痛風の初期症状・原因と治療法について解説
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健康診断で「尿酸値が高いです」と注意を促されたことはありませんか。尿酸値の数値が高いと痛風になる確率が非常に高くなります。痛風は突然の激痛を伴う厄介な病気です。痛風にかかったことのある方から「突然足の指の付け根が痛くなり、歩けないほどつらかった」と聞いたことがあるかもしれません。
この記事では、痛風の初期症状や原因、治療法や予防する方法について詳しく取り上げています。健康診断で痛風に注意するように言われた、痛風かもしれないと心配されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
痛風とは
痛風は血中に尿酸という物質が増えることで起こる病気です。痛風という病名は、風が吹く程度の刺激でも激しい痛みに襲われることが由来となっています。
多くは男性に発症します。女性ホルモンが尿酸を排出する作用を持つため、女性にはあまり起こらないと言われています。
痛風の症状は突然出てくることから「痛風発作」と呼ばれ、発作が起きるとあまりの痛さに歩くことも困難になるほどです。1週間ほどで痛みは和らぎますが、発作は繰り返し起こるため長期的な治療が必要になります。
痛風の症状
痛風の典型的な症状は激しい痛みです。痛風発作を起こした人のうち約7割が、足の親指の付け根付近の腫れや痛みを経験します。
かかとや手、膝や足の裏、足の甲、足の関節やアキレス腱の付け根などが痛むという人もいますが、痛むのは一か所だけ、というのが特徴です。またわずかながら耳介に結節と呼ばれるしこりができたり、尿管結石などの症状が出たりする人もいます。
激しい痛み
発作が起きている間は歩くこともままならないほどの激痛になるのが特徴です。何回も発作を起こしたことのある人は、前触れとなる症状が分かることがあります。
痛みが起きるのは夜中から明け方が最も多く、痛みは2~3日続きます。1週間ほどすると痛みが和らぎ、2週間以内に消失することが多いため、治ったと思う人がいますが一時的なものです。痛みは必ず再び起こるため、治療を続けることが大切です。
結節や尿管結石
痛風の症状が出やすいのは関節ですが、まれに耳介(耳の体の外側に出ている部分)にも痛風結節と呼ばれるしこりができることがあります。痛風結節はくるぶしや足の指の関節にもできることがあり、放置すると関節や骨の変形につながる可能性があるため注意が必要です。
また痛風の原因となる尿酸は腎臓で代謝されるため、腎臓や尿管にも尿酸がたまります。痛風を治療せず放置していると尿管結石や腎障害などの重大な疾患にもつながるため、治療を継続しましょう。
痛風になりやすい人の特徴
痛風になりやすい人には次のような特徴があります。
- ●30代~40代の男性
- ●生活が不規則である
- ●激しい運動を頻繁にする
- ●肥満体型である
- ●早食いや大食いの癖がある
- ●ビールを飲むことが多い
- ●脂っこいものや魚卵を好んで食べることが多い
痛風の原因
痛風の原因になるのは「尿酸」という物質です。尿酸は新陳代謝によって発生する老廃物で、通常であれば尿や弁として排出されるため、体内の濃度は常に一定に保たれます。しかし、何らかの原因で尿酸の分解と代謝がうまくいかずに血中濃度が上がることがあります。
尿酸値が高くなった状態のことを高尿酸値血症といいます。高尿酸値の原因はさまざまです。腎臓自体の処理能力が低下して尿酸が排出できなくなっていることもあります。
尿酸が排出しきれなくなる理由は暴飲暴食、肥満などが挙げられます。ストレスや激しい運動なども原因のひとつです。ある種の薬物も原因になるとされています。
そして高尿酸値の状態が長く続き、尿酸が尿に溶けきれずに飽和状態になると「尿酸塩結晶」ができるのです。この結晶はガラス質で針のように細い形をしており、関節に沈着します。この結晶を白血球が処理するときに痛みがおきます。これが痛風発作です。
痛風の診断と治療
痛風の疑いがある場合、主に血液検査や尿検査で診断をおこないます。血液中の尿酸値の濃度が一定の数値を超えている場合は注意が必要です。痛風と診断された場合には、生活習慣の改善とともに投薬が開始されます。
検査
