胸の痛みの原因は?考えられる病気や注意が必要な症状について解説

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チクチクしたり圧迫感があったりする胸の痛みがでたときに、どのような対応をとるべきか不安を感じる方もいるでしょう。原因になる病気や特徴はさまざまで、左胸だけでなく右側や真ん中の胸にでる症状もあります。症状のなかには緊急性の高いものもあるので、胸が痛いときにチェックする内容や受診する診療科を事前に知ることが大切です。

この記事では、胸の痛みの原因や病気別の特徴、注意するべき症状、胸が痛いときの対応方法についてお話しします。胸の痛みの原因や対応方法を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

胸の痛みの3つのパターンと原因

胸の痛みの3つのパターンと原因

胸の痛みの感じ方は「胸の表面の痛み」「胸の深いところの痛み」「胸の痛みのように感じる症状」の3種類あり、それぞれ原因が異なります。3つのパターンの原因について詳しくみていきましょう。

胸の表面で生じる痛み

胸の痛みを表面で感じるときは、肋骨や胸の筋肉、皮膚が原因であることが多いです。これらは肺よりも外側にあり、肋骨骨折や肋間神経痛、帯状疱疹などの病気によって、表面で感じられる痛みがでるからです。刺すような痛みや、チクチクする痛みがでやすいのが特徴で、どこが痛いのか指で示せます。

胸の深いところで生じる痛み

狭心症や心筋梗塞、大動脈解離、肺血栓塞栓症などの病気が原因で、胸の深いところで痛みを感じるパターンもあります。原因となる内臓や大動脈(心臓からでる動脈で人体のなかで最も太い血管)が、肋骨や胸の筋肉よりも内側に存在しているからです。圧迫感のある痛みや締めつけられる痛み、裂けるような痛みが生じやすく、緊急性の高いケースも多いです。

胸の痛みのように感じる症状

肺や胸膜、消化器系、ストレスによる心因性の病気が原因で、胸の痛みのような症状を感じるケースがあります。この場合では、胸の痛み以外の症状も伴っていないか確認して、原因を推測することが大切です。心因性の病気では、毎回異なる場所でチクチク、ピリピリする痛みがでる事例もあります。

胸の痛みの原因として考えられる病気

胸の痛みの原因として考えられる病気

胸の痛みの原因として考えられる病気は心臓や肺、骨、消化器系、心因性の病気などさまざまです。なかには緊急性の高い病気がひそんでいる可能性もあるため、事前に内容について知っておきましょう。

心臓や血管の病気

胸の痛みがでる原因として、狭心症や心筋梗塞、大動脈解離、肺血栓性塞栓症などが挙げられます。これらの病気が疑われる場合は、すぐに救急車を要請したり、救急外来に受診したりするなど、緊急の対応が必要です。

狭心症・心筋梗塞

心臓の血管が狭くなったり血栓で塞がれたりするのが原因で、心臓に十分な血液が供給されなくなる病気です。圧迫される、締めつけられるような胸の痛みの他、呼吸困難や吐き気、冷や汗なども現れます。狭心症についてはこちらの記事にも詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

>>狭心症の初期症状を見逃さず早期治療に取りかかりましょう~心筋梗塞を起こさないために

大動脈解離

大動脈が裂ける病気で、引き裂かれるような激しい胸の痛みが突然でるのが特徴です。時間が経つにつれて範囲が広がり、背中から腰までおよびます。血液が身体のあらゆる部位にいき渡りにくくなるため、脳梗塞や心筋梗塞、脚の麻痺にもつながり、失神やけいれん発作などが伴うこともあります。

肺血栓塞栓症

長時間の座りっぱなしや水分不足などで血液のめぐりが悪くなるのが原因で、肺の血管が血栓でつまり、胸の痛みがでる病気です。胸の痛みは呼吸で悪化しやすいことが特徴で、呼吸困難や動悸も伴います。

肺や胸膜の病気

胸膜炎や気胸、肺がんなどの病気も、胸の痛みを感じる原因になりやすいです。肺には痛みを感じとる神経がないため、痛みがでる部位は主に胸膜になります。

胸膜炎・膿胸

細菌の感染や肺炎の悪化が原因で、胸膜に炎症が起きたり膿がたまったりして、胸の痛みがでる病気です。鈍くズキズキした胸の痛みの他に、発熱、呼吸困難なども生じます。

気胸

気胸は肺の表面の薄い膜が破けるのが原因で起こり、空気が胸の中にもれて突然の胸の痛みと息苦しさを伴う病気です。10代から30代の痩せ型の男性に生じやすいです。気胸は自然に起こる症状がほとんどですが、なかには緊急性が高く、命に関わる症状もあります。

肺がん・その他の悪性腫瘍

肺がんやそれ以外の悪性腫瘍が肋骨や横隔膜などに広がると、胸の痛みの原因になることがあります。風邪でもないのに咳や痰が2週間以上長引いたり、血痰があったりする場合は、呼吸器科、呼吸器内科などの診療科に一度受診しましょう。

