花粉症を引き起こす植物の種類と花粉が飛散する時期を解説
INDEX
花粉症は「初春の病気」と考える人が多いのは、そのころになると多くのマスコミがニュースとして扱うようになるからでしょう。
確かに春に症状が深刻化することが多いのですが、花粉症の原因になる花粉は一年中どこかで飛んでいます。日本には、花粉症を引き起こす可能性がある植物が約60種類もあるので、被害は面的にも時間的にも拡散します。
この記事では、花粉症を引き起こす主な植物の種類と、花粉が飛散する時期を解説します。
種類と時期を知っておけば、「夏だから花粉症のわけがない」といった勘違いをしないで済むので、すぐに治療に取りかかることができます。
地域ごとにリスクが高い植物が異なる
花粉症を引き起こすリスクが高い植物と、その植物が多く生息する地域を紹介します(*1)。
北海道の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・ヨモギ属
・イネ科
・シラカバ
東北の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・シラカバ
・カナムグラ
関東の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・カナムグラ
中部・東海の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・カナムグラ
関西・中国・四国の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・カナムグラ
九州の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・カナムグラ
すべての地域で、ハンノキ属、スギ、ヒノキ科、イネ科、ヨモギ属が原因植物になっています。
ブタクサ属は北海道以外のすべての地域で被害を生んでいます。
シラカバは北海道と東北の人たちを悩ませています。
関東、中部、東海、関西、中国、四国、九州は同じラインナップになっています。
ハンノキ属とスギの地域別の花粉が多い時期
日本全国で花粉症を引き起こしている植物のうち、ハンノキ属とスギの、地域別の花粉が多い時期を確認しておきます。地域特性が出ていることがわかります。
まず、ハンノキ属をみていきます。
ハンノキ属の花粉が飛散する時期
・北海道:3月中旬~5月中旬
・東北:1月中旬、2月~6月中旬
・関東:1月上旬~5月
・中部・東海:1月上旬~4月下旬
・関西・中国・四国:1月~4月中旬、6月中旬
・九州:1月中旬~下旬、2月中旬~4月上旬、5月中旬~下旬
ハンノキ属の花粉は、北海道では1、2月に少ないのですが、他の地域は1月から猛威をふるっています。そして夏前には沈静化しています。
続いてスギを確認します。
スギの花粉が飛散する時期
・北海道:3月中旬~5月上旬
・東北:1月下旬から6月中旬、8月上旬、9月中旬~12月
・関東:1月~7月上旬、7月下旬、9月~12月
・中部・東海:1月~5月中旬、10月下旬~12月
・関西・中国・四国: 1月中旬~5月上旬、10月~12月
・九州:1月~5月上旬、5月下旬~6月上旬、6月下旬~7月上旬、9月上旬、10月~12月
九州のスギは、花粉が少ない月は8月しかありません。
またスギ花粉は、中部・東海・関西・中国・四国は夏が少なめですが、東北・関東は夏もしっかり飛んでいます。
引っ越して花粉症の発症時期が変わることも
同じ植物の花粉でも、地域によって飛ぶ時期が異なるということは、会社の転勤や高校から大学に進学するときなどに引っ越しをすると、花粉症が発症する時期が変わってくる可能性があります。
例えば、スギの花粉症に悩む中部の患者さんが関東に引っ越すと、春に起きていた症状が、夏に変わるかもしれません。
このことを知っておけば、春に症状が出なくなったからといって「治った」と勘違いしなくて済みますし、夏に症状が出ても「気のせい」と思わずに済みます。
どのように原因となる植物をみつけるのか
自分がどの植物の花粉症にかかっているかは、医療機関で行う検査でわかります。
花粉症の検査ではまず、そのアレルギー症状が本当に花粉によるものなのかどうか調べます。
「血中IgE検査」という血液検査をすることで、花粉症かその他のアレルギー疾患かがわかります。
花粉症であることがわかったら、次に植物を特定します。
「皮膚反応検査」は、患者さんの皮膚を少しひっかいて、花粉のエキスをつけて反応の有無をみます。ある花粉エキスで反応して、別の花粉エキスで反応しなければ、原因となる花粉を特定できるわけです。
より正確に植物を特定するには「鼻粘膜誘発テスト」を行います。皮膚反応検査で特定された花粉のエキスを、鼻の粘膜に付着させて反応をみます。
