急性胃炎の症状、原因、治療を解説「胃がんとの関係は?」
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胃炎が胃が痛む病気であることは誰でも知っていることですが、胃炎を起こす原因がとても多いことはあまり知られていないのではないでしょうか。
種類が多すぎて、まず急性胃炎と慢性胃炎にわけてから、さらに細分化しています。
この記事では、急性胃炎の症状、原因、治療を紹介します。急性胃炎と胃がんとの関係についても触れます。
なぜ胃に炎症が起きるのか
本題に入る前に、胃炎の基礎知識から解説します。
胃炎とは、胃に炎症が起きる現象です。
炎症は「よい」現象?
炎症は次のように定義されます。
・炎症とは、体内で発生した、あるいは外部から体内に侵入した病原性の刺激を除去して、障害を受けた組織を取り除く生体反応である
この定義を意外に思う人もいるでしょう。炎症といえば、多くの人は、腫れて赤くなって痛む「悪い」現象を思い浮かべるからです。
しかしこの定義によれば、炎症は、刺激を除去して障害を受けた組織を取り除く「よい」現象であることがわかります。
もちろん「悪い」現象、だから治療が必要
では炎症は「よい」だけの現象かというと、そうではありません。炎症それ自体は体に「よい」効果をもたらしますが、炎症による波及効果が「悪さ」をします。
刺激を排除するための炎症は、周囲の健康な組織や細胞を傷つけることがあります。炎症が大きいほど、健康な組織・細胞の損傷も激しくなり、ついに臓器や器官の機能が損なわれることもあります。
また、炎症が起きる原因は明らかに「悪い」現象といえます。
健康を考えるうえでは、炎症を起こさないようにすることと、炎症が起きたらそれを抑える治療が必要になります。
ここまでの炎症の説明は、胃炎にも当てはまります。
胃は炎症を出しやすい臓器
胃に炎症が起きるのは、胃に炎症を起こしやすい要素がたくさんあるからです。
例えば、辛い食べ物は刺激が強く粘膜を傷つけますが、口のなかや喉の滞在時間はわずかですが、胃には長時間滞在するので炎症の原因になります。
急性胃炎の原因の1つであるピロリ菌は、胃の粘膜の粘液や胃の上皮細胞から栄養を得ています。胃に餌(えさ)があるからピロリ菌はずっと胃にいるわけです。
胃炎は十二指腸も含む
急性胃炎の正式名称は急性胃十二指腸粘膜病変といい、胃だけでなく、その先にある十二指腸も含めた病気です。
急性胃炎の症状
急性胃炎の症状は次のとおりです。痛くなかった状態から急に痛みや不快感が走るのは共通しています。
・上腹部やみぞおち部分の痛み
・吐き気や嘔吐
・胸やけやげっぷ
・食欲不振
・吐血や下血
相当苦しい症状や深刻な症状がある一方で、軽い症状が含まれていることがわかります。
また、症状が出てもしばらくするとなくなり、期間を置いて再発するという特徴もあります。
急性胃炎は胃炎でとどまっている状態を指しますが、悪化すると、胃壁がただれる潰瘍に進んでしまいます。
急性胃炎の原因
急性胃炎の原因には次のようなものがあります。
★ストレス
★食生活の乱れ、暴飲暴食、激辛食品の食べすぎ
★肝硬変や腎不全など、胃以外の臓器の病気の影響
・感染症
・食中毒
・薬の副作用
★をつけた3項目は、長期間に渡る習慣や病気です。つまり、急性胃炎は、長年の蓄積が急な症状になって現れることがあります。
感染症の原因となるのは、ピロリ菌や、イカやサバなどに含まれるアニサキスがあります。
また、ノロウイルスに感染すると、胃炎を起こさなくても胃痛や嘔吐といった急性胃炎と似た症状が出ます。
急性胃炎の治療
急性胃炎の症状は数時間や数日で収まることがあります。そのため、痛みをこらえて乗り越えてしまう人や、市販の胃薬や痛み止めで症状を抑えてしまう人がいます。
しかし再発を繰り返すようであれば、内科や消化器内科などを受診して本格的に治療に取り組んだほうがよいかもしれません。
検査
医療機関では急性胃炎が疑われたら、症状などによって血液検査や内視鏡検査などを行います。
薬物療法と入院
急性胃炎の治療には、薬物療法や入院があります。
胃炎や胃潰瘍が確認されたら症状に応じて、胃炎・胃潰瘍治療剤、酸分泌抑制剤、制酸剤、粘膜保護剤などが処方されます。
食中毒などで急性胃炎が重篤化していれば入院することもあります。
ピロリ菌がいることが疑われたら、除菌する薬として、胃酸を抑える薬、クラリスロマイシン、アモキシシリンの薬が処方されるでしょう。これを1日2回、7日間飲みます。
食事療法
急性胃炎の治療では、胃を休めるために食事療法が欠かせません。入院では絶食になることもあります。
患者さんが自分で行う食事療法には、次のものを避ける方法があります。
・焼肉
・天ぷら
・食物繊維が多い食材
・塩分が濃いもの
・辛いもの
・酒
・ブラックコーヒー
治療が終わるまで軽い食事ですごしてもらうこともあります。
食べ物ではありませんが、タバコも中断してもらいます。
ストレスを取り除く
ストレスによる急性胃炎は、例え薬物療法などが成功しても、ストレスがある限り再発するリスクが消えません。
生活や家庭環境、仕事環境などを見直して、ストレスを与えるストレッサーを取り除くようにします。
原因の病気を治療する
肝硬変や腎不全など、胃以外の臓器の病気の影響で急性胃炎を発症した場合は、元の病気を治すことになります。
急性胃炎と胃がんの関係
胃の病気と聞くと、真っ先に胃がんを思い浮かべるかもしれませんが、急性胃炎と無縁ではありません。
急性胃炎がピロリ菌によって発症した場合、除菌をすることで胃がんリスクを低下させることが期待できます。
また、胃がんは食生活の乱れやタバコなどによってもリスクが高まります。これらは急性胃炎の原因にもなります。
急性胃炎が進行して胃がんになるわけではありませんが、急性胃炎対策は胃がん対策になり、胃がん対策は急性胃炎対策につながります。
例えば、ある人が急性胃炎と胃がんの両方を発症していて、急性胃炎の症状だけが出ていたとします。この人がクリニックを受診して内視鏡検査を受けると、胃がんがみつかるかもしれません。このように、この2つの病気は検査も兼用できます。
まとめ~胃の痛みと共存する必要はない
困ったときに「胃が痛む思いだよ」ということがあるほど、普段の生活とストレスと胃は深い関係にあります。
ただそれだけに慣れ切ってしまう人がいて、そのような人は痛みが過ぎ去るのを待つだけで、治療しないことがあります。
しかし胃は、ただなんとなく痛むことはなく、必ず何かしらの原因があるはずです。それを取り除くと生活の質が向上するでしょう。
新宿ヒロオカクリニックでは健診・人間ドックでの胃内視鏡検査に加え、消化器内科の専門医による外来診療も行っております。詳細はこちら