胃腸炎の症状とは?原因・治療法について解説
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胃腸炎とは、何らかの原因で胃や腸に炎症が起きることです。多くは腹痛、下痢、嘔吐、悪心などの症状を伴います。原因はさまざまで、食べたものやストレス、薬によるものまでいろいろです。
この記事では、胃腸炎の原因別に症状や潜伏期間を解説しました。また、胃腸炎の治療法についても説明しています。「この胃腸炎の原因は何?病院へ行った方がいいの?」と思ったら、この記事を参考にしていただければ幸いです。
胃腸炎の症状とは
胃腸炎の症状には、胃や腸の漠然とした不快感から、キリキリ、ズキズキといった痛みを伴うものまでいろいろです。また、嘔吐の症状も伴うことがあり、非常につらい疾患です。
感染性の胃腸炎の場合、腹痛や下痢、嘔吐といった症状が見られます。よく「お腹の風邪」とか小児では「下痢嘔吐症」などと呼ばれることもあります。重症化すると脱水症を起こすこともあり、子どもや高齢者などでは命にかかわることもあるため注意が必要です。
胃腸炎の原因
胃腸炎の原因は様々です。ストレスによる慢性的な胃腸の不調やピロリ菌などの影響による胃炎、トウガラシやニンニク、お酒の飲みすぎ、食べ過ぎなどによっても起こります。場合によってはウイルスや細菌の感染によって起こることもあります。
ウイルスや細菌のよる胃腸炎は一過性の下痢や嘔吐が急に起こります。一過性のものであるため、慢性胃腸炎とは分けて考えられています。感染性胃腸炎はほとんどの場合、急性胃腸炎です。
慢性胃腸炎について
日常的に胃腸の不調を起こしている状態です。過敏性腸炎や逆流性食道炎などがあります。胃の検査をしてもびらんがない場合もありますが、胃潰瘍などがある場合もあります。
急性胃腸炎(感染性胃腸炎)について
急性胃腸炎の場合、ほとんどが感染性の胃腸炎です。急性胃腸炎には、急激に始まる嘔吐や下痢、腹痛といった特徴があります。急性胃腸炎の原因にはウイルス性、細菌性、その他薬剤性のものや寄生虫によるもの、などがあります。ここからは、それら急性胃腸炎の原因になるものについてひとつずつ見ていきましょう。
ウイルス性
「お腹の風邪」といわれるのはほとんどがウイルス性の胃腸炎です。原因となる主なウイルスは「ノロ」「ロタ」「アデノ」などがあります。ウイルスは一年中存在しますが、乾燥していて気温が低い方が増殖しやすいため、冬になると患者数が増加するのが特徴です。
人の吐しゃ物や便にウイルスが多く含まれており、触れることはもちろん、空気中に巻き上げられたウイルスを吸い込むことによっても感染します。
ノロ
「ノロウイルス」感染症は冬に流行するウイルス性の胃腸炎として一般的なものです。手指や食品などを通して感染し、激しい下痢や嘔吐、腹痛を伴います。感染力が非常に高く、感染性胃腸炎の代表ともいえます。潜伏期間は24時間~48時間で、1日~2日で回復するのがほとんどですが、子どもやお年寄りなどでは重症化して死亡することもあるため注意が必要です。
ノロウイルスに対する抗ウイルス薬はありません。水分をしっかりととって、ウイルスが排出されるのを待つしかありません。原因は特定するのが難しく、ノロウイルスに汚染された二枚貝を十分加熱せずに食べたり、汚染された調理器具などから2次的に感染したりする場合がほとんどです。
患者の吐物や便には大量のウイルスが排出されているため、処理を行う際には注意が必要です。汚染された衣類は、可能ならば完全に密封して廃棄しましょう。処理にあたる人は必ずゴム手袋、マスク、ゴーグルを身に付け、舞い上がったウイルスを吸い込まないように注意することが必要です。ノロウイルスにアルコール消毒は効果がありません。消毒には次亜塩素酸ナトリウムを含む漂白剤(ハイター)を用います。85度以上の熱を90秒以上加えるのも効果的です。
ロタ
「ロタウイルス」感染症は主に乳幼児期(0~6歳児)によく見られる感染性の胃腸炎です。感染力が非常に高いのが特徴です。一般的に5歳までにほぼすべての子どもがロタウイルスに感染するといわれています。そのため、たいていの大人は免疫を持っており、感染してもごく軽症で済むか症状が出ない場合もあります。