対処療法と根治療法
花粉症の治療には、症状を抑える対処療法と、完全に治すことを目指す根治療法があります。
対処療法は、内服薬(飲み薬)、点鼻薬、点眼薬などを使います。これらの薬を医師に処方してもらいます。これらの薬は、飲むのをやめると再発していしまいます。
根治療法は、花粉症では、スギの花粉症にだけアレルギー免疫療法という治療方針があります。アレルギー免疫療法は花粉症以外では、ダニ・アレルギーにも有効とされています。
アレルギー免疫療法では、微量のスギの花粉を患者さんに体内に投与していきます。スギ花粉の成分が配合された薬を舌の裏に投与(舌下投与)して、1分後に飲み込みます。
当院では対処療法、根治療法(舌下免疫療法)ともに行っており、患者さんと相談しながら治療方法を決め治療に当たっております。
なお、舌下免疫療法の初診は水曜日の午前中および金曜日の午前中のアレルギー科となります(対症療法は内科の月曜日~土曜日のいずれも可)。ご予約はこちら
アレルギー免疫療法で完治が期待できる理由
アレルギー免疫療法で完治できるのは、スギによる花粉症を起こさない「体質」に変わるからです。
人工的にスギ花粉を体内に入れることで、アレルギー反応を抑える細胞が増え、アレルギー反応を促進する細胞が減ります。体内の細胞の構成が定着すれば、完治が期待できます。
アレルギー免疫療法の欠点
アレルギー免疫療法は、スギによる花粉症であれば完治が期待できますが、欠点もあります。
まず患者さんは、毎日、舌下投与による服薬をしなければなりません。花粉が飛んでいない時期も舌下投与が必要になります。そして治療期間は3~5年と長期になります。
また、スギの花粉症の患者さんにスギの花粉を投与するので、アナフィラキシーショックという重い副作用が起きる可能性が、確率は低いのですが、ゼロではありません。
まとめ~花粉症を効果的に抑え込むために
飲めばすぐ治るというタイプの花粉症の特効薬はまだ開発されていません。そのため花粉症の患者さんは、つらい症状と長きにわたって付き合っていかなければなりません。
花粉症を発症すると、その人のパフォーマンスは著しく低下します。花粉症による経済損失は、日本では1日2,215億円にもなるという調査結果があるほどです(*2)。
花粉症の症状を効果的に抑えるためにも、花粉症について詳しく知り、治療に取りかかりましょう。
花粉症は「初春の病気」と考える人が多いのは、そのころになると多くのマスコミがニュースとして扱うようになるからでしょう。
確かに春に症状が深刻化することが多いのですが、花粉症の原因になる花粉は一年中どこかで飛んでいます。日本には、花粉症を引き起こす可能性がある植物が約60種類もあるので、被害は面的にも時間的にも拡散します。
この記事では、花粉症を引き起こす主な植物の種類と、花粉が飛散する時期を解説します。
種類と時期を知っておけば、「夏だから花粉症のわけがない」といった勘違いをしないで済むので、すぐに治療に取りかかることができます。
地域ごとにリスクが高い植物が異なる
花粉症を引き起こすリスクが高い植物と、その植物が多く生息する地域を紹介します(*1)。
北海道の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・ヨモギ属
・イネ科
・シラカバ
東北の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・シラカバ
・カナムグラ
関東の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・カナムグラ
中部・東海の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・カナムグラ
関西・中国・四国の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・カナムグラ
九州の高リスク植物
・ハンノキ属
・スギ
・ヒノキ科
・イネ科
・ヨモギ属
・ブタクサ属
・カナムグラ
すべての地域で、ハンノキ属、スギ、ヒノキ科、イネ科、ヨモギ属が原因植物になっています。
ブタクサ属は北海道以外のすべての地域で被害を生んでいます。
シラカバは北海道と東北の人たちを悩ませています。
関東、中部、東海、関西、中国、四国、九州は同じラインナップになっています。
ハンノキ属とスギの地域別の花粉が多い時期
日本全国で花粉症を引き起こしている植物のうち、ハンノキ属とスギの、地域別の花粉が多い時期を確認しておきます。地域特性が出ていることがわかります。
まず、ハンノキ属をみていきます。
ハンノキ属の花粉が飛散する時期