血液検査の結果、血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えている場合は高尿酸値血症となります。いわゆる痛風予備軍として注意が促される状態です。また尿酸値が高く痛風の症状が伴っている場合には痛風と診断され、治療が開始されます。
ただし、尿酸値の数値だけでは判断できないケースもあるため、肝機能やコレステロール、血糖値なども同時に調べます。またレントゲンを撮影し、骨に異常がないことを確認することもあります。このようにして総合的な所見から痛風と診断されるのです。
また、痛風のタイプを知るためにも血液検査とともに尿検査も実施します。痛風のタイプには「生産過剰型」「排泄低下型」「混合型」の3タイプがあります。それぞれのタイプによって使用する薬も変わるため、血液検査と尿検査は必須です。
生活の改善
痛風は生活習慣病のひとつです。食生活が豊かになったこととによるエネルギーの過剰摂取や、運動不足が大きく関係しています。そのため、痛風の治療には生活習慣の改善が不可欠です。
痛風になる人は、同時に肥満の問題を抱えていることが多くあります。痛風の改善には肥満を解消することが大切です。
そのために、食事を腹八分目に抑えることや脂っこいものやカロリーの高いものをできるだけ控えることなどが求められます。また、アルコールもできるだけ控えましょう。
ストレスも痛風の原因のひとつとされています。肥満を避け、ストレスを適度に発散するために適切な運動の習慣を持つようにしましょう。
投薬
痛風の治療には投薬が欠かせません。痛みを抑えるために非ステロイド性の抗炎症剤やステロイド、関節にたまった尿酸塩結晶を処理する白血球の働きを抑制するコルヒチンという薬が処方されます。コルヒチンは痛風発作の前兆となる足のむずかゆさ、ピリピリ感があるときに服用することで、大きな痛風発作を回避することが可能です。
尿酸値が6.0mg/dlを超えないようにコントロールしていくために、尿酸が作られにくくする薬や尿酸を排出しやすくする薬、また尿酸の再吸収を防ぐ薬などを定期的に服用します。薬を飲んでいる間は尿酸値が下がりますが、服用をやめるとまた上がってきます。そのため、治療を途中で中断しないようにすることが大切です。
痛風の予防と対策
痛風を予防することは生活習慣を整えることでもあります。痛風の発作が起こりやすい食品を避けるとともに、肥満を避けることが大切です。食事量は腹八分目をめざしましょう。
痛風を予防するための食事
痛風を予防するために、野菜を中心とした食生活となるよう努めましょう。プリン体の少ない食品には野菜の他、チーズや卵(鶏卵やうずらなど)があります。また海藻やきのこ類、芋類などは血液をアルカリ性に保ち、尿酸が作られにくくなるため積極的に摂ることが大切です。
脂っこいものや魚卵、レバーなど、プリン体の多い食品は尿酸値が上がる原因になるため極力避けましょう。アジやエビ、ビールなどもプリン体が多いため摂取は控えた方が良いでしょう。
アルコールを楽しみたいなら、プリン体が少ない焼酎かウイスキーなどの蒸留酒が比較的安心ですが、過剰なアルコール摂取は尿酸値を上げる原因になるので、飲みすぎには注意が必要です。その他に、よく水分を取り、尿量を増やすよう意識しましょう。また毎日コップ一杯の牛乳を飲むことで痛風の発症率が下がるといわれています。
痛風発作が起きた時の対策
自己流の手当てはかえって症状を悪化させることがあるため注意しましょう。痛む場所をさすったり揉んだりすると痛みが強くなることがあります。市販の鎮痛剤を服用することも、かえって痛みが強くなる場合があるためやめてください。
お酒を飲んだり、入浴して温まったりすると悪化します。痛いところは冷やすとよいでしょう。寝るときは足を高くして休みましょう。
病院では鎮痛消炎剤が処方されます。症状が重い時には局所麻酔入りのステロイド注射を打つこともあります。
痛風発作は一度起きると繰り返す可能性が大きい病気です。処方された薬は途中で中断することなく、しっかり服用しましょう。
尿酸が生成されないような生活習慣を保つことに加えて、定期的な受診を続ける必要があります。内服薬で血中の尿酸値をコントロールしつつ、定期的に血液検査と尿検査をおこなって症状を確認していくことが大切です。
痛風の発作は繰り返すたびに間隔が短くなっていきます。慢性化させないためには、最初の発作の時にできるだけ早く受診して治療を受けること、始めた治療を途中で中断しないことが大切です。
痛風は何科を受診すべき?