骨や神経、筋肉の病気

肋骨骨折や肋間神経痛などの病気で胸の痛みがでる場合は、発症する前のけがや発疹などの症状があるため、原因がわかりやすいことが特徴です。主に胸の表面に痛みが感じられます。

肋骨骨折

肋骨骨折はけがや咳が原因となって起こり、安静にしているときもズキズキした強い胸の痛みがでます。身体を動かしたり呼吸をしたりするときに悪化しやすいです。

肋間神経痛・帯状疱疹

肋間神経(肋骨にそって走行する神経)の障害が原因で、チクチクした胸の痛みが生じる病気を肋間神経痛といいます。痛みは肋骨にそって生じ、胸の側面や背中にもみられることがあります。帯状疱疹(神経節にひそんでいる水ぼうそうウイルスの活性化)が原因となって起こります。

消化器系の病気

逆流性食道炎や急性すい炎、胆のう疾患などの病気も、胸の痛みの原因になります。これらの病気は、食後に症状がでることが多いです。

逆流性食道炎

食道が走る胸骨のあたり(胸の真ん中)に起きやすい胸の痛みで、逆流した胃酸がのどに炎症を起こすことが原因で生じます。食後に横向きで寝ているときにもよく起こり、胸が焼ける感じやみぞおちの痛みが伴いやすいです。逆流性食道炎の症状や原因について、より詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

>>【成人の1、2割が発症か】逆流性食道炎の症状、原因、治療法を解説

急性すい炎や胆のう疾患

急性すい炎や胆石、胆のう炎などの、すい臓や胆のうの炎症が原因となって、食後にみぞおちや胸の痛みが強くでることもあります。痛みを治すためには早急な治療が必要です。重症度によっては手術をおこなう可能性もあります。

ストレスによる病気

精神的なストレスが原因で起こる心因性の病気でも、胸の痛みがでることがあります。これらの病気は、検査で身体的異常が認められないことが多いです。

心臓神経症

心臓自体に原因がないにも関わらず、チクチクするような胸の痛みや動悸、息苦しさを自覚する病気です。抑うつや強い不安感、不眠などの症状が伴っているケースもあります。

胸痛症候群

胸痛症候群は、成長期や思春期の若い女性に多い原因不明の胸の痛みです。筋肉と骨格の成長や、ストレスが関係している可能性があると言われています。症状の多くは時間の経過とともに改善していきます。

一般社団法人 日本呼吸器学会:「呼吸器Q&A」

病気によって異なる胸の痛みの特徴

病気によって異なる胸の痛みの特徴

原因になる病気によって、胸の痛みの現れ方や部位などの特徴がそれぞれ異なります。以下に例を挙げますので、ご覧ください。

左胸から真ん中の圧迫するような痛み

左胸から真ん中にかけて圧迫される、締めつけられるような胸の痛みが現れるようなら、狭心症や心筋梗塞が原因で心臓に負担がかかっている可能性が高いです。狭心症であれば数分以内に痛みが治まりますが、心筋梗塞であれば激しい痛みが15分以上続きます。

首や肩まで痛みが広がったり、上腹部に痛みがでたりする場合もあります。動悸や息切れ、呼吸困難、冷や汗などの症状も伴っていないかチェックしましょう。

前胸部や胸表面(左胸や右胸)のチクチクした痛み

左右どちらかのチクチクした痛みや、ピリピリしびれるような痛みは、肋間神経痛が起きている可能性があります。肋間神経痛は肋骨にそって症状がでるため、前胸部から胸の側面、背中までの表面部分に痛みがおよびやすいです。

深呼吸や咳をしたときに、痛みが強くなる特徴もあります。心臓の病気による症状とは異なり、右側の胸にも痛みがでる可能性があることを知っておきましょう。

背中まで広がるズキズキした痛み

背中まで広がるズキズキした胸の痛みは、胸膜炎や膿胸が原因となっているケースがあります。背面の胸膜まで炎症や膿が広がると、ズキズキした鈍い痛みが背中まで生じやすくなるのです。また、身体を動かしたり、深呼吸をしたりするときに痛みが強まる場合は、肋骨骨折が生じている可能性もあります。

背中から腰まで広がる裂けるような痛み

大動脈解離が起こると、突然裂けるような胸の痛みが生じ、徐々に背中から腰まで範囲が広がります。大動脈解離は前触れもなく突然起こることが特徴です。命にも関わる病気なので、迷わずに救急要請をする必要があるでしょう。

場所が定まらないチクチクした痛み

場所が毎回定まらないチクチクした胸の痛みは、心臓神経症や胸痛症候群などの心因性の病気が原因となっている可能性が高いです。身体を伸ばしたり姿勢を変えたりすると、痛みが強まったり、軽快したりすることもあります。心臓や血管の病気とは異なり、すぐに緊急を要する症状ではないケースが多いです。

