アレルギー性結膜炎とは?原因や症状から治療法・対処法まで解説

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「毎年同じ時期に目が痒くなる」「原因がわからない目の痒みが続いている」このような症状は、アレルギー性結膜炎かもしれません。目の痒みがあると、不快感から集中力が途切れたりするなど、日常生活にも支障が出てしまいますよね。
この記事では、アレルギー性結膜炎の原因や症状、治療法、日常生活で実施できる対処法などについて解説します。目の痒みが治らずお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
アレルギー性結膜炎とは
アレルギー性結膜炎とは、花粉やハウスダストなどといったアレルギー反応を引き起こす物質(アレルゲン)が目の表面に付着し、結膜の炎症が起こる病気です。結膜の炎症と共に、目の痒みや異物感を感じたり、目やにが出たりするといった症状がみられます。
近年では、国内におけるアレルギー性結膜炎の患者が増えているといわれており、私達にとって身近な病気です。花粉症といった季節性で発症するもの以外にも、ハウスダストなどが原因となる通年性のものなど、アレルギー性結膜炎の種類は幅広くあります。
アレルギー性結膜炎とウイルス性結膜炎の違い
アレルギー性結膜炎は、アレルゲンにより結膜の炎症を起こしますが、ウイルス性結膜炎はウイルス感染により結膜に炎症が起こる病気です。このように、同じ結膜炎でも、アレルギー性結膜炎とウイルス性結膜炎では原因が異なります。
ウイルス性結膜炎の場合、結膜の炎症や目の異物感だけではなく、熱や喉の痛みといった全身症状が出ることも少なくありません。また、ウイルス性結膜炎の中には感染力が強いものもあります。そのため、学校や職場での集団感染や家庭内感染につながる可能性も考えられ、登園や登校・出勤については医師の許可が必要です。
アレルギー性結膜炎の種類とその原因
アレルギー性結膜炎は、アレルゲンにより結膜に炎症を起こす病気の総称であり、その種類と原因は様々です。ここでは、アレルギー性結膜炎の種類とその原因について解説します。
季節性アレルギー性結膜炎は花粉が原因
季節性アレルギー性結膜炎は、主に植物の花粉が原因です。春から秋にかけて発症し、季節ごとに原因となる花粉の種類も異なります。代表的なものとしては以下のとおりです。
- ●春:スギ、ヒノキ
- ●夏:カモガヤ、オオアワガエリ
- ●秋:ブタクサ、ヨモギ
通年性アレルギー性結膜炎はハウスダストが原因
通年性アレルギー性結膜炎の主な原因は、身の回りに潜んでいるダニやカビなどを含むハウスダストであるといわれています。また、動物の毛やフケなどが原因となることもあります。
季節に関係なく1年を通して結膜に炎症が起こる点が特徴です。
巨大乳頭結膜炎はコンタクトレンズなどの刺激が原因
巨大乳頭結膜炎の主な原因は、コンタクトレンズなどによる刺激といわれています。その他にも、コンタクトレンズの洗浄不足による汚れや、素材が目に合わないことも原因となり得ます。
巨大乳頭結膜炎では、目の表面にある粘膜部分の乳頭が腫れることにより、結膜の炎症やかゆみなどの症状が生じます。
アトピー性角結膜炎は慢性の結膜炎
アトピー性角結膜炎は、アトピー性皮膚炎と併発する慢性の結膜炎です。
季節を問わず1年を通して結膜に炎症がみられ、慢性的な痒みや目やにがみられます。また、角膜にも炎症が起こり、白内障や緑内障などの合併により重度の視力低下を起こす可能性もあるため注意が必要です。
春季カタルはアレルギー性結膜炎が重症化したもの
春季カタルの原因となるアレルゲンは多岐にわたりますが、主にスギやヒノキといった花粉やハウスダストなどが挙げられます。
春季カタルは、アレルギー性結膜炎が重症化したものです。アレルゲンによって特定の季節にのみ症状がみられることもあれば、1年を通して症状がみられることもあります。
病名に「春季」と付いていますが、季節を問わず症状が現れます。アトピー性皮膚炎を発症している小学生くらいまでの男児に多くみられ、大人になるまでに治癒することが多いです。
アレルギー性結膜炎の症状
アレルギー性結膜炎の症状として、代表的なものは主に以下の5つがあります。
目が赤くなる
アレルギー性結膜炎では、目の表面の血管が拡張し白目の周辺や目の端が赤く見える「結膜充血」が起こります。