・北海道:3月中旬~5月中旬
・東北:1月中旬、2月~6月中旬
・関東:1月上旬~5月
・中部・東海:1月上旬~4月下旬
・関西・中国・四国:1月~4月中旬、6月中旬
・九州:1月中旬~下旬、2月中旬~4月上旬、5月中旬~下旬
ハンノキ属の花粉は、北海道では1、2月に少ないのですが、他の地域は1月から猛威をふるっています。そして夏前には沈静化しています。
続いてスギを確認します。
スギの花粉が飛散する時期
・北海道:3月中旬~5月上旬
・東北:1月下旬から6月中旬、8月上旬、9月中旬~12月
・関東:1月~7月上旬、7月下旬、9月~12月
・中部・東海:1月~5月中旬、10月下旬~12月
・関西・中国・四国: 1月中旬~5月上旬、10月~12月
・九州:1月~5月上旬、5月下旬~6月上旬、6月下旬~7月上旬、9月上旬、10月~12月
九州のスギは、花粉が少ない月は8月しかありません。
またスギ花粉は、中部・東海・関西・中国・四国は夏が少なめですが、東北・関東は夏もしっかり飛んでいます。
引っ越して花粉症の発症時期が変わることも
同じ植物の花粉でも、地域によって飛ぶ時期が異なるということは、会社の転勤や高校から大学に進学するときなどに引っ越しをすると、花粉症が発症する時期が変わってくる可能性があります。
例えば、スギの花粉症に悩む中部の患者さんが関東に引っ越すと、春に起きていた症状が、夏に変わるかもしれません。
このことを知っておけば、春に症状が出なくなったからといって「治った」と勘違いしなくて済みますし、夏に症状が出ても「気のせい」と思わずに済みます。
どのように原因となる植物をみつけるのか
自分がどの植物の花粉症にかかっているかは、医療機関で行う検査でわかります。
花粉症の検査ではまず、そのアレルギー症状が本当に花粉によるものなのかどうか調べます。
「血中IgE検査」という血液検査をすることで、花粉症かその他のアレルギー疾患かがわかります。
花粉症であることがわかったら、次に植物を特定します。
「皮膚反応検査」は、患者さんの皮膚を少しひっかいて、花粉のエキスをつけて反応の有無をみます。ある花粉エキスで反応して、別の花粉エキスで反応しなければ、原因となる花粉を特定できるわけです。
より正確に植物を特定するには「鼻粘膜誘発テスト」を行います。皮膚反応検査で特定された花粉のエキスを、鼻の粘膜に付着させて反応をみます。
対処療法と根治療法
花粉症の治療には、症状を抑える対処療法と、完全に治すことを目指す根治療法があります。
対処療法は、内服薬(飲み薬)、点鼻薬、点眼薬などを使います。これらの薬を医師に処方してもらいます。これらの薬は、飲むのをやめると再発していしまいます。
根治療法は、花粉症では、スギの花粉症にだけアレルギー免疫療法という治療方針があります。アレルギー免疫療法は花粉症以外では、ダニ・アレルギーにも有効とされています。
アレルギー免疫療法では、微量のスギの花粉を患者さんに体内に投与していきます。スギ花粉の成分が配合された薬を舌の裏に投与(舌下投与)して、1分後に飲み込みます。
当院では対処療法、根治療法(舌下免疫療法)ともに行っており、患者さんと相談しながら治療方法を決め治療に当たっております。
なお、舌下免疫療法の初診は水曜日の午前中および金曜日の午前中のアレルギー科となります(対症療法は内科の月曜日~土曜日のいずれも可)。ご予約はこちら
アレルギー免疫療法で完治が期待できる理由
アレルギー免疫療法で完治できるのは、スギによる花粉症を起こさない「体質」に変わるからです。
人工的にスギ花粉を体内に入れることで、アレルギー反応を抑える細胞が増え、アレルギー反応を促進する細胞が減ります。体内の細胞の構成が定着すれば、完治が期待できます。
アレルギー免疫療法の欠点
アレルギー免疫療法は、スギによる花粉症であれば完治が期待できますが、欠点もあります。
まず患者さんは、毎日、舌下投与による服薬をしなければなりません。花粉が飛んでいない時期も舌下投与が必要になります。そして治療期間は3~5年と長期になります。
また、スギの花粉症の患者さんにスギの花粉を投与するので、アナフィラキシーショックという重い副作用が起きる可能性が、確率は低いのですが、ゼロではありません。
まとめ~花粉症を効果的に抑え込むために
飲めばすぐ治るというタイプの花粉症の特効薬はまだ開発されていません。そのため花粉症の患者さんは、つらい症状と長きにわたって付き合っていかなければなりません。
花粉症を発症すると、その人のパフォーマンスは著しく低下します。花粉症による経済損失は、日本では1日2,215億円にもなるという調査結果があるほどです(*2)。
花粉症の症状を効果的に抑えるためにも、花粉症について詳しく知り、治療に取りかかりましょう。