めまいの治し方とは?原因や予防法など分かりやすく解説
INDEX
立ち上がった時などに、目がぐるぐるまわったり、ふわふわ浮いているように感じたりする症状を「めまい」といいます。突然めまいを感じて、気分が悪くなり座り込んでしまった経験がある方もいるでしょう。
めまいの主な原因は、内耳の障害ですが、脳や心臓の病気からくる場合もあります。
この記事では、めまいの原因や治し方や、寝返り体操などのめまいの予防法を紹介しています。薬物療法以外にも治し方があり、すぐに症状が改善する可能性もあります。
医療機関で医師の診察を受けるときのポイントも解説していますので、参考にしてみてください。
めまいとは
めまいとは、視界がぐるぐるまわるような感覚や、ふわふわ浮いているような感覚、立ちくらみなどによって、体のバランスが保てなくなった状態です。寝起きや立ち上がった時など、体を急に動かしたときに起きやすく、繰り返されるめまいに悩まされている方も多いでしょう。
めまいの種類と症状
めまいは、症状別に分類すると、
- ●回転性めまい
- ●浮動性めまい
- ●眼前暗黒感めまい
に大別されます。
回転性めまい
回転性めまいは、実際は動いていないのに、自分や周囲がぐるぐる回転しているように感じる症状です。横になっていても天井が回っているように感じる場合もあります。
浮動性めまい
浮動性めまいは、ふわふわ浮いているような感覚やゆらゆら揺れているような感覚のするめまいです。車に酔ったときの感覚にも似ています。
眼前暗黒感めまい
立ちくらみや意識が遠のいていく感覚とともに、目の前が真っ暗になるようなめまいもあります。脳への血流が悪くなると、眼前暗黒感めまいが生じます。
めまいの原因
まめいの主な原因は内耳の障害ですが、脳や心血管の障害、薬の影響もあります。
内耳の障害
耳の中は、外側から順に外耳、中耳、内耳に分けられています。内耳は、耳の構造の中で一番奥にあり、3つの半規管(三半規管)、前庭、蝸牛(かぎゅう)、聴神経で構成されています。蝸牛は聴覚に関係していますが、三半規管は体のバランスを保つための働きをします。
内耳への血流が悪くなったり、むくみがでたりなど、内耳で起こるさまざまな障害によって、めまいを感じるようになります。
脳や心血管の障害
脳や心臓への血流に障害が起こり、めまいにつながる場合もあります。
薬の影響
薬の副作用で、ふらつきやめまいを感じる場合もあります。運転や危険を伴う作業を控えるように心がけ、症状が出たら医療機関で相談するようにしましょう。
めまいを引き起こす病気
めまいに関係している病気について代表的なものを紹介します。めまいの治し方を知るために、まずは可能性のある病気をみていきましょう。
良性発作性頭位めまい症
内耳の中にある耳石が、耳石器からはがれて三半規管の中に入り込むと、体のバランスを感知する三半規管に異常が生じて、良性発作性頭位めまい症が起こります。
じっとしているとめまいは起こりませんが、決まった向きに頭を動かしたときにめまいが起きやすく、しばらくすると治まります。回転性のめまいを感じ、吐き気や嘔吐を伴うことはありますが、耳鳴りや難聴などの症状がないのが特徴です。
メニエール病
メニエール病では、内耳の中にあるリンパ液が、疲れやストレスなどの様々な原因で増加することで、内耳がむくみ異常が生じます。内耳全体に障害が出るため、めまいだけでなく、耳鳴りや難聴、頭痛もあらわれてきます。
突発性難聴
突発性難聴では、突然片方の耳に難聴が生じて、めまい、耳鳴りや耳の閉塞感を感じるようになります。原因としては、血流障害やウイルス感染などが考えられていますが、はっきりとはわかっていません。
発症後できるだけ早く治療を開始したほうが聴力が回復しやすい傾向にあり、早期発見が重要です。聴力が良くなったり悪くなったりといった症状の波がなく、ひとたび回復すれば症状が繰り返されることがないのが特徴です。
前庭神経炎
前庭神経とは、内耳からの情報を脳に伝えるための神経です。前庭神経炎は、前庭神経に何らかの原因で炎症が起き、障害が生じて激しいめまいに襲われます。