しかし幼い子どもが初めて感染した場合、激しい嘔吐や水様便、発熱、腹痛などを起こすことがあり、水分も取れなくなってしまいます。まだ母乳やミルクからしか栄養を取れない乳児では命にかかわることもあるため、入院が必要です。
重症化を防ぐために現在ではロタウイルスワクチンが定期接種になり、生後8週から14週6日までに初回のワクチン接種を受けるよう定められています。
アデノ
アデノウイルス感染症は夏に流行する「プール熱」として知られる感染症と同じものです。夏にプールの水や、タオルを共有することなどで感染が広がります。主な症状は結膜炎や咽頭炎などですが、ウイルスは一年を通して存在します。夏以外に流行するときはほとんどの場合感染性の胃腸炎として現れます。
潜伏期間は約3日~10日で、発熱や下痢、嘔吐症状があるのは他の感染性胃腸炎と同じですが、やや下痢が長引くのが特徴です。ノロウイルスと同じようにアルコールや界面活性剤に対する抵抗が強く、ハイターなどの次亜塩素ナトリウムを含む消毒が効果的です。
コロナ感染症が流行していた期間にはアデノウイルスによる感染症の患者数が減少したともいわれており、手をしっかり洗うことがこの感染症の予防にも有効であることがわかっています。
細菌性
細菌性の胃腸炎は主に食中毒で起こる胃腸炎です。ここからは代表的ない急性胃腸炎の原因となる細菌について見てみましょう。
サルモネラ菌
鶏肉や卵などについていることが多い食中毒菌の代表です。また消毒されていない水などにも存在しており、今でも世界中で感染が起きています。潜伏期間は12時間~72時間で、特徴的な症状は発熱、下痢、腹痛などです。
健康な人は軽症で終わることがほとんどですが、子どもやお年寄りなどの体力のない方、また抗がん剤の治療中などで免疫抑制剤を使用している方の場合などは重症化することがあります。
軽症の場合は菌が排出されるのを待ちますが、重症の場合には抗生剤を使用することもあります。外国などでは生水を飲まないこと、鶏肉や卵はよく加熱して食べることで感染を予防することが可能です。
病原性大腸菌
病原性大腸菌には種類がたくさんあります。なかでも大腸ビブリオ菌は、サルモネラ菌と並ぶ2大食中毒菌です。魚介類に多く発生し、かつては集団食中毒事件の原因にもなったことがあります。熱に弱く、煮沸することで安全に食べることができることがわかり、近年は急激に感染者数を減らしています。
腸炎ビブリオ菌に代わって目立つようになったのがO-157です。1997年に大阪府内の小学校で集団発生し、12人が亡くなりました。潜伏期間は7時間~2日程度です。軽症なら1日~2日ほどで回復しますが、体力のない子どもやお年寄り、免疫の落ちている方などでは1週間~2週間も下痢が続くことがあります。激しい腹痛と下痢、38度以上の発熱が見られることもあり注意が必要です。
カンピロバクター
動物の内蔵や消毒殺菌されていない水などで感染することが知られている食中毒菌です。数百個というごく少ない菌が体に入っただけでも感染するため、感染力は強いといえます。下痢や発熱、腹痛、嘔吐、悪心、頭痛、悪寒、倦怠感などが代表的な症状です。
潜伏期間は1日~7日と比較的長いこと、また感染した数週間後に「ギランバレー症候群」を発症することがあるため注意が必要です。ギランバレー症候群を発症すると手足のまひや顔面まひ、呼吸困難などを起こすことがあります。
菌は加熱によって死滅するため、肉類は十分に加熱して食べましょう。また、殺菌が十分でない井戸水や湧き水などから感染した例も報告されているため、水も一度しっかり沸かしたものを飲むことで感染を防ぐことが可能です。
ウェルシュ菌
ウェルシュ菌は自然界に広く存在している菌です。野菜や動物の肉など、どこにでもいると考えてよいでしょう。ウェルシュ菌で起こる食中毒は主にカレーやシチューなどの大量に作る料理でよく発生します。ウェルシュ菌は熱に強いのが特徴です。そのため、加熱しても死滅しません。また空気を嫌う(嫌気性)ため、大鍋の底の方に残ったカレーやシチューの中で増殖します。
一般的に症状は軽く、腹痛や下痢などで終わりますが、体力のない子どもやお年寄り、免疫のない方などでは重症化することもあるため注意が必要です。予防策としてはカレーやシ
チューなどは一回で食べきれる量だけ作って食べきることが大切です。また残ったものを翌日に食べるのなら、できるだけ早く冷蔵庫に入れるようにしましょう。