こんな胸の痛みは注意が必要

こんな胸の痛みは注意が必要

胸の痛みの種類によっては、命に関わる病気のサインかもしれません。以下の症状がでた場合は、救急要請を検討しましょう。

  • ●突然締めつけられるような胸の痛み
  • ●石で圧迫されるような胸の痛み
  • ●焼けつくような胸の痛み
  • ●前胸部から背中へ移っていく強い痛み
  • ●呼吸困難や冷や汗、嘔吐、意識低下、失神などが伴う胸の痛み

 

これらの胸の痛みは、心筋梗塞や大動脈解離、肺血栓性塞栓症が原因で起きている可能性があります。「今すぐ病院に行くべきか?」「救急車を呼ぶべきか?」など判断に迷ったときは救急安心センター事業「#7119」に電話しましょう。

救急安心センター事業「#7119」は、医師や看護師、トレーニングを受けた相談員が電話で症状の相談を受け、緊急性があるか判断してくれるサービスです。相談を受けた内容から、緊急性が高いと判断された場合は救急出動につないでくれます。一方で、緊急性が高くないと判断された場合は、受診可能な医療機関や受診のタイミングについてアドバイスしてくれます。

救急安心センター事業「#7119」は実施エリアが限られているので、詳しくは以下をご覧ください。

>>総務省消防庁「救急車の適時・適切な利用(適正利用)」

胸の痛みがでたときにチェックするポイント

胸の痛みがでたときにチェックするポイント

胸の痛みがでたときは、原因を把握するために以下の内容を確認しましょう。

  • ●痛みが初めてでたときはいつか
  • ●どんな痛みがあるか(チクチク、ズキズキ、圧迫感、締めつけられる痛みなど)
  • ●どの程度の痛みか
  • ●痛みはどのくらいの頻度と時間続くか
  • ●痛みがでるときの状況
  • ●痛みが変化する姿勢はあるか
  • ●呼吸や軽い作業などで痛みが変化するか
  • ●痛み以外の症状はあるか(呼吸困難、吐き気、動悸、発熱、意識低下、皮膚の水疱など)

 

受診時に痛みの特徴をできるだけ詳しく伝えられると、検査の選択や原因の特定に役立ちます。胸の痛みがでたときは、これらの特徴を忘れないように記録しておきましょう。緊急性の高いケースや、ひとりで判断が難しい場合は、共に付きそえる家族がチェックできると良いでしょう。

全国健康保険協会:胸痛(胸部不快感)

胸の痛みは何科に受診すべきか

胸の痛みは何科に受診すべきか

胸の痛みがでたときは救急外来や呼吸器内科、循環器内科を受診しましょう。これらの診療科では、胸の痛みの原因を特定し治療するための医療機器や技術がそろっています。

耐えがたい胸の痛みが持続するようであれば、救急外来を受診してください。緊急性の高い心臓や血管の病気が原因となっている可能性があります。

比較的軽い症状が続くようなら、呼吸器内科や循環器内科を受診しましょう。これらの受診で原因がはっきりせず、心因性の病気が疑われるような場合は、心療内科の受診が必要になることもあります。

胸の痛みの原因を調べる検査方法

胸の痛みの原因を調べる検査方法

胸の痛みの原因となる病気を調べるためには、問診や胸部レントゲン、心電図、血液検査などの検査が必要です。胸の痛みの詳細を聞いてから、各検査をおこなって原因を特定していきます。

はじめは問診を丁寧におこなって、胸の痛みの種類や部位、特徴を明らかにします。症状を医師に伝えるときは焦らずに、できるだけ詳しく伝えましょう。

次に胸部レントゲン検査や心電図検査、血液検査をおこなって、心臓や肺、骨などに病気がひそんでないかチェックします。これらの検査で異常がでなければ、精密検査として胸腹部のCT検査や腹部エコー検査などをおこなうこともあります。消化器系の病気や悪性腫瘍などがみつかる可能性もあるからです。

全ての検査で原因がはっきりしなければ、心因性の病気などの可能性も考慮し、痛み止めや抗不安薬などを投与して慎重に経過をみていきます。

まとめ

胸の痛みの原因は、心臓や肺、胸郭、消化器官、心因性の病気などさまざまです

胸の痛みの原因は、心臓や肺、胸郭、消化器官、心因性の病気などさまざまです。病気によって胸の痛みの特徴や、伴う症状が異なります。圧迫される、締めつけられる、引き裂かれるような胸の痛みは、心筋梗塞や大動脈解離などが起きている可能性があるため、救急要請を検討してください。

胸の痛みがでたときは痛みの感じ方や程度、状況、痛み以外の症状などをできるだけ詳しくチェックしましょう。救急外来や呼吸器内科、循環器内科で、原因を特定していきます。

ヒロオカクリニックでは、循環器内科で胸の痛みの診察をおこなうためのさまざまな検査機器を備えております。お悩みの方は、ぜひ一度診察にお越しください。

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