糖尿病の初期症状は、わかりづらいが「ある」から見逃さないで
INDEX
糖尿病には初期症状がない、と勘違いしている人がいます。
高血圧や肝臓の病気には初期症状がないとされていますが、糖尿病には明確な兆候があります。
しかし糖尿病には初期症状がないと勘違いしてしまうのはやむをえないところがあり、なぜなら、わかりづらいからです。
例えば、太り始めるのは糖尿病の初期症状なのですが、体重が増え始めてまず思うのは、食べすぎや運動不足ではないでしょうか。
初期症状をとらえることは、早期治療に欠かせません。
これから紹介する症状を実感したら、糖尿病を疑ってみて主治医に相談したり、検査を受けたりしてみることをおすすめします。
理屈を押さえておけば、なぜ起きるのかがわかる
糖尿病の初期症状を紹介する前に、この病気が発症するメカニズムを解説します。ここを押さえておけば、なぜこの症状が糖尿病で起きるのかがわかります。
よいことが悪いことに変わる
糖尿病は血液中の糖の濃度が高くなる病気です。炭水化物に含まれる糖質(糖)は人の細胞のエネルギーになります。つまり、糖は人のエネルギーです。そのため、血液中に糖が存在するのは、糖を体内の細胞に運ぶためなので、よいことといえます。
しかし、血液中の糖が増えすぎると、悪いことに変わります。
血液中に糖があることはよいことなのに、糖の量が増えると悪いことに激変するのは、血液が砂糖水のようになってしまうからです。糖を多く含む血液は粘度が高くなり、血液の流れを悪くします。
血糖値が上がって血流が悪化して糖と血管壁が接触する頻度が高くなると、糖が血管壁のコラーゲンと結合して、血管壁を硬くしてしまいます。硬いものは傷つきやすくなるので、高血糖は血管をもろくします。
さらに、血管壁に傷がつくとそこにコレステロールがたまりやすくなり塊をつくります。この塊も、血管壁を傷つけたり、血流を悪化させたり、血管を詰まらせたりします。
インスリンが出なくなったり、働かなくなったりする
糖尿病にいたる道はもう1本あり、それはインスリンが出なくなったり、働かなくなったりすることです。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、細胞が血液中の糖を取り込むときに手助けします。インスリンの「仲介」で、細胞は糖を「食べる」ことができる、というイメージです。
人が炭水化物を大量に食べると血液中の糖が急激に増えるので、膵臓はインスリンを大量に出して細胞が糖を取り込むのを助けます。それが続くと膵臓が疲弊してしまい、インスリンを少量しか出せなくなってしまいます。
さらに、肥満になるとインスリンが十分に分泌されていても、インスリンの働きが悪くなってしまいます。肥満になって内臓に脂肪がたまると、脂肪細胞から出るアディポカインという物質の量が変化して、インスリンの働きが弱まってしまうからです。この状態を、インスリン抵抗性といいます。
インスリン抵抗性が現れると、細胞が糖を取り込めなくなるので、血中の糖がどんどん増えてしまいます。
初期症状を理屈で覚えましょう
それでは糖尿病の初期症状を紹介します。あわせて、なぜその症状が起きるのかも解説します。
太る、肥満
先ほど紹介しましたが、太ってきたり肥満になったりすることは、糖尿病の初期症状の可能性があります。
炭水化物などを食べすぎると脂肪がつきすぎて肥満になります。そして肥満の人の多くは食べすぎているので、血糖値は上がっているはずです。
肥満は「糖の摂りすぎ→血糖値上昇→糖尿病」というルートと、「脂肪細胞の増加→インスリン抵抗性の発生→糖尿病」というルートの2つの「糖尿病の道」を持っています。
太ってきたら、糖尿病予防と糖尿病治療のためにダイエットに取りかかりましょう。
疲れやすい、イライラする
疲れやすかったりイライラしたりする症状が長く続いていると、糖尿病を疑った方がよいかもしれません。
インスリンの働きが低下すると、細胞が糖を取り込めなくなります。細胞が「食事ができない」状態になるので細胞が働かなくなり、細胞で構成されている体が働きにくくなり、それが疲れという症状になって現れます。
また、脳は大量の糖を消費しないと健全に働けないので、インスリンの減少やインスリン抵抗性は脳にとっても重大事です。
脳は感情をコントロールしているので、脳の働きがにぶくなるとメンタルに支障をきたすようになり、イライラしたり集中できなくなったりします。
視力の低下とタコとイボ
視力の低下と手足にできるタコやイボは、普通はお互いに関係しない現象ですが、糖尿病が両者を結びつけてしまいます。
それは、糖尿病によって細い血管が傷つくからです。
眼には細い血管が大量に走っているので、糖尿病になると眼に支障が出ます。
タコやイボは、手足の血管の先端部分に十分血液が届かないと発生しやすくなります。手足の血管の先端部分は細いので、やはりタコもイボも糖尿病によって出やすくなります。
味覚がにぶくなる
食事のとき、以前より多くのマヨネーズや醤油などの調味料が必要になったら、糖尿病の兆候かもしれません。味覚がにぶくなると、濃い味を求めて調味料を多くしてしまうからです。
味覚が鈍化するのは、亜鉛が不足しているからです。
インスリンと亜鉛は深く関わっていて、糖尿病が発症しているとき亜鉛不足が起きていることがあります。
尿量が増えて喉が渇く
血糖値が高くなると、尿の量が増えることがわかっています。尿量の増加は糖尿病の症状の1つです。
そして尿が増えるので体内の水分が減り、喉が渇きやすくなります。
糖尿病患者さんが大量の水分を求めるのはこのためです。
頻尿も糖尿病の症状です。糖尿病になると腎臓が障害されるので、排尿がコントロールしにくくなり頻尿になることがあります。
まとめ~体の黄信号を見逃さないように
糖尿病は怖い病気です。したがって健康診断などで血糖値が異常値になったら、信号が灯ったと考えてよいでしょう。
糖尿病の初期症状は黄信号といえます。その警告を無視することなく、ダイエットしたり適度な運動を心がけたりして、糖尿病予防に努めましょう。
そして「変だな」と思ったら、早めに主治医に相談してください。もし糖尿病を発症していれば、早期治療に取りかかることで重症化を防ぐことができます。