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌はわたしたちの皮膚や鼻やのどなどに、いつも存在している常在菌です。顕微鏡で見るとブドウのように球体の菌が連なっていることから「ブドウ球菌」と呼ばれています。
黄色ブドウ菌が増殖したものを摂取すると、通常食後30分~6時間ほどで発症します。菌が増殖する際にエンテロトキシンという毒素を排出し、それが食中毒の原因になります。加熱に強く、高濃度の塩分でも生き延びるため、漬物や駅弁などでの集団食中毒がしばしば問題になります。
かつて、大手乳業の牛乳を飲んだ子どもたちに集団食中毒が起きる事件がありましたが、原因は黄色ブドウ球菌によるものであったと報告されています。
その他の胃腸炎
急性胃腸炎は食中毒の他にも様々な理由で発生します。例えばストレスなどは特に原因がないことも珍しくありません。ここからは、食中毒とは別の原因で起こる胃腸炎について見てみましょう。
ストレス
ストレスは胃腸と深い関係があります。強いストレスがかかると胃腸にトラブルが起きることは珍しくありません。過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎などもストレスとの関係が指摘されている胃腸炎のひとつです。ストレスを感じると一過性の激しい腹痛や下痢を発症することがあります。
特に食べ物と関係はないため、ストレスとなる状況を避けることや、薬でコントロールすることで、症状の緩和を目指すことが可能です。市販の胃腸薬でも対応できますが、症状が激しく、生活に支障をきたしている場合などは内科や胃腸科を受診してください。
薬剤性
薬剤によって起きる胃腸炎です。特に抗生物質はお腹の中の良い菌まで殺してしまうため、一時的にお腹を下すことがあります。一般的に抗生剤が処方されるときには整腸剤も一緒に処方されます。
抗生剤を飲んでいる間だけの一過性のものであるため、それほど心配する必要はありませんが、腹痛や下痢が強く、生活に支障をきたしているなら、薬を処方してもらった病院やクリニックに相談してみましょう。抗生剤の種類を変えてもらうことで症状が緩和されることもあります。
寄生虫
胃腸炎を起こす代表的な寄生虫はアニサキスです。天然物のサバやハマチ、イカなどに寄生していることがあり、生で食べることの多い刺身などで発生するため注意が必要です。魚がアニサキスを含んだプランクトンを食べることで寄生するため、養殖魚にはいません。
気づかずに食べてしまうと、アニサキスが胃壁を食い破って中に潜り込もうとするため、激しい胃痛が起こるのが特徴です。胃痛はアニサキスを駆除するまでよくなりません。駆除するためには内視鏡下で一つ一つ取り除かなければならず、大変苦しい思いをすることになります。
予防のためには、天然ものの魚は加熱して食べること、調理する際にはアニサキスがいないかよく見ることも大切です。
感染性胃腸炎の治療
感染性胃腸炎に対しては、基本的に薬はありません。細菌による胃腸炎の場合、重症のときには抗生剤が処方されることもありますが、基本的には「日にち薬」です。しっかりと水分をとって消化の良い食事を心がけてください。
感染性胃腸炎が流行りやすい季節
ウイルスは気温が低く乾燥している時期を好みます。そのため、圧倒的に冬場での感染が多くなるのが特徴です。一方、細菌性の胃腸炎は季節を問わず発生しています。基本的にウイルスも細菌も、一年中いるものであることを考えると、季節を問わず注意が必要です。
まとめ|胃腸炎を予防する
胃腸炎の原因は様々です。胃腸炎を起こすウイルスは一般的に加熱に弱い特徴があります。特に貝類、肉類はしっかり火を通して食べること、殺菌消毒していない生水を避けることで感染のリスクを下げることが可能です。
細菌性の胃腸炎についても同様のことが言えますが、熱に強い菌もいるため、予防策としては作り置きせず、食べる分だけ作るなどで食中毒を回避しましょう。かかるとつらい胃腸炎。注意することで回避できることも多くあります。ぜひこの記事を参考にしてください。
ヒロオカクリニックでは、胃腸炎の診察をおこなっております。
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