痛風の診療は痛風専門の外来はもちろんですが、内分泌内科や整形外科でも診察を受けることができます。各病院のホームページを見るか電話で問い合わせてみましょう。
痛風外来
痛風の専門外来です。痛風は尿酸値のコントロールがもっとも重要になります。一度痛風発作を起こした方は継続的な通院が必要となるため、通いやすい病院にすることも大切です。
内分泌内科
痛風は内分泌疾患の代表的なものです。内分泌内科では痛風とともに、高血圧症や脂質異常症などの合併症も診断できます。健康診断などで尿酸値が高いと指摘された場合などは一般内科でも大丈夫です。
整形外科
整形外科でも痛風の検査は可能です。特に尿酸値の数値が高いと指摘されたわけでもなく、突然足の痛みが起きている場合などは他の疾患との鑑別が必要になるため、整形外科を受診してみましょう。
痛風に合併しやすい他の病気
痛風に合併しやすい病気はたくさんあります。痛風ぐらい、と軽く考えると命にかかわることもあるため注意が必要です。
<痛風に合併しやすい病気>
- ●糖尿病
- ●脂質異常症
- ●高血圧
- ●腎不全
- ●尿管結石
ひとつずつ見ていきましょう。
糖尿病
糖尿病は血中の糖の数値が異常に高い状態が続く病気です。痛風も糖尿病も共に生活習慣病であり、肥満や食べすぎ、飲みすぎ、ストレスや運動不足などが関係しています。
尿酸値が高い人のうち、耐糖不能障害という糖尿病予備軍と指摘される方は20~50%いると言われています。糖尿病を発症するまでに高尿酸値が続いた場合、痛風発作を発症することがあるため注意が必要です。
また、痛風の治療は尿酸値をコントロールし、数値を一定に保つことが目的です。一般的に血糖値が高い場合は尿酸値が低くなる傾向ですが、血糖値のコントロールがうまくいかなかった場合には、尿酸値が大きく上下する場合があります。
痛風の発作は尿酸値が急に低くなった場合にも起きやすくなるのです。糖尿病と痛風を併発している方は注意しましょう。
脂質異常症
脂質異常症の方は、遺伝的な要素もありますが、運動不足、カロリーの高いものを好んで食べるなどの傾向があり、痛風の方と共通しています。脂質異常症を併発すると動脈硬化を起こす可能性が高くなり、心筋梗塞や脳出血などの発作を起こす危険性もあるためたいへん危険な状態です。
高血圧
高血圧の原因はさまざまです。もともと血圧が高い方もいますが、肥満や運動不足、ストレスや喫煙、過労やアルコールなど、高血圧症と痛風の原因とは重なるところが多い病態です。
高血圧の方の20~40%は尿酸値が高く、痛風の方の約30%で血圧が高いといわれており、高血圧と痛風の関係は以前から指摘されています。血圧が高いまま放置していると動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳梗塞などを起こす危険性も高くなります。
腎不全
痛風発作を起こす尿酸は腎臓で代謝されます。そのため、腎臓にも尿酸は蓄積されていきます。
尿酸値が高いまま放置していると腎臓の機能を阻害し、腎不全へと移行することもあり注意が必要です。また痛風結石が腎臓にたまると痛風腎となり、血尿を伴う激痛を引き起こすことがあります。
尿管結石
痛風の原因となる尿酸は尿中に排出されます。尿酸が結石となり、尿管にたまったものが尿路結石と呼ばれるものです。結石が尿管を傷つけるため、突然お腹や背中に激痛が起こり、血尿が出ることがあります。
吐き気、嘔吐などを伴うこともあり、結石が体外に排出されるまで痛みや違和感が治まりません。尿路結石は再発率が高く、結石を作らないこととともに結石を大きくしないことが大切です。痛風の治療と同様に、水分を多く摂ることや野菜を中心とした食生活の改善、適度な運動などが推奨されています。
まとめ
痛風の症状は痛みが激しく、大人の男性でも苦痛に顔をゆがめることがあるほどです。また一度痛風発作を起こすと再発を繰り返すため、長期にわたる治療が必要になります。気になる症状がある方は、痛風を予防するとともに適切な治療を受けていくために、通いやすい病院を探すことが大切です。
ヒロオカクリニックでは痛風に関する診察や治療をおこなっております。尿酸値が高いと指摘された方、突然の痛風発作でお困りの方はぜひ、当院にご相談ください。
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