ピロリ菌の有無を確かめる検査方法の種類と費用の解説
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胃炎、胃潰瘍、胃がんの発症に深くかかわっているピロリ菌は、感染によって人の胃のなかにすみつきます。
ところが、感染しても無症状のことが多いため、生息しているかどうかは検査を行わないとわかりません。また、胃炎などを発症しても、それがピロリ菌によるものかどうか調べるには、やはり検査が必要です。
この記事では、複数あるピロリ菌の検査を解説したうえで、それをクリニックなどの医療機関で受けるときの費用を紹介します。
尿素呼気検査
尿素呼気検査法なら、患者さんの呼気を2回採取するだけで、ピロリ菌に感染しているかどうかがわかります。血液採取も胃の組織の採取も必要ありません。
尿素呼気検査は多くの方が受けることになると思いますので、詳しく解説します。
尿素呼気検査の仕組み
胃のなかのピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を分泌します。ウレアーゼは、胃のなかの尿素を、アンモニアと二酸化炭素に分解します。
したがって、ピロリ菌に感染している場合、胃のなかの尿素が増えると、その人の呼気のなかの二酸化炭素の量が増えることになります。
尿素呼気検査はこの原理を応用しています。
患者さんに尿素を含む薬剤を飲んでもらい、呼気のなかの二酸化炭素の量を測定して、ピロリ菌の有無を推測します。
尿素呼気検査の流れ
クリニックなどで尿素呼気検査を受けるときの流れを紹介します。
・午前中に検査を受けるときは、朝食を食べないでください。午後中に検査を受けるときは昼食を抜いてください。尿素呼気検査は空腹時に行います。
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・専用パックに息を吹き込みます(呼気を採取します)。これは、基準となる二酸化炭素の量を測る目的で行います。
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・「ユービット」という尿素を含む薬を服用します。ユービットは100mlの水に溶かして飲みます。
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・薬を飲んだら、口のなかを水で丁寧にすすぎます。こうすることで口のなかにユービットの尿素が残らないようにします。口のなかに尿素が残っていると、検査結果に影響することがあるからです。
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・口のなかをすすいだら、5分間横になり、その後15分間座ります。
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・計20分が経過したら、再び別の専用パックに息を吹き込みます。
ここまでの作業が終わったら、1回目の専用パックのなかの呼気のなかの二酸化炭素の量と2回目の二酸化炭素の量を測定し、2回目の二酸化炭素の量が一定以上増えていたら「ピロリ菌に感染している」と推測します。
尿素呼気検査のメリットとデメリット
尿素呼気検査は患者さんの負担が小さく、短時間で行なえ、しかも高精度というメリットがあります。
ただ、口のなかの細菌によって偽陽性が出てしまうデメリットがあります。偽陽性とは、ピロリ菌がいないのに「いる」という結果が出てしまうことです。
培養法
培養法ではまず、胃内視鏡(いわゆる胃カメラ)を使って、胃の組織の一部を採取します。
その胃の組織を、ピロリ菌が好む37度の場所で5~7日培養します。培養とは、ピロリ菌を「育てる」ことです。
胃の組織にピロリ菌がいれば、培養によって増殖するので「いる」ことを確認することができます。胃の組織にピロリ菌がいなければ、培養してもピロリ菌は現れないので「胃のなかにいない」と推測することができます。
培養法のメリットとデメリット
培養法のメリットは特異性が高いことです。特異性が高いとは、実際に陰性だった場合(ピロリ菌がいない場合)、正しく陰性であると判定できる確率が高い、という意味になります。
培養法のデメリットは、感度がそれほど高くないことです。感度が高いとは、実際に陽性だった場合(ピロリ菌に感染していた場合)、正しく陽性であると判定できる確率が高いという意味です。つまり感度が高くないということは、本当は陽性なのに、陽性でないという判定が出てしまう可能性がある、ということになります。
培養法の感度が高くないのは、胃内視鏡で胃の組織を採取するからです。たまたまピロリ菌がいない場所を採取してしまうと、培養してもピロリ菌は検出できません。
迅速ウレアーゼ試験法
迅速ウレアーゼ試験法も尿素呼気検査と同じように、ピロリ菌が尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する性質を利用します。
胃内視鏡で採取した胃の組織に、アンモニアに反応する試薬を投与します。試薬が反応すれば「アンモニアがある」=「ピロリ菌がいる」ことがわかります。
迅速ウレアーゼ試験法のメリットとデメリット
迅速ウレアーゼ試験法のメリットは、一目瞭然であることです。
試薬は、陽性(ピロリ菌に感染している)なら赤くなり、陰性(ピロリ菌がいない)なら黄色に変わります。
また、15分ほどで結果が出る速さもメリットといえるでしょう。
迅速ウレアーゼ試験法のデメリットは、胃の組織を採取するので、培養法と同じように感度がそれほど高くないことです。
また、結果が出るまでの時間は、人によっては2時間ほどかかることがあります。
ピロリ菌検査の費用
ピロリ菌検査は、公的医療保険が使える場合と使えない場合があります。
保険適用なら5,000~6,000円負担
胃炎や胃潰瘍と診断された方は、公的医療保険が使え、その場合のピロリ菌検査の自己負担(3割負担)の額は5,000~6,000円ほどです。
この金額には、ピロリ菌の除菌治療の費用も含まれます。ピロリ菌がいるとわかったら、除菌治療を行います。
保険が使えないと1万~2万円が目安
「ピロリ菌に感染しているかどうか調べたい」「胃がん予防のためにピロリ菌検査を受けたい」と考えてピロリ菌検査を行う場合、公的医療保険は使えません。
その場合、検査費用は全額自己負担となり、金額の目安は検査のみ1万円程度、検査と除菌治療で2万円程度となります。
公的医療保険を使わない検査・治療を自由診療といい、自由診療はクリニックなどが独自に料