【コロナ情報】中等症と重症の症状について どれほど深刻か知っておいて
INDEX
新型コロナウイルス感染症の症状は大きく、軽症、中等症、重症の3つにわけられます。中等症はさらに1と2にわかれます。
厚生労働省が作成した「新型コロナウイルス感染症診療の手引き第5版」では、症状は次のように定義されています。(*1)
症状の重さ | 症状の特徴 |
重症 | 集中治療室での治療や人工呼吸器が必要 |
中等症2 | 酸素投与が必要 酸素飽和度93%以下 |
中等症1 | 呼吸困難、肺炎の所見 酸素飽和度93~96% |
軽症 | 肺炎の所見なし 酸素飽和度96%以上 |
この記事では、中等症と重症について解説します。
中等症の「中」という文字を誤解しないでください。これは「マイルド」という意味ではなく、重症に近づいていると理解してください。
同じく重症も、簡単に「病気が重くなっている」と考えないでください。コロナ感染症の重症は、危険な状態であることを理解する必要があります。
新型コロナウイルスの初期症状については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:新型コロナウイルス感染症の初期症状を確実にとらえよう【自分と周囲の人のために】
重症は1.6%、死亡は1.0%
厚生労働省によるとコロナ感染症の重症化率と死亡率は次のとおりです(*1)。
●コロナ感染症の重症化率と死亡率
・重症化率、1.6%
・死亡率、1.0%
重症化率でカウントされる重症とは、1)集中治療室で治療を受けた、2)人工呼吸器を使って治療を受けた、3)死亡した、などとなっています。死亡も重症化率にカウントされている点に注意してください。
したがって、上記の死亡率1.0%は、全体の1.0%ということになります。
つまり、1,000人がコロナ感染症を発症したら、16人が重症になり、そのうち10人が死亡していることになります。
無症状率と軽症率と中等症率は計98.4%だが油断はできない
厚生労働省は無症状率と軽症率と中等症率は公表していません。
ただ、重症+死亡が1.6%なので、無症状率+軽症率+中等症率は98.4%ということになります。
軽症の場合、経過観察のみで自然に軽快するか、対処療法で治りますが、ただ、コロナ感染症による死者のうち7割は陽性(感染)が判明した当初は軽症か無症状だったという報告もあります(*2、*3)。
したがって、98.4%が無症状・軽症・中等症だからといって、この病気を軽くみることはできません。
中等症の特徴
「新型コロナウイルス感染症診療の手引き第5版」から、さらに詳しく中等症の症状の特徴をみていきましょう。
中等症1の特徴
中等症1は次のように定義されています。
・酸素飽和度が93~96%
・呼吸困難はあるが呼吸不全はない
・肺炎の所見がある
中等症1の診療のポイントは次のとおりです。
・入院のうえで慎重に観察する
・低酸素血症があっても呼吸困難を訴えないことがある
・患者さんの不安に対処する必要がある
呼吸不全とは、呼吸器の機能が低下した結果、血液中の酸素濃度が危険なほど低下した状態、または、血液中の二酸化炭素濃度が危険なほど上昇した状態です。
呼吸不全の結果、臓器や組織に酸素が送られなくなり、それらの機能は低下します。――ここまで至らない状態が中等症1です。
ただ呼吸困難は起きています。呼吸困難は、呼吸がしづらい、息が詰まる、空気を吸えないといった症状のことを指します。
肺炎も苦しい病気で、胸の痛み、激しい咳、そして呼吸困難が起きます。
そのため中等症1でも入院が必要である、としているわけです。
中等症2の特徴
中等症2は、1より悪化したものの重症には至っていないケースで、次のように定義されています。
・酸素飽和度が93%以下
・呼吸不全を引き起こしている
・酸素投与が必要
中等症2の診療のポイントは次のとおりです。
・呼吸不全の原因を推定する
・高度な医療を行える施設への転院を検討する
酸素飽和度93%をかなり噛み砕いた表現を使って評価すると「医者があせり始める」数値です。そして患者さんは呼吸不全によって、相当苦しんでいるはずです。
酸素投与とは、専用のマスクを患者さんの口に被せて、酸素を強制的に肺に送る治療法です。これによって動脈血のなかに酸素が溶け込むようになり、臓器や組織に酸素が届くようになります。
酸素投与が必要になる病気は、相当重いものです。心筋梗塞や心不全によって心拍出量が異常に低下したり、外傷によって大量出血して血液の酸素運搬能力が著しく低下したりしたときに使います。
コロナ感染症の中等症2は、それらの病気・外傷に匹敵するということです。
そのため、通常の病院に入院している患者さんが中等症2に進んでしまったら、その病院の医師は、高度な医療を提供している病院に転院させることを検討しなければならないわけです。
重症の特徴
コロナ感染症の重症の定義は次のとおりです。
・集中治療室での治療が必要
・人工呼吸器が必要
重症の診療のポイントは次のとおりです。
●人工呼吸器管理に基づく重症肺炎の2分類、L型かH型かを見極める
・L型:肺は柔らかく、換気量が増加している
・H型:肺水腫で、エクモの導入を検討する
●L型からH型への移行の判定は難しい
もう酸素飽和度の基準がありません。酸素飽和度で病状を測るレベルではないという意味です。
人工呼吸器は、酸素投与よりさらに強く酸素を送る方法です。
酸素投与はただ酸素を肺に送っているだけですが、人工呼吸器はより濃度の高い酸素を送ると同時に、高い圧をかけて肺を広げます。
つまり人工呼吸器は、強制的に呼吸をさせる装置といえます。
重症患者さんを診ている医師は、エクモ(extracorporeal membrane oxygenation、体外式膜型人工肺)を使うかどうか厳しい判断が求められます。
重症患者さんの容態がさらに悪化すると、人工呼吸器でも呼吸させられなくなります。そのとき、患者さんから人工呼吸器を外してエクモにつながなければなりません。
エクモは人工肺です。
患者さんの肺ではもう、酸素を血液に取り入れて、血液から二酸化炭素を取り出すことができないので、患者さんの体内から血液を取り出してエクモに送り、エクモでその血液に酸素を取り入れて患者さんの体内に戻します。
体内の血液を外に体外に出して装置(エクモ)のなかに入れてまた体内に戻すので、かなり重大な治療といえます。
まとめ~一般の人と医師では印象が全然違う
コロナ感染症の症状の違いについて、NHKがとてもユニークな解説をしているので紹介します(*4)。
一般の人は、およそ次のようにイメージしているといいます。
<一般の人のコロナ感染症の症状に対するイメージ>
・軽症:風邪程度だろう
・中等症:息苦しい
・重症:入院が必要なんだろう
ところが、医師は次のようにイメージしています。
<医師のコロナ感染症の症状に対するイメージ>
・軽症:とりあえず酸素投与は要らない
・中等症:肺炎によって多くの人が「人生で最も苦しい経験」をすることになるだろう
・重症:助からないかもしれない
もちろん、医師のイメージのほうが現実に近いものです。
中等症は、一般の人が考えているより苦しく、重症は、一般の人が考えているより「はるかに」危険な状態です。
症状の深刻さを知るとコロナを正確に恐がることができます。今一度、コロナを強く警戒するようにしたいものです。
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