目が赤くなる原因は、血管が拡張するためです。アレルゲンが体内に侵入すると、肥満細胞よりアレルギー症状を引き起こすヒスタミンが放出されます。放出されたヒスタミンが、血管や神経にあるヒスタミンH1受容体と結合することで、血管が拡張するため目が赤くなるといわれています。
目が痒くなる
アレルギー性結膜炎では、目の痒みも現れます。
目が痒くなる原因は、目が赤くなる症状と同様にヒスタミンが関わっています。アレルゲンが体内に侵入後、肥満細胞から放出されたヒスタミンが目の知覚神経などを刺激するため、目に痒みが生じるのです。
異物感を感じ目がゴロゴロする
アレルギー性結膜炎では、異物感や目がゴロゴロするといった症状が現れることもあります。
これは、アレルギー反応によりまぶたの裏の結膜に粒状の盛り上がりができ、まばたきする際に黒目と触れることで起こる症状です。目の中に何も入っていないのに、小さなゴミが入ったように感じることもあります。
目やにが出る
アレルゲンが原因で起こるアレルギー性結膜炎では、免疫反応の1つとして目やにが出ることがあります。
アレルギー性結膜炎の場合、涙のようにサラサラとした水状の目やにが見られることがほとんどです。
白目がブヨブヨと腫れる
アレルギー性結膜炎で目を強くこすってしまうと、白目がブヨブヨと腫れてしまうことがあります。これは角膜が浮腫んでいる状態であり、「結膜浮腫」と呼びます。
アレルギー性結膜炎の一種である春季カタルにおいても、この症状がみられることがあります。
アレルギー性結膜炎の治療法
アレルギー性結膜炎の治療では、基本的には薬物療法をおこないます。ここでは、アレルギー性結膜炎の主な治療法について解説します。
抗アレルギーの目薬を使用する
アレルギー性結膜炎の症状を抑えるために、まずは抗アレルギーの目薬を使用します。主に、目の痒みを抑え、日常生活への支障を減らすことが目的です。抗アレルギーの目薬としては、主に以下の2つが挙げられます。
<抗ヒスタミンH1拮抗薬>
アレルギー症状を引き起こすヒスタミンと、血管や神経にあるヒスタミンH1受容体が結合しないように作用します。
<メディエーター遊離抑制薬>
アレルギー症状を起こすヒスタミンやメディエーターなどの物質が、肥満細胞から出ることを抑えます。
これらの抗アレルギーの目薬は、比較的副作用が少なく安全に使用できる薬ですが、自己判断で使用せず医師の指示に従うようにしましょう。
季節性アレルギー性結膜炎の場合、花粉飛散予測日の約2週間前か、もしくは症状が少しでも現れた時点で、抗アレルギー目薬の使用が推奨されています。これにより、花粉飛散ピーク時の症状軽減が期待できるのです。
鼻水などの症状もある場合は抗ヒスタミン薬も内服する
アレルギー性結膜炎の合併症状として、鼻水など目以外の症状が現れることも少なくありません。目以外の症状が合併している場合は、抗アレルギーの目薬と共に抗ヒスタミン薬の内服を検討すると良いでしょう。
炎症がひどい場合はステロイド剤の目薬も併用する
抗アレルギーの目薬を使用しても炎症が改善しない場合や、角膜に傷ができるなどの重症の場合は、ステロイド剤の目薬も併用します。
ステロイド剤の目薬は、症状の重症度に応じて選択されます。抗アレルギーの目薬に比べると即効性がありますが、副作用が出る可能性があるため、自己判断せずに医師の指示を守り、副作用が出ていないか確認しながら使用することが必要です。
春季カタルの場合は免疫抑制剤の目薬も使用する
アレルギー性結膜炎の中でも重症といわれる春季カタルの場合は、基本的には抗アレルギー薬の目薬を使用します。それでも症状の改善がみられない場合に、免疫抑制剤の目薬も使用します。
重症度によっては、さらにステロイド剤の目薬の併用も必要です。目薬での治療で効果がみられない場合や、結膜の病変が悪化する場合は、手術療法も選択肢として挙げられます。
アレルギー性結膜炎の対処法
アレルギー性結膜炎を治すためには、症状を抑えるための薬物療法とあわせて、原因となるアレルゲンを避けるための対処も必要です。ここでは、日常生活でおこなえるアレルギー性結膜炎の対処法についてご紹介します。
防護メガネやマスクなどを着用し花粉を避ける
季節性アレルギー性結膜炎の場合は、アレルゲンとなる花粉を避けることで症状の緩和につながります。花粉を避けるための具体的な方法は以下のとおりです。
- ●外出の際には防護メガネやマスクなどを着用する
- ●衣服はなるべく生地がツルツルしたものを着用する
- ●帰宅したら衣服や髪についた花粉をよく払い落してから部屋に入る
- ●帰宅後すぐに手洗い・うがい・洗顔をおこなう
- ●洗濯物を外に干す際は花粉をよく払い落としてから取り込む