難聴や耳鳴りは生じませんが、めまいが起きてしばらく休んでも、めまいが改善することはありません。めまいとともに吐き気や嘔吐が数日続き、激しいめまいが改善した後もしばらくはふらつくこともあり、注意が必要です。
脳卒中
脳卒中とは、脳の血管が詰まって起こる脳梗塞と、脳の血管が破れて起こる脳出血やくも膜下出血をさしています。脳卒中によって、体のバランスを保つための脳内の神経経路が障害され、めまいが生じます。
脳卒中の場合、めまいの他に、うまく話せない、言葉が出にくい、しびれ、脱力感、頭痛、片側に麻痺がみられるなど、特有の症状があります。早期治療が重要なため、これらの症状に気づいたらすぐに医療機関で診察を受けましょう。
貧血
貧血になると、血中のヘモグロビン濃度が低くなり、全身に運ばれる酸素が少なくなります。その結果、立ちくらみがしたり、目の前が真っ暗になるようなめまいが起こります。
起立性低血圧
起立性低血圧では、急に立ち上がることで血圧が急激に下がり、脳に送られる血液が減少します。立ちくらみや気が遠くなるようなめまいを感じ、ひどい場合は失神することもあります。
薬の影響で起立性低血圧が生じることもあるため、気になる症状がある場合は医療機関で相談してみましょう。
こころの不調
ストレスやうつ病などのこころの不調がある場合、耳にも不調が出ることがあります。特に三半規管はストレスを感じやすく、影響が出るとめまいを起こしてしまいます。
こころの不調は、消化器官にも影響を及ぼし、吐き気や食欲不振なども同時に起こる可能性があります。内耳や脳などに障害がなく、他のめまいの原因が考えられない場合は、こころの不調の可能性も考えてみましょう。
めまいの治し方
めまいを感じたら、まずはその場に座るか横になって休み、安静にしましょう。めまいが落ち着いても、すぐに起き上がったり立ちあがったりせずに、ゆっくり動いてみましょう。安静にしてもなかなかめまいが改善しない場合や、めまい以外の気になる症状がある場合は、すぐに医療機関で診察を受けましょう。
ここでは、内耳障害によって引き起こされる、良性発作性頭位めまい症とメニエール病の治し方について詳しく解説していきます。
良性発作性頭位めまい症の治療
良性発作性頭位めまい症は、ほとんどの場合、数日以内に自然に症状が改善します。症状が強くて吐き気や嘔吐がある場合や、めまい以外の気になる症状がある場合は、医師の診察を受けるようにしましょう。
良性発作性頭位めまい症が疑われる場合、眼振検査(がんしんけんさ)を行います。めまいが生じる時は、眼にも乱れた動きがあらわれる場合が多く、これ眼振と言います。「フレンツェル眼鏡」や「赤外線CCDカメラ」を使って、頭を動かしたときの眼振を観察し、眼振がみられると良性発作性頭位めまい症と診断されます。
良性発作性頭位めまい症に特定の薬は無く、吐き気などに対する吐き気止めや内耳の循環を改善する薬を服用する場合があります。
良性発作性頭位めまい症の主な治療は、耳石置換法です。三半規管の中に入ってしまった耳石を元の場所に戻す方法で、医師の指導の下、横になった状態で頭を動かすことによって耳石を動かします。70%程度の方に効果的で、治療後すぐに改善する場合もあります。
三半規管の中で、特に後半規管に耳石が入りやすい傾向にありますが、ときに外側半規管に入ることもあります。
耳石置換法の1つにエプリー法があり、以下はその手順です。エプリー法は後半規管に入った耳石を戻す方法で、右耳なのか左耳なのかで、頭や体の向きが反対になります。
- 1.足を伸ばして座る
- 2.正面を向いた状態から斜め45度の方向に顔を向ける
- 3.顔の向きはそのままで、体を後ろに倒す
- 4.斜めに向けてを前に伸いた顔を90度回して、反対の斜め方向に動かす
- 5.顔の向きはそのままにして、体全体を90度回す(体は横向き、顔は斜め下向きになる)
- 6.頭と体の位置関係を保ったまま体を起こす
全ての良性発作性頭位めまい症に有効というわけではなく、吐き気がある場合や首などが痛い場合には耳石置換法で治療できない可能性があります。
メニエール病の治療
