花粉症は昔はなかった? 少なかった? 「なぜ今、急増しているのか」

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花粉症に悩まされている人は確実に増えています。
花粉が増える時期になると、周囲で花粉症を発症している人が多いと感じるのではないでしょうか。特に自分がそうである人は、周囲の人の花粉症にも敏感な場合が多いでしょうから、自分だけじゃない、年々増えているんじゃないか、そう思われるはずです。

年配の人のなかには「昔は花粉症なんてなかった」という人もいます。
にわかには信じられないかもしれませんが、実はそれは本当で、かつて花粉症は、ほとんど発症する人がいない珍しい病気でした。

ではなぜ花粉症は、時を経て多くの人を苦しめる国民病になってしまったのでしょう。

1985年までは花粉症はまれな病気だった?

国立環境研究所の「なぜこんなに増えているのか? 花粉症(2)」というレポートのなかに、次のような一文があります(*1)。

・20~30年前は、スギ花粉を吸入しても、アレルギー症状は引き起こさないものと考えられていました

このレポートが書かれたのは2005年なので、その20年前は1985年で、30年前は1975年です。1985年以前の記憶がある人は、「そういえば、そのころは花粉症で悩んでいる人は周囲にいなかった」と思い出せるはずです。
では、この20~30年の間に何が起きたのでしょう。
このレポートは次のように述べています。

・スギ花粉がきれいな状態では鼻にアレルギー症状を誘発するようには働かない

レポートによると、きれいなスギ花粉とは、森のなかに立っているスギが出したばかりの花粉のことです。きれいな花粉はアレルギー症状(花粉症)を誘発しない、ということは、つまり汚れた花粉が花粉症を誘発する、ということです。
では、汚れた花粉とはどのような状態のことを指し、なぜ花粉が汚れるとアレルギー症状を引き起こすのでしょうか。

花粉症は2人に1人が発症する国民病

花粉症が国民病になった理由を解説する前に、花粉症に悩む人がどれだけいるのか紹介します。
東京都福祉保健局の「花粉症患者実態調査報告書 2016年度」によると、都内の特定の観測地での「スギ花粉症推定有病率」は次のとおりでした(*2)。

<都内のスギ花粉症推定有病率の推移>

観測地 1983~1987年調査 1996年調査 2006年調査 2016年調査
大田区 8.9% 17.7% 28.5% 49.1%
あきる野市 7.5% 25.7% 28.0% 48.5%
調布市 15.7% 21.1% 27.1% 47.7%

 

1983~1987年調査では1、2割程度だったものが、2016年調査では約5割にまで急増しています。昔はなかった、かかる人が少なかった花粉症は、今や2人に1人がかかる国民病になってしまったということができます。

汚染された花粉がアレルゲンを放出する

花粉症の発症率が高くなってきたのは、花粉が汚れだしたからである、という説があります(*1*3)。この説を解説します。

症状を引き起こすのはアレルゲン

スギ花粉の場合、花粉に含まれる「Cry j1」という物質と「Cry j2」という物質が、花粉症の症状を引き起こします。この2つの物質をアレルゲン物質(抗原)といいます。
このアレルゲン物質は、花粉の汚れに関わらず、人の体内に入ると花粉症の症状が出てきます。

きれいな花粉は呼吸器に侵入できない

ただ、花粉の大きさは約30ミクロンほどで、人の呼吸器の深部に入るには大きすぎます。つまり、花粉にアレルゲン物質が含まれていても、花粉の状態が正常であれば呼吸器深部に入っていかないので、花粉症の症状は起きません。

花粉が破裂してアレルゲンを放出する

花粉は、何らかの衝撃を受けると破裂してしまい、そのときアレルゲン物質を放出します。アレルゲン物質の大きさは約1ミクロンほどで、この大きさだと呼吸器深部に入ることができ、花粉症の症状を引き起こします。
つまり花粉症は、衝撃を受けて破裂した花粉によって引き起こされる、といえます。

大気汚染物質が花粉を破壊する

花粉に衝撃を与えて破裂させるのが、空気中に浮遊する大気汚染物質です。
大気汚染物質には、自動車の排気ガスやゴミ焼却炉などから出る炭素物質、金属の微粒子、黄砂、PM2.5などがあります。花粉は、これらの物質と衝突すると破裂します。
大気汚染物質と触れているので、花粉症を引き起こす花粉のことを「汚れた花粉」と呼ぶわけです。
そして大気汚染物質も、花粉症の症状を悪化させる効果を持っています。

破裂確率は、自然状態から汚染状態になると2割から8割に急増する

埼玉大学工学部・環境共生学科物質循環制御研究室によると、花粉は自然のなかでも破裂してアレルゲン物質を放出します。しかし、自然に破裂する確率は2割程度です。
ところが大気汚染物質と衝突すると、花粉が破裂する確率は8割まで上がります。
つまり大気が汚れているほど、花粉症が発症しやすくなることがわかります。

まとめ~異物を出す作用とアレルギー反応は同じ

花粉症はアレルギー反応の1つです。アレルギー反応は人を苦しめますが、元々はよい作用でした。アレルギー反応によって涙や鼻水が出るのは、体内の異物を涙や鼻水と一緒に体外に出そうとしているからです。

昔、花粉症がなかったのは、花粉がなかったわけでも、体質が現代人と違っていたからでもありません。
今、花粉症に悩む人が急増したのは、環境が変わったからです。
環境が変わったことによって、異物を体の外に出すという優れた作用が、アレルギー反応という自分自身を苦しめるものに変わってしまいました。
花粉症はまさに現代病といえるでしょう。

新宿ヒロオカクリニックでは対処療法(内服薬(飲み薬)、点鼻薬、点眼薬)、および 根治療法(舌下免疫療法)を行っており、患者さんと相談しながら治療方法を決め治療にあたっております。
なお、舌下免疫療法の初診は水曜日の午前中および金曜日の午前中・午後のアレルギー科となります(対処療法は内科の月曜日~土曜日のいずれも可)。詳細はこちら。

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