食物アレルギーはどんな症状が出る?即時型と遅延型の違いも解説

INDEX

ちょっとした痒みや違和感から重大なアナフィラキシーまで、症状が多様である食物アレルギー。一般的には食べてすぐに症状が出るイメージがあるかと思いますが、最近では慢性的な不調の原因として「遅延型アレルギー」についても注目されています。

そこでこの記事では、食物アレルギーの即時型の症状と遅延型の症状の違い、検査方法や治療方法などについて解説します。子どもの食物アレルギーとの向き合い方に悩んでいる方や、自分は食物アレルギーかもしれないと感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

食物アレルギーとは

食物アレルギーとは

食物アレルギーとは、原因となる食材を食べたときにアレルギー反応が起こる現象を指します。子どもから大人までどの年代でも発症しますが、特に赤ちゃんで多く発症し、年齢が上がるにつれて次第に減少していきます。

これは、子どものときに食物アレルギーだったとしても、成長に伴って少しずつ食べられるようになっていくためです。離乳食や幼児食の中で食べられるものの範囲が広がっていくため、年齢が上がるごとにアレルゲンとなる食材の種類が増えていくのも特徴です。

アレルギー反応の仕組み

人間の体には、自己細胞ではない異物を排除しようとする「免疫」という働きが備わっています。本来、免疫は体に侵入しようとした細菌やウイルスなどの病原体に対して働きますが、何かしらの原因で花粉や特定の金属、食材などに過剰に反応してしまうことでアレルギー反応が起こります。

アレルゲンが体内に入ると、その特定の物質を攻撃するためのIgE抗体が作られます。IgE抗体はアレルギー反応を引き起こす「マスト細胞」の表面に付いて、アレルゲンの侵入に備えるようになり、この状態を「感作」と呼びます。

感作された状態で、再びアレルゲンが体内に入りIgE抗体に付くと、マスト細胞からアレルギー症状を起こす物質が放出され、アレルギー症状が出るようになります。これがアレルギーが起こる仕組みです。

食物アレルギーを起こす食材

食物アレルギーを起こす食材

消費者庁による令和3年度の調査では、アレルギーを引き起こす食物の上位5品目は、1位鶏卵(33.4%)、2位牛乳(18.6%)、3位木の実(くるみ・カシューナッツなど)類(13.5%)、4位小麦(8.8%)、5位落花生(6.1%)となり、これらだけで約8割を占めています。

食物アレルギーを起こす食材の中でも、重篤度・症例数の多い8品目を「特定原材料」とし、それらについては食品表示基準での表示を義務付けています。また、過去に一定の頻度で健康危害が見られた20品目を「特定原材料に準ずるもの」とし表示するよう推奨しています。

<特定原材料>

えび、かに、小麦、そば、落花生、くるみ、卵、乳

<特定原材料に準ずるもの>

さば、さけ、いくら、いか、あわび、牛肉、豚肉、鶏肉、大豆、ごま、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、やまいも、オレンジ、もも、キウイフルーツ、バナナ、りんご、ゼラチン

アレルギーと思われる症状が出たときには、これらの食物を食べていないかを思い出し、経過を記録しておきましょう。

参考:消費者庁ウェブサイト「令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書

食物アレルギーの症状とは

食物アレルギーの症状とは

食物アレルギーの症状には、即時型の症状と遅延型の症状があります。即時型の症状は、原因となる食物を摂取してから2時間以内に症状が出ます。遅延型の場合は、数時間から数週間後に症状が出ると言われています。

食物アレルギーの即時型症状

即時型の食物アレルギーの症状は、多くの場合、原因食物を摂取後30分以内、遅くとも2時間以内に起こります。主な症状は、以下の7つに分類されます。

  • ●皮膚症状
  • ●粘膜症状
  • ●呼吸器症状
  • ●消化器症状
  • ●神経症状
  • ●循環器症状
  • ●アナフィラキシー

 

それぞれの詳しい症状について解説します。

皮膚症状

発疹、発赤がみられ、かゆみが生じます。じんましんやむくみなどの症状があらわれることもあります。

粘膜症状

粘膜症状は、目・鼻・口腔内にあらわれます。目の充血やまぶたの腫れ、むくみ、涙、かゆみ、くしゃみや鼻水、鼻づまり、口腔内や唇、舌の違和感、のどのイガイガ感や腫れなどの症状が出ることがあります。

