などの症状が出る病気を気管支炎と言います。気管支炎は症状が長引く場合も多く、子どもや高齢者は体力を消耗してしまいます。気管支炎にならないように予防も大切です。
気管支炎は急性気管支炎と慢性気管支炎に分類される
気管支炎は、急性気管支炎と慢性気管支炎に大別されます。医学的には、症状が90日以内におさまる場合を急性気管支炎、それ以上続く場合を慢性気管支炎といいます。実際、急性気管支炎は数日から数週間以内におさまりますが、慢性気管支炎は、長年にわたって症状に悩まされる場合も多く、それぞれ主な原因や治療法が異なります。
急性気管支炎とは
急性気管支炎は、子どもから大人まで誰でもかかる病気です。はじめは鼻から喉までの上気道で炎症が起こり、その後、連続する気管や肺などの下気道にまで炎症が広がって症状が出るようになります。ほとんどの場合、数日から数週間で症状はおさまります。自力で治る場合もありますが、適切な治療を受けることで症状が軽くなり早期に回復する可能性が高いのですが、咳や痰の症状が2週間以上続く場合は、早めに医療機関で医師の診察を受けるようにしましょう。
急性気管支炎の原因
急性気管支炎の主な原因は、ウイルスや細菌の感染です。インフルエンザウイルスやRSウイルスなどによるウイルス感染がほとんどですが、肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジアによる感染が急性気管支炎の原因となることもあります。
急性気管支炎の症状
急性気管支炎は、咳や痰、のどの痛みなどの呼吸器の症状だけでなく、発熱や倦怠感、食欲不振などの全身症状や前胸部不快感を伴う場合もあります。特に2歳未満の小さい子どもでは、気管支が細いため重症化する可能性があります。呼吸時にゼーゼーと音のするような喘鳴(ぜいめい)が聞かれたり、呼吸が苦しくてなかなか眠れなかったりする場合は、早めに受診するようにしましょう。
急性気管支炎の検査
急性気管支炎の場合、症状や呼吸音から診断されることが多く、肺炎や他の病気の有無を確認するために、必要に応じて胸部レントゲン検査や胸部CT検査をおこないます。インフルエンザウイルスの感染が疑われる場合には、鼻腔を拭って採取した粘液を使って、感染の有無を検査する場合もあります。
急性気管支炎の治療
急性気管支炎の主な治療は、安静と、症状を和らげる薬を使用した対処療法です。食事や水分をとって体を休め、体力の回復を促しましょう。冬場など乾燥する時期には、加湿も重要です。粘膜を潤し、粘性の痰に水分を与えることで痰を出しやすくなります。
また、症状を和らげるために、痰を出しやすくする「去痰薬(きょたんやく)」を使用します。気管支を広げて呼吸しやすくするために「気管支拡張剤」を使用することもあります。
インフルエンザの場合、病原体に作用する抗インフルエンザ薬を使用しますが、他のウイルス感染症では特定の薬がないため、対処療法が中心です。細菌感染が疑われる場合には、抗菌薬を使用する場合もあります。
慢性気管支炎とは
1年のうち3カ月以上症状が続き、この状態が2年以上連続していて、それが他の病気(肺がんなど)によるものではない場合を、慢性気管支炎と言います。
慢性気管支炎の原因
慢性気管支炎の原因は、たばこの煙や大気汚染による有害な化学物質の吸い込みです。主な原因は喫煙で、たばこの煙の中に多数含まれている有害物質によるものです。また、車の排気ガスや工場から排出される煙に含まれる有害物質を、日常生活の中で呼吸と同時に吸い込んでいることが原因となる場合もあります。
これらの物質を吸い込むことによって、慢性的に気管支に炎症が起こり、COPD(慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん))や肺気腫(はいきしゅ)を引き起こします。COPDでは、気管支に炎症が起こり、細かく枝分かれした気管支の中に次第に痰が溜まっていくことで、空気の通り道を塞いでしまいます。
肺気腫では、気管支の先端にある肺胞が破壊され酸素をとりこめなくなってしまいます。慢性気管支炎が進行すると、肺気腫を合併したCOPDが多くみられます。
