糖尿病を治療しよう「健康寿命を保つために」
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健康診断で「血糖値が高め」「糖尿病疑い」と出ているのに、糖尿病の治療にとりかかっていない、ということはありませんか。
糖尿病の治療を受けていたが、自分の意思で通院をやめてしまった、ということはありませんでしょうか。
健康寿命を保つために、糖尿病を治療しましょう(*1)。
糖尿病の治療は「メリットだらけ」といえます。なぜなら、恐ろしい合併症を防げるのに、やること(治療)はそれほど難しくなく、しかも効果が期待できるからです。
健康と生活の質と命に関わるから
糖尿病疑いがある人と糖尿病を発症している人が、次の3つうち1つでも当てはまれば治療に取りかかったり、治療を継続したり、クリニックを受診したりしたほうがよいでしょう。
・健康でいたい
・生活の質を維持したい
・命を失いたくない
国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは、糖尿病治療の目的を次のように説明しています(*1)。
■糖尿病治療の目的
血糖をコントロールして、糖尿病がない人と同じ健康寿命を保つこと
ここから、糖尿病治療の目的には医療上の目的と人生上の目的があることがわかります。
糖尿病治療の医療的な目標は血糖をコントロールすることです。ポイントは「コントロール」です。あとで詳しく解説します。
健康寿命とは、日常生活上の健康に関する制限がなく生きられる期間のことです。せっかく長生きできても、不健康では老後の人生を謳歌できません。
健康寿命を延ばすことこそ健康的な生活を送ることの最大の目標であり、そのために糖尿病を治療しなければならないわけです。
糖尿病は治りにくい「だから血糖値コントロールを」
糖尿病は極めて治りにくい病気なので、予防に努めることが第一です。
しかし治らなくても治療する価値があるところが、糖尿病治療のポイントになります。
糖尿病を完治させることができなくても、治療によって血糖値をコントロールすることは十分可能で、それができれば患者さんに大きなメリットをもたらします。
「血糖値をコントロールする」とはどういうことなのか
血糖値をコントロールするとは、異常な血糖値を正常値の範囲内にとどめることをいいます。
血糖値が正常か異常かをみる指標にHbA1cがあり、日本糖尿病学会は次のような基準を定めています(*2)。
■HbA1cと糖尿病
・6.0%未満:正常値
・6.0~6.5%:糖尿病を否定できない
・6.5%以上:糖尿病が強く疑われる
そして糖尿病治療では次のような目標を立てます(*1)。この3つが血糖値コントロールになります。
■糖尿病治療でのHbA1cの目標値
・血糖正常化を目指すときの目標値:6.0%未満
・合併症予防のための目標:7.0%未満
・治療強化が困難なときの目標:8.0%未満
なぜ目標が3つあるのか。
まず「血糖正常化を目指すときの目標値」ですが、これは理解しやすいと思います。もちろんこれが最優先目標なのですが、これを達成できなくても治療を継続する意味があり、そのために他の2つの目標があります。
「合併症予防のための目標」は正常値に戻せなくても合併症は予防できると期待できる数値です。
糖尿病は治しにくい病気なのですが、糖尿病を原因とする合併症の発症はなんとか抑え込みたいところなのでこの目標が設定されました。
そして「治療強化が困難なときの目標」ですが、糖尿病の治療を受けることは難しくないのですが、それでも実行が難しい方がいます。そういった方でもなんとか8.0%未満に抑え込みたい、ということで設定しています。
食事、運動、薬、これだけ
糖尿病の治療メニューは次の3つになります。
■糖尿病の治療法
・食事療法
・運動療法
・薬物療法
1つずつみていきます。
糖尿病の食事療法とは
真っ先に取り組む治療は食事療法です。適切な食事量と規則的な食事タイミング、栄養バランスの3条件をクリアした食事を摂ります。
クリニックを受診して糖尿病が確定して治療が必要になると、医師は患者さんに最初に食事療法の説明をするはずです。
糖尿病の運動療法とは
運動をすることが糖尿病の治療になるのは、筋肉量が増えると細胞が血液中の糖を取り込みやすくなるからです。筋肉が糖を大量に消費すれば、血液中の糖が減るわけです。
また、運動によって脂肪が減ると、血糖値を下げる作用を持つインスリンが効果を出しやすくなるので、これも血糖値コントロールに寄与します。
糖尿病の薬物療法とは
食事療法と運動療法で血糖値コントロールをすることがベストですが、それが不可能であれば薬を使います。
薬は、インスリンの分泌を促すものや、インスリンの効果を高めるものを使います。また、糖の排泄を促す薬を使うこともあります。
それでも効果がない場合は、インスリンを注射で投与する方法も用いられます。
まとめ~合併症は健康寿命どころか寿命も縮める
糖尿病の治療を受けないとどうなるのか。
高い確率で合併症を発症することになるでしょう。糖尿病の本当の恐ろしさはここから始まります。
糖尿病を原因とする合併症には、健康寿命だけでなく寿命それ自体も縮めるリスクがあります。
糖尿病の3大合併症は神経障害、網膜症、腎症です。それぞれ「足の病気」「目の病気」「腎臓の病気」と覚えておいてください。
糖尿病による神経障害を起こすとまず足にきます。足の細胞が壊疽(えそ)して、重症化すると切断しなければならなくなります。
糖尿病は血管をボロボロにして、細い血管から先にやられます。目には細い血管がたくさんあるので目がやられ、重症化すると失明します。
細い血管は腎臓にもたくさんあるので、腎臓もやられます。腎臓が機能しなくなると(腎不全に陥ると)透析治療が必要になります。
「足を切断したくなかったら」「失明したくなかったら」「腎不全に陥りたくなかったら」糖尿病の治療をしましょう。