頭痛も花粉症の症状です~気づきを早期治療につなげて
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頭痛も花粉症の症状のひとつに数えられます。
くしゃみや鼻水、目のかゆみは、花粉症の症状としてよく知られていますが、頭痛はそれらに比べてあまり知られていません。
花粉症の症状にどのようなものがあるのかを知っておくことで、もしかしたらと早めに疑うことができ、早い段階で医療機関にかかることにもつながります。
花粉症は早期治療の効果が出やすい病気ですのでぜひ記事の内容をご確認ください。
花粉と頭痛を結ぶ炎症について
花粉症は花粉が体内に侵入することで起きるアレルギー反応です。その結果として頭痛が起きるのなら、花粉が頭痛を引き起こしていることになります。
花粉と頭痛を結びつけるのは炎症です。
まずは炎症について解説します。
花粉症はアレルギー性鼻炎という病気のひとつなので「花粉症は炎症の病気」ということができます(*1)。
炎症とは治る過程であり、免疫である
炎症は、花粉が侵入したときだけでなく、ケガをしたときにも起きます。炎症の症状は発熱、腫れ、痛みなどです。
なぜこうした不快な症状が起きるのかというと、花粉の侵入やケガなどの異常事態によって、血管の拡張、血流の増加、血液成分の漏出、白血球の活動、神経への刺激といった身体のさまざまな反応が起きるからです(*2)。
これが炎症の正体なのですが、実は炎症は「治る」過程のひとつです。異常事態は、炎症という体の反応によって治っていきます。
そしてこれこそが免疫の働きです。免疫は身体を守る仕組みなので、炎症は「よい症状」と考えることができます。
*2 CREST/さきがけ「慢性炎症」研究領域 炎症について
過剰な炎症は体にダメージを与える
炎症が「よい症状」なら、花粉症による症状も「よい症状」のはずですが、もちろんそのようなことはありません。花粉症の症状は「悪い症状」です。
「よい症状」であるはずの炎症を「悪い症状」に変えるのは、過剰さです。
炎症という反応が過剰に起きると、身体にダメージを与えてしまいます(*3)。つまり適切な炎症は治る過程ですが、過剰な炎症は病気ととらえられてしまうわけです。
しかも花粉症の原因である花粉は、本来は少しくらい体内に入っても害や毒にはなりません。花粉症は、害にも毒にもならない花粉を退治するために身体に大きなダメージを与えるので「悪い症状」といえるのです。
花粉症の頭痛は副鼻腔の炎症が起こす
それでは続いて、なぜ花粉症による炎症が頭痛を引き起こすのか解説します。
花粉症の炎症は副鼻腔という場所でも起きます。「腔」は空洞という意味で、副鼻腔は鼻や目の周囲にある空洞のことです。
副鼻腔が炎症することにより、額、目、頬などに痛みが走り、これが頭痛になります。
「副鼻腔は頭のなかにあるので、そこに炎症が起きると頭痛が起きる」と考えてよいでしょう。
副鼻腔に炎症が起きると三叉神経や眼神経などに支障をきたします(*4)。三叉神経は顔の感覚を脳に伝える役割を持ち、眼神経は三叉神経から伸びている神経です。
三叉神経などに異常が起きると頭痛を引き起こします(*5)。
ここまでの説明の流れをまとめるとこのようになります。
花粉症を発症する
↓
副鼻腔が炎症を起こす
↓
炎症が三叉神経などに支障をきたす
↓
頭痛が起きる
*4 「第115回日本耳鼻咽喉科学会総会パネルディスカッション」鼻副鼻腔疾患に伴う頭痛,顔面痛
*5 頭痛Online 三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)
サイトカインによる頭痛
花粉症が頭痛を引き起こすメカニズムはもうひとつあります。
花粉症がサイトカインを生み、それが頭痛につながるケースです。
脳を刺激して痛む
花粉症によるアレルギー反応は、花粉に含まれる抗原によって体内に抗体ができることで発生します(*6)。
抗体は鼻や目の粘膜のなかにある肥満細胞と結合し、サイトカインなどの刺激物質を放出します。
そしてサイトカインが脳を刺激すると頭痛を起こします(*7)。
つまり次のような流れで頭痛が発生することになります。
花粉症を発症する
↓
サイトカインなどの刺激物質が放出される
↓
サイトカインが脳を刺激
↓
頭痛が起きる
余談になりますが新型コロナウイルス感染症でも、サイトカインが発生することで頭痛を引き起こすことが報告されています(*8)。
*6 SOUTHERN CROSS3月号 健康注意報 花粉症
*7 ビーリンサイト®点滴静注用35μgによる治療を受ける患者さんへ 注意していただきたい副作用
*8 臨床神経学雑誌第60巻9号 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と頭痛
症状を知って「あれ?」と思ったら治療を
ここまで花粉症の症状としての頭痛をみてきましたが、これはメインの症状ではありません。
花粉症の3大症状は、くしゃみ、鼻の異常、目の異常です(*9、*10)。
そのため頭痛が起きたときに、その前後や最中に3大症状も起きていたら、「花粉症かもしれない」と疑ってみてください。
そして「あれ?」と思ったら、素早く治療を受けることをおすすめします。
*9 国立環境研究所 花粉症(1)「症状を悪化させるもの」
*10 東京都アレルギー情報navi. 花粉症とは
花粉が飛ぶ前に治療に取りかかる
どの病気にも早期治療のメリットがあり、花粉症も同様です。
花粉症患者さんの約7割がスギ花粉によるものです。
そしてスギ花粉による花粉症は、花粉が飛散を始める前から治療薬を投与することで効果が高まることが知られています(*11、*12)。
そのため「花粉症かもしれない」と思った時点でクリニックを受診して、花粉症の診断を確定させるのはとても重要です。
このときはもう花粉症が発症しているので、この段階で治療を始めても花粉の飛散後の治療になります。もちろんこの治療でも効果がありますが、より重要なのは翌シーズンです。
一度花粉症と診断されたら、翌年に警戒することができます。自身が「花粉症持ち」であることを知っていれば、翌年は、花粉が飛散する前に治療を開始することができます。
花粉の飛散前からスギ花粉による花粉症の治療を始めることを初期療法といい、「鼻アレルギー診療ガイドライン」で推奨されている治療法です(*12)。
*11 厚生労働省 はじめに ~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~
*12 耳鼻免疫アレルギー(JJIAO) 37(4): 241―244, 2019 スギ花粉症に対する初期療法
まとめ~早期治療のメリットが大きい
記事の内容を箇条書きでまとめます。
・頭痛も花粉症の症状の1つに数えられる
・花粉症が頭痛を起こすメカニズムは2つある
・1つ目は、花粉症→副鼻腔の炎症→神経に支障→頭痛
・2つ目は、花粉症→サイトカインが発生→脳を刺激→頭痛
・「頭痛+花粉症3大症状」が出たら早期に治療を
・花粉症の早期治療はメリットが大きい
花粉症は、治療法や治療薬の進化が目覚ましい病気の1つです。
苦しさをなくしたり軽減したりするのに、医療の力を頼ってください。