- ●花粉の飛散量が多い時には外出を避ける
室内を清潔に保つ
通年性アレルギー性結膜炎の場合は、ハウスダストやダニなどといったアレルゲンの除去が必要です。
ハウスダストやダニなどの完全除去は難しいともいわれていますが、日常的な取り組みにより、症状を改善することが可能です。具体的な対処法は以下のとおりです。
- ●掃除機を使用した掃除をこまめにおこなう
- ●ほこりが溜まっている場所は濡れ雑巾などで拭く
- ●ほこりが付きそうな家具や物を身の周りに置かない
- ●寝具(布団や枕など)は天日干しやダニを通さないカバーをかける
- ●ダニ繁殖の温床となる畳や絨毯を避け床をフローリングにする
- ●部屋の湿度を50%、室温を20~25℃に保つ
目や目の周囲を清潔にする
アレルギー性結膜炎では、目や目の周囲を清潔にすることも対処法の1つです。
その中でも目を洗う「洗眼」も有効であると考えられていますが、水道水で直接目を洗うことは控えましょう。雑菌の付着により感染症などにつながるおそれがあります。
洗眼用の洗浄器具や点眼型洗眼薬は手軽に入手できますので、それらを使用することをおすすめします。その際には、防腐剤が入っていないものを選んだり、使用前には化粧など目の周囲の汚れを落とすようにしましょう。
アレルギー性結膜炎のQ&A
ここでは、アレルギー性結膜炎に関するよくある質問をまとめました。ぜひ参考にしてください。
アレルギー性結膜炎は疲れやストレスが原因?
アレルギー性結膜炎は、なにがしらのアレルゲンが原因となり結膜に炎症が起こります。しかし、近年では疲れやストレスなどによる免疫機能の乱れも関係していると考えられています。
疲れやストレスは直接的な原因ではありませんが、アレルギー反応が起きやすくなる要因になり得るでしょう。
特に、アレルギー性結膜炎の中でも通年性アレルギー性結膜炎は、免疫機能の低下により症状が悪化する可能性が少なくありません。生活習慣を見直すのはもちろん、ストレスをためない生活をするなど、体調を整え免疫機能を正常に維持することも大切です。
アレルギー性結膜炎はどれくらいで治る?
アレルギー性結膜炎の治療として目薬を正しく使用するだけではなく、併せて原因となるアレルゲンへの対策をおこなうことで、1~2週間で症状が改善するといわれています。
しかし、アレルギー性結膜炎の種類によっては1~2週間で症状が治まるとは限りません。1~2週間経過しても症状が改善しない場合は、目薬の変更などが必要となる可能性が考えられるため、病院に再受診するようにしましょう。
アレルギー性結膜炎はうつる?
アレルギー性結膜炎は、原因となるアレルゲンに触れることで起こります。感染症ではないため、人から人へうつりません。
人から人へうつるといわれているのは「ウイルス性結膜炎」です。
ウイルス性結膜炎は、原因となるウイルスの感染により起こります。高い感染力があり、学校内の集団感染や家庭内感染の原因にもなります。
ウイルス性結膜炎に感染した場合は、以下の点に注意することが必要です。
- ●こまめに手を洗う
- ●家族間でもタオルを共有しない
- ●使用したタオルをすぐに洗濯する
- ●目を擦らない
- ●十分な休息と食事を摂り免疫力を高める
- ●感染者は最後に入浴する
他にも、「細菌性結膜炎」も人から人へうつることがありますが、感染力はそれほど高くないといわれています。
アレルギー性結膜炎は片目にだけ症状が出ることもある?
アレルギー性結膜炎は、ほとんどの場合で両目に症状が生じます。しかし、両目共に同じ症状ではなく、片目だけ症状が重いケースも少なくありません。そのため、「片目にだけ症状が出た」と感じる場合もあるでしょう。
もし片目にだけ症状が出ている場合は、ウイルス性結膜炎である可能性があります。
まとめ
アレルギー性結膜炎は、原因や症状により季節性アレルギー性結膜炎・通年性アレルギー性結膜炎・巨大乳頭結膜炎・アトピー性角結膜炎・春季カタルに分類されます。
治療方法としては、症状を抑えるための薬物療法が主流です。完治するためには、薬物療法とあわせて、日常生活でアレルゲンを避けるための対処をおこなうことも必要です。
アレルギー性結膜炎は人にうつりませんが、ウイルス性結膜炎と勘違いして放置してしまった場合、周りにうつしてしまう可能性もあります。疑わしい症状がみられた場合は、自己判断せずに医師の診察を受けることをおすすします。
ヒロオカクリニックでは、アレルギー性結膜炎の検査・治療をおこなっております。ご希望の方は、アレルギー科をご予約のうえご相談ください。