慢性気管支炎の症状
慢性気管支炎の症状は、咳と痰です。長引く咳は、体力を消耗し全身に倦怠感が生じて、疲れやすくなります。次第に症状が進行し気管支に閉塞が生じてくると、労作時に息切れや呼吸困難を感じるようになります。
COPDによっていったん障害された肺機能は、元の状態には戻ることは難しいです。これらの症状をうまくコントロールしながら生活していく必要があります。
慢性気管支炎の検査
急性気管支炎と同様に、胸部レントゲン検査や胸部CT検査をおこない、必要に応じて肺の機能を検査する呼吸機能検査もおこないます。呼吸機能検査はスパイロメータという機械を用いて行われることが多く、息を吸ったり吐いたりして、肺活量や、二酸化炭素を排出し酸素を取り込む能力を検査します。
慢性気管支炎の治療
慢性気管支炎の治療は、禁煙と薬による対処療法です。禁煙は、症状の悪化を防ぐためにすぐに始めましょう。ただし、禁煙だけでは症状が緩和されないため、薬を使っていく必要があります。
慢性気管支炎の主な薬は、気管支拡張剤で、去痰薬を一緒に内服する場合もあります。気管支拡張剤は、吸入薬が基本で短時間作用型から長時間作用型まで作用時間にも幅があり、症状に応じて使い分けます。
次第に症状が進行して、酸素を取り込む能力が低下し呼吸困難が強くなると、酸素吸入が必要になってきます。ただし、入院して酸素吸入する生活が続くわけではありません。症状が落ち着いてくれば、在宅酸素療法を利用して病院の外で生活が送れるようになります。
気管支炎はうつるのか
慢性気管支炎は、基本的にはうつることはないといえますが、感染が原因となっている急性気管支炎はうつる可能性があります。特に初期は、病原体の数が多いため注意が必要です。咳やくしゃみによる飛沫感染も考えられるため、マスクをするなど対策を心がけましょう。
気管支炎になったら、何日休む?
気管支炎になったら、何日休むという決まりはありません。ただし、インフルエンザが原因の気管支炎の場合は、学校保健安全法によって「発症の翌日から5日間、かつ解熱後2日間」は出席停止期間と定められています。乳幼児の場合「発症の翌日から5日間、かつ解熱後3日間」です。発熱や咳、鼻水などの症状がみられた日を0日目とし、そこから少なくとも5日目までは登校できません。
たとえ5日目を経過したとしても、解熱後2日間(乳幼児の場合3日間)を経過していない場合には、さらに出席停止期間が延長されます。解熱を確認した日を0日目とし、2日目(乳幼児の場合3日目)までは登校できません。
厚生労働省:「学校保健安全法施行規則」
大人がインフルエンザにかかった場合は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」によると、季節性のインフルエンザに対しては特に出勤停止期間は定められていません。ただし、就業規則に定められている場合もあるため、まずは就業規則を確認するようにしましょう。
厚生労働省:「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」
気管支炎の予防法とは
気管支炎の原因や症状、治療法について解説してきましたが、まずは予防が大切です。今のうちにできる対策を知っておきましょう。
基本的な感染対策
ウイルスなどによる感染が原因となる急性気管支炎では、日々の基本的な感染対策が重要です。手洗い・手指消毒、うがいは基本ですので、特に子どもの場合は、しっかり手洗い、うがいができるようになるまで見守ってあげるようにしましょう。
また、新型コロナウイルス感染症の流行以降、こまめな換気が習慣となった方も多いでしょう。冬の時期などは寒いかもしれませんが、換気を心がけるようにしましょう。
禁煙
慢性気管支炎の主な原因は、喫煙です。たばこの煙は、たばこを吸う人でだけでなく周りにいる人にも影響を及ぼします。これを受動喫煙といいます。喫煙は、気管支炎だけでなく、肺がんなど他の呼吸器疾患を引き起こす可能性もあり、多くの病気のリスク要因の1つです。
市販されている禁煙補助剤などをうまく活用して、ご自身で禁煙に取り組むのもいいでしょう。ひとりで禁煙を達成できるか自信がないという方は、禁煙外来に行ってみてください。以下の要件を満たせば、12週間に5回までの禁煙治療に対して保険が適用されます。