メニエール病の治療は、主に薬物療法です。内耳の循環を良くしてむくみを改善する薬、めまいの薬や吐き気止めを内服します。難聴が悪化している時はステロイドを服用したり、めまいが治りにくい場合には手術を行ったりします。
2018年から「中耳加圧療法」という新しい治療法が保険適用になりました。専用の中耳加圧装置を使って中耳に空気圧をかけ、内耳にたまっているリンパ液を押し出すことでむくみを解消します。メニエール病と診断されてすぐ開始できる治療法ではなく、生活指導や内服などの保存的治療を行っても改善しない難治性のメニエール病が対象です。
手技も比較的簡単で、在宅で自分で治療ができます。難治性のメニエール病に悩んでいる方は、医療機関で相談してみましょう。
めまいの予防法
めまいの1番の予防法は、規則正しい生活を送ることです。それ以外に、寝返り運動や禁煙も重要です。
規則正しい生活
規則正しい生活を送ることで、自律神経の乱れが整い、めまいが起こりにくくなります。
また規則正しい生活には、バランスのとれた食生活や十分な睡眠が不可欠です。
貧血になりにくいように鉄分摂取をこころがけたり、むくみを予防するために塩分の過剰摂取に注意したりしましょう。睡眠時間が少ないと頭がぼんやりして、日中の活動に影響が出て、こころの不調につながるおそれがあります。
バランスのとれた食生活は、体だけでなくこころの健康にもつながります。食事を楽しみ、十分な睡眠を確保することで、めまいの予防につなげましょう。
寝返り運動
良性発作性頭位めまい症の予防には、
- ●いつも同じ体の向きで寝ない
- ●頭を少し高くして寝る
- ●寝返り運動
があります。
いつも同じ体の向きで寝ると、耳石が三半規管にたまる可能性が高くなるため、横になるときには注意しましょう。また頭を少し高くして寝るだけで、耳石が三半規管に入りにくくなります。
もう一つ、めまいの予防に効果的な習慣は、寝返り運動です。起床時と就寝時の1日に2回おこなうようにしましょう。
- 1.仰向けになって10秒
- 2.顔だけ右を向いて10秒
- 3.仰向けに戻って10秒
- 4.顔だけ左を向いて10秒
これを1セットとして、5セット程度繰り返します。首が痛い場合は、顔だけでなく体ごと向きを変えるようにしましょう。
めまいが改善したとしても、頭を動かすと再びめまいを起こさないか不安になるかもしれませんが、同じ向きばかりでじっとしているのではなく、頭位を変えることが予防において重要です。良性発作性頭位めまい症を経験した方は、可能な範囲で寝返り体操をこころがけましょう。
禁煙
喫煙は、血流を悪くし、脳卒中や心疾患などのリスク要因となります。これらの病気の症状としてめまいが起こる可能性もあるため、禁煙はめまいの予防にもなります。
まとめ
ここまで、めまいの原因や治し方について解説してきました。
めまいは、症状によって、回転性めまい、浮動性めまい、眼前暗黒感めまいに大別されます。「実際には回っていないのに、ぐるぐるまわっているような感じ」や「地面に足がつかず体が浮いているような感じ」など、感じた症状をそのまま伝えてみましょう。眼前暗黒感めまいとは、立ちくらみや意識が遠のくような目の前が真っ暗になるめまいです。
めまいのために医療機関で医師の診察を受けるとき、以下のような問診をされると思います。
- ●どんなめまいなのか
- ●めまいはどれくらい前から感じているのか
- ●特にどんな時にめまいを感じやすいのか
- ●めまいはどれくらい続くか
- ●めまい以外の耳の症状(耳鳴り、難聴、耳の閉塞感)があるか
- ●耳以外の症状があるか
めまいの症状が続いている場合は、安静にして休むのが第一ですが、めまいの原因によって、治し方は異なります。しっかりと症状を伝えることで診断しやすくなり、早く治療を開始できるようになります。
疲れやストレスなどのこころの不調もめまいの原因になるため、普段からストレスを溜めないようにこころがけましょう。
ヒロオカクリニックでは、めまいの診療を行っております。めまいの気になる症状がある方は、内科をご予約の上、ご相談ください。また、こころの相談室もございます。日々の心配事やストレスでお悩みの方は、まずは一般外来を受診した上で、医師を通してご予約されてください。