コロナ後遺症の味覚障害について深掘り解説します
INDEX
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ感染症)が流行し始めたころ、「こんなことが起きるのか」と驚かれた症状があります。
それは味覚障害です。
日本では2020年3月に、コロナ感染症を発症したプロ野球選手が味覚障害を訴えていることが大きく報じられました(*1、*2)。
そして今、コロナ感染症から回復してから起きるコロナ後遺症が問題になっていますが、ここでも味覚障害を訴える方がいます。
コロナ後遺症の症状は何十種類も存在しますが、この記事では味覚障害にフォーカスして深掘り解説します。
味とは、味覚障害とは
そもそも味とは脳の認識です。物質には味を決める味物質があります。人の口のなかには味蕾(みらい)という組織があり、これは味受容体を持ちます。人が食物を口に入れると、味受容体が食物の味物質を感知して、その情報を神経に伝え、それが脳に届き「味がする」と認識します(*3)。
味蕾、味受容体、味物質の感知、神経伝達、脳の働きのいずれかの支障?
味覚障害とは「味がする」という認識が起きないことを意味します。
そして「味がする」という認識は、味蕾、味受容体、味物質の感知、神経伝達、脳の働きによって生じるので、このうちのいずれかに支障が起きると味覚障害が起きると考えることができます。
コロナで味覚障害が起きる理由
味覚障害は、普通の風邪でも発生することがあります。実は普通の風邪も、コロナと同じくウイルスに感染して発症します。
そのため、コロナによる味覚障害も風邪による味覚障害も、ウイルスが神経細胞を障害したり、ウイルスによって免疫機能が低下したりして味覚に支障が起きると考えられます(*4)。
「感染症の味覚障害」と「後遺症の味覚障害」の違い
味覚障害は大元になるコロナ感染症でも、そのあとに起きるコロナ後遺症でも発症することがわかっています。この2つの味覚障害の違いを紹介します。
急に起こる「感染症の味覚障害」
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、コロナ感染症の味覚障害は、発熱、咳、倦怠感が起きているなかで急に発生すると指摘しています(*5)。また嗅覚障害も急に発生するとみています。
味覚障害の発症率は、倦怠感のそれよりは低いようです。
別の臭いがすることもある「後遺症の味覚障害」
神奈川県によると、コロナ後遺症の味覚障害と嗅覚障害には次のような特徴があります(*6)。
■コロナ後遺症の味覚障害と嗅覚障害の特徴
・鼻づまりや鼻水をともなわず、突然発症する
・味や臭いがまったくしない
・味や臭いの感覚が弱まる
・これまでと異なる臭いを感じる
・こげたような味・臭いがする
味は食生活を楽しむための重要な要素なので、上記のような症状が起きることは患者さんにとって苦痛になっているはずです。
19種類の症状のうちの1つ(後遺症)
コロナ後遺症の症状は数十個以上あるとされていますが、厚生労働省は代表的なものを19種類挙げていて、味覚障害も嗅覚障害もそのなかに入っています。
参考までに19種類をすべて紹介しておきます(*7)。
■コロナ感染症の代表的な症状
1)疲労感・倦怠感
2)関節痛
3)筋肉痛
4)咳
5)喀痰
6)息切れ
7)胸痛
8)脱毛
9)記憶障害
10)集中力低下
11)頭痛
12)抑うつ
13)嗅覚障害
14)味覚障害
15)動悸
16)下痢
17)腹痛
18)睡眠障害
19)筋力低下
決定的な治療法は提示されていない
残念ながらコロナ後遺症による味覚障害についての決定的な治療法は提示されていません。
「コロナ後遺症は治るのか」という質問に対する厚生労働省の回答は以下のとおりです(*8)。
■「コロナ後遺症は治るのか」「治療法はあるのか」の回答
コロナ後遺症については、世界的に調査研究が進められている最中であり、まだ不明な点が多いのですが、現時点の調査研究では、コロナ後遺症の多くは、時間経過とともに症状が改善することが多いとされています。
その過程で、各症状に応じた対症療法が行われることもあります。また、症状が改善せずに持続する場合には、他の疾患による症状の可能性もありますので、かかりつけ医や地域の医療機関にご相談ください。
(注:正式名称「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状」を「コロナ後遺症」に書き換えています)
時間の経過とともに改善する、症状が持続する場合は医療機関にかかる、としかいっていません。
その他の機関も同じ見解を持っていて、神奈川県は、コロナ後遺症の味覚・嗅覚障害は感染後1カ月くらいで自然に治ることが多く、コロナ診断後2週間以上経過しても症状が続く場合は医療機関を受診するようすすめています(*5)。
受診は耳鼻咽喉科、または後遺症を診ているクリニックへ
コロナ後遺症による味覚障害が発生し医療機関を受ける場合、耳鼻咽喉科か、コロナ後遺症の治療を多く手掛けているクリニックにかかったほうがよいでしょう。
耳鼻咽喉科は、味や臭いに関する病気の専門です。
また、コロナ後遺症の治療を多く手掛けているクリニックは味覚障害についても知っているので受診をすすめることができます。
特に味覚障害のほかにもつらい症状がある場合は、総合的にこの病気を治療する必要があるので、コロナ後遺症の治療を多く手掛けているクリニックが第1選択肢になるかもしれません。
まとめ~医療機関を頼って
この記事の内容を箇条書きでまとめます。
・コロナ後遺症の味覚障害はウイルスが神経や免疫を障害して起きているのではないか
・突然発症する、味がまったくしない、別の味がする、といったことが起きる
・決定的な治療法はなく自然治癒を待つ
・症状が長引く場合は耳鼻咽喉科か、コロナ後遺症を治療しているクリニックへ
味がしないと生活の質が著しく低下します。しかし決定的な治療法がないためしばらくは我慢しなければならない状況が続くかもしれません。
ぜひ医療機関を頼ってください。