胃カメラ(胃内視鏡検査)でわかる病気を解説
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胃内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)は、管を飲み込むことになるので、つらい検査の1つとして認識している人は少なくないと思います。
しかし「この検査でわかる病気」について知ると、「受診してみよう」というモチベーションが湧いてくるかもしれません。
胃内視鏡検査で胃がんやポリープを発見できることはよく知られていますが、これら以外にもさまざまな病気の発見に役立っています。
胃がんがわかる
胃内視鏡検査で胃がんが見つかることは、この検査を受ける最も大きなメリットの1つと言えるでしょう。
ただ、胃がんを発見する検査には通常のX線検査もあります。X線検査なら装置の前に立つだけですので苦痛は伴いません。X線検査で済ますことができるのであれば、そのほうが良いような気もするでしょう。
X線検査が見落としたものを発見できるかもしれない
しかし、X線検査で「胃がんなし」と判定されたのに、胃内視鏡検査でがんを発見できることもあります。
初期の胃がんの場合、X線画像では、胃の粘膜のびらん(小さな傷)と見分けがつかないことがあります。しかし胃内視鏡検査なら、医師が直に患部を見ることができるので、胃がんかびらんかの判定がつきやすくなります。
また、胃がんのなかには、胃壁に凹凸をつけなかったり隆起しなかったりするものもあります。この場合も、X線画像では異常を発見できなくても、胃内視鏡なら見分けられるかもしれません。
胃X線検査と胃内視鏡検査の評価
もちろん、胃X線検査が見落としたがんを胃内視鏡検査で発見できても、それをもって胃X線検査が劣っていることにはなりません。
国立がん研究センターの「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」は、この2つの検査を次のように評価しています(*1)。
●胃X線検査の評価
・死亡率減少効果を示す相応な証拠がある
・対策型検診・任意型検診として推奨
・検査対象は50歳以上が望ましい
・不利益:バリウムによる誤嚥、偽陽性、過剰診断、放射線被ばく
●胃内視鏡検査の評価
・死亡率減少効果を示す相応な証拠がある
・対策型検診・任意型検診として推奨
・検査対象は50歳以上が望ましい
・受ける間隔は2、3年とすることが可能
・不利益:咽頭麻酔によるショック、穿孔や出血などの偶発症、重篤な場合は緊急性を要する
結局、胃内視鏡検査をすることになる
医師によっては、胃X線検査で異常が見つかった場合、結局は胃内視鏡検査を行うことになるので、「それならば最初から胃内視鏡検査を受けませんか」と患者様や受診者にアドバイスすることがあります。
胃内視鏡なら、小さながんであれば切除できるので、発見と同時に治療をすることも可能です。
ピロリの影響がわかる
胃がんの99%はヘリコバクター・ピロリ菌に由来するといわれ、さらに、ピロリ菌感染は胃がんリスクを5倍にするという研究結果もあります(*2)。
胃内視鏡検査を行うと、胃炎がピロリ菌によるものかどうかわかることがあります。
ピロリ菌がいない胃粘膜は、1)ほどよく湿っている、2)血管が浮き出ていない、3)ヒダがたくさんある、という特徴があります。
ピロリ菌がいる胃粘膜は、1)パサついている(潤いがない)、2)血管が透けて見える、3)ヒダが減っている、またはヒダがない、という特徴があります。
胃内視鏡なら、医師がこうした特徴を見つけることができます。
ピロリ菌の感染が疑われれば、さらに別の検査を行って感染の有無を確認し、感染していることがわかれば除菌の治療に取りかかることができます。
除菌に成功すれば、胃がんリスクを減らすことが期待できます。
食道がんがわかる
胃は食道の先にあるので、医師は胃内視鏡検査をするとき食道もしっかりチェックします。そのため胃内視鏡検査によって食道がんを発見できることもあります。
食道がんも初期ははっきりした形になっていないことがあるので、胃内視鏡を使って医師の目で確認できるかどうかは、早期治療に取りかかれるかどうかに大きく影響します。
食道がんも初期であれば胃内視鏡で治療できます。
急性胃炎の様子がわかる
急性胃炎は急激な痛みを伴います。胃内視鏡検査を行うことで、炎症の場所や程度が特定できます。
潰瘍がわかる
胃炎が進行してしまうと、粘膜がえぐれる潰瘍を発症してしまいます。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の場合、出血することも珍しくありません。
胃内視鏡検査を行えば、潰瘍の程度や出血の場所を特定できます。
胃・十二指腸潰瘍は多くの場合、内服薬で治癒できますが、まれに手術が必要になることがあります。その判断をするために、胃内視鏡検査を行ったほうがよい場合があります。
ポリープがわかる
ポリープとは、胃にできる小さなキノコのような突起です。
ポリープには、腫瘍性と非腫瘍性の2種類があります。
腫瘍性ポリープは悪性と良性があり、悪性とは胃がんのことです。
良性のポリープも、数割の確率で胃がんに進行することがあります。
非腫瘍性ポリープは、がん化する心配がないので切除しないのが一般的です。ピロリ菌に感染していない胃にできることがあります。
このようにポリープの処置の判断は難しいので、やはり胃内視鏡で医師の目で確認することは有益といえるでしょう。
腫瘍性ポリープの場合、切除したほうがよいという判断になることが多いのですが、胃内視鏡検査であれば発見してその場で切除できます。
アニサキスがわかる
生のイカ、サバ、サンマなどを食べたあとに猛烈な胃痛に襲われると、アニサキスという寄生虫が疑われます。
胃内視鏡検査をすると、小さなミミズのようなアニサキスを視認できます。そして内視鏡でアニサキスをつかんで除去することができます。
診断がつく
その他、次の病気が胃内視鏡検査でわかります。
●粘膜下腫瘍
●異所性膵
●逆流性食道炎
●裂孔ヘルニア
●バレット食道
●カンジダ症
●十二指腸がん
胃内視鏡検査を行うことで、どの病気で苦しんでいるのかがわかる場合があります。
そして診断がつくことで、治療法が決まります。
まとめ~見えないところを見る画期的な装置
胃内視鏡は、食道、胃、十二指腸を見ることができる画期的な装置といえます。
胃内視鏡の前進である胃カメラは日本が開発し、その開発秘話は吉村昭氏の小説「光る壁画」のテーマになっています。
胃カメラから胃内視鏡になった現在も、日本メーカーが世界のシェアを席巻しています。
胃内視鏡は進化を続けていて、鼻から挿入するタイプの胃内視鏡は苦しさが軽減できます。
専門家が推奨する検査ですので、迷ったら一度かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。