- ●直ちに禁煙しようと考えていること
- ●ニコチン依存症のスクリーニングテスト「Tobacco Dependence Screener」が5点以上であること
- ●35歳以上の場合、ブリンクマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること
- ●禁煙治療を受けることを文書により同意していること
日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会、日本呼吸器学会:「禁煙治療のための標準手順書(第8版)」
禁煙外来では、薬の処方だけでなく、専門家からのアドバイスも受けられます。ヒロオカクリニックでも禁煙外来をおこなっていますので、お気軽にご相談ください。
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RSウイルス感染症のワクチン「アレックスビー」
ワクチンと言えば、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスのワクチンを思い浮かべる方も多いでしょう。2024年1月にRSウイルスに対するワクチン「アレックスビー」が販売され、医療機関で接種が可能になりました。
RSウイルス感染症は、子どもの感染が多く、子どもから家庭内に広がる感染経路がよく見られます。インフルエンザなどのように、特定の治療薬がなく、RSウイルス感染症が原因で気管支炎を発症してしまうこともあります。
アレックスビーの接種対象者
アレックスビーの接種対象者は「60歳以上」で、1回に0.5mLを筋肉内に注射します。一般的には、重症化しやすい子どものRSウイルス感染症に注意が必要と言われていますが、高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患など)、免疫機能が低下している方はRSウイルスの感染症の重症化リスクが高く、肺炎や入院、死亡などの重篤な転機につながる可能性があります。
またRSウイルス感染症は、喘息、COPD、心疾患などの基礎疾患の憎悪の原因となることもあります。今後、接種対象者の範囲が拡大される可能性もあり、気になる方は医療機関に相談してみましょう。
アレックスビーの副反応と注意点
アレックスビーでは、アナフィラキシー反応を含む過敏反応以外に、以下のような副反応が報告されています。
- ●注射部位の疼痛や赤み、腫れ
- ●頭痛
- ●筋肉痛
- ●関節痛
- ●疲労、発熱、倦怠感
他のワクチン接種時と同様に、発熱している方や、アレックスビーの成分に対してアレルギーがある方は接種できない可能性があります。また、アレックスビーは不活化ワクチンに分類されるため、他のワクチンと投与間隔をあける必要はありません。
同時接種も可能です。ただし、新型コロナウイルスのワクチンとは2週間以上間隔をあける必要があり注意が必要です。
厚生労働省:「ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ」
まとめ
気管支炎は、急性気管支炎と慢性気管支炎に分類されます。急性気管支炎は、3カ月以内に症状がおさまり、ウイルスなどの感染が原因となる場合がほとんどです。咳や痰を主症状として、発熱や倦怠感もみられます。
慢性気管支炎は、1年間に3か月以上症状があり、この状態が2年以上続きます。主な原因は喫煙で、COPDを引き起こすと肺機能は元の状態に戻ることはありません。咳や痰だけでなく、息苦しさや疲労感と生涯付き合っていかないといけなくなります。
感染対策や禁煙など、自分にできる予防を今のうちから行って、気管支炎にならないように対策をしていきましょう。ヒロオカクリニックでは気管支炎の診療をおこなっております。お困りの方は、呼吸器内科・呼吸器外科をご予約のうえ、ご相談ください。
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