呼吸器症状

咳や声がれ、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)などの症状が出やすくなります。のどがむくんで締め付けられる感じがしたり、息苦しさを感じたりします。

消化器症状

腹痛、吐き気を感じ、嘔吐、下痢やひどい場合は血便が生じる場合もあります。

神経症状

頭痛、元気がなくなるなどの神経系の症状が出る場合もあります。また排尿や排便が間に合わなくなることもあります。

循環器症状

脈が速い、乱れる、触れないといった症状や、手足が冷たく唇や顔が真っ青になるチアノーゼなども起きることがあります。

アナフィラキシー

アナフィラキシーは、上記のような症状が重なり全身状態が悪くなります。さらに血圧が低下し、意識がもうろうとするなどの意識障害があらわれた場合、アナフィラキーショックを起こしています。

アドレナリンの注射での治療を受けなくてはなりません。命に関わる非常に危険な状態のため、早く適切な治療を受けることが重要です。

食物アレルギーの遅延型症状

遅延型の食物アレルギーでは、頭痛・めまい・気分の落ち込みなどの精神神経症状、下痢・腹痛などの消化器症状、また体調不良や倦怠感などアレルギーとは関係のないような多様な症状が見られます。場合によっては、原因となる食物を避けても数週間〜数ヶ月間も症状が続くこともあります。

即時型の食物アレルギーとは違い、原因となる食物を見つけにくいため、自分が遅延型の食物アレルギーであることに気付いていないケースも多くあります。即時型の食物アレルギーの場合はIgE抗体と関連していますが、遅延型の食物アレルギーは非IgE(IgG・IgA)抗体と関連があると言われています。腸内環境とも関連があると考えられており、「同じ食物を食べるとなんだか調子が悪くなる」という場合は、摂取した食物を記録し医療機関で診察を受けてみましょう。

大人に起こる食物アレルギーとは

大人に起こる食物アレルギーとは

大人も子どももアレルギー発症の仕組みは同じですが、原因となる食物の上位5つが異なり、大人の場合は小麦・甲殻類・果実類・魚類・木の実類となります。子どもで食物アレルギーを発症した場合は、年齢が上がるにつれて症状が出なくなる場合がほとんどですが、大人になってから発症した場合は治ることがないという違いもあります。

大人の場合、即時型の食物アレルギーの症状のほか、原因となる食物を食べた後に運動することでアナフィラキシーを起こしてしまう「食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)」を発症する場合もあります。食事の後、1~2時間以内に運動した場合に発症することが多く、10~20代で初めて症状が出る場合が多いといわれています。運動した後に突然症状が出てショック状態にまでなるケースもあるため、注意が必要です。

それ以外に、「口腔アレルギー症候群」も大人の食物アレルギーの一つです。りんごやももなどの生の果実や野菜などを食べた後に、口の周りや中・のど・耳にかゆみや腫れを生じます。症状がひどい場合は、アナフィラキシーを起こすこともあります。

このように、大人でも食物アレルギーを起こすことがあり、時には重大な症状が出ることもありますので注意が必要です。もしかしてアレルギーかも?と思ったら、検査受けて自覚し、適切な治療を受けるようにしましょう。

食物アレルギーの検査方法

食物アレルギーの検査方法

食物アレルギーの検査方法には、主に以下の3種類があります。

  • ●血中抗原特異的IgE抗体検査
  • ●皮膚プリックテスト
  • ●食物経口負荷テスト
  • ●問診

 

血中抗原特異的IgE抗体検査と皮膚ブリックテストは、アレルゲンとなる食物を特定するための補助的役割を果たしています。確定診断のためには、食物経口負荷テストをおこなう必要があります。

血中抗原特異的IgE抗体検査

血中抗原特異的IgE抗体検査は血液検査です。アレルゲンとなる特定の食物を摂取した後の、血液中のIgE抗体の量を測定します。IgE抗体の値が高いほど、そのアレルゲンに対して強く感作されていることをあらわしています。

しかし、IgE検査が陽性となった場合でも、摂取した時に必ずしもアレルギーの症状が出るわけではありません。確定診断のためには、この検査結果を参考にして食物経口負荷試験をおこないます。

皮膚プリックテスト

皮膚プリックテストでは、皮膚の上(おもに前腕部)にアレルゲンを含んだ検査液を置き、専用の針でその部分の皮膚を軽く刺します。針で刺された部位が赤くなったり腫れたりした場合、アレルギーの可能性が高いと考えられます。

痛みがほとんどなく、小さなお子様でも検査が可能です。しかし、確定診断のためには、この検査結果を参考にして食物経口負荷試験をおこなう必要があります。

食物経口負荷試験

食物経口負荷試験では、実際にアレルゲンの可能性のある食物を摂取してみて、アレルギーの症状の有無を確認します。直接アレルギーの症状を確認できるため、食物経口負荷試験では食物アレルギーの確定診断が可能です。アレルギーの症状が出てもすぐに適切な対応ができるよう、体制の整った病院で、少しずつ食物を食べて検査します。自宅ではおこなわないでください。

問診

アレルギーの検査で病院を受診した際には、上記のような検査のほかに問診も受けるでしょう。その際には、「どんな食物を摂取して」「どれくらいの時間で」「どのようなアレルギー症状が出たのか」や「他にアレルギーがないのか」などを詳細に伝える必要があります。問診の内容からアレルゲンを推測して検査をおこなうため、受診するまでの経過についてはしっかりメモして伝えられるようにしておきましょう。

食物アレルギーの治療とは

食物アレルギーの治療とは

食物アレルギーの治療法は、原因となる食材の必要最低限の除去と、症状に対する薬物療法の2つに大別されます。

原因となる食材の除去

食物アレルギーの治療は、原因となる食物を特定し、必要最小限に除去した食生活を送ることが基本です。症状の程度にもよりますが、栄養のバランスを考えて必要最低限の除去に留めなければなりません。

どの程度の量なら摂取しても大丈夫なのかを踏まえて除去する必要があるため、医師と相談のうえ実施するようおすすめします。疲れや体調の悪さが引き金となることもありますので、そのような場合は特に注意すると良いでしょう。

また、食物アレルギーは、原因となるものを食べたときだけでなく、皮膚や気道(粘膜)触れた際にも起きる可能性があります。重症度によっては、石鹸やシャンプー、化粧品などにも注意が必要です。

症状に対する薬物療法

残念ながら、現在のところ食物アレルギーを自体を治療する薬はありませんが、症状を軽くするための薬物療法が可能です。皮膚や粘膜への症状に対しては「抗ヒスタミン薬」でかゆみや発赤などを抑え、呼吸器症状に対しては「気管支拡張薬」の吸入や酸素投与をおこないます。

消化器症状に対しては、嘔吐による脱水や食欲不振による栄養不足を考量し、補液を点滴することを検討します。「ステロイド」という体の免疫反応を抑える薬を使用する場合もありますが、アレルギー反応だけでなく正常な免疫反応も抑える働きがあるため、必要に応じて医師により判断されます。

アナフィラキシーが疑われる場合には、すぐに病院を受診してください。救急要請をしても差し支えありません。搬送を待つ間、足を頭より高い位置にしたり、嘔吐による窒息を予防するために顔を横向きにして寝かせたりしましょう。

食物アレルギーを起こしやすい人やリスクのある人は、「エピペン」という自己注射薬を処方され持ち歩いているケースもあります。エピペンを使用する際は、太ももの外側かつ真ん中に打ってください。

まとめ

食物アレルギーについての症状や検査方法、治療方法に注目して解説

この記事では、食物アレルギーについての症状や検査方法、治療方法に注目して解説してきました。即時型の食物アレルギーの症状には、各部位におけるアレルギー反応が原因となって起こるものがほとんどで、それらが複数生じるとアナフィラキシーを起こす可能性があります。また遅延型の食物アレルギーでは、数時間から数週間後に頭痛・めまい・消化不良・落ち込みなどアレルギーとは思えないような症状が出るため、自分では食物アレルギーだと気づきにくいという特徴があります。

一般的に食物アレルギーは子どもの方が多く、次第に治っていくため大人では減少していく傾向があります。ただし、大人でも発症する可能性はゼロでないため、あてはまる症状がある場合は病院で医師による診察を受けるようにしましょう。

ヒロオカクリニックでは、食物アレルギーの検査・治療をおこなっております。ご希望の方は、アレルギー科をご予約のうえご相談ください。

<詳細はこちら>

症状別に記事が確認できる 特集記事一覧

花粉症や気管支喘息、アレルギー等はご相談ください。

アレルギーの原因は遺伝的なものに限るわけではなく、しっかりと治療すれば改善されるものも多数あります。重症化する前に専門医の治療を受けることをお勧めします。

ご利用詳細

CONTACT予約・お問い合わせ

Web予約・お問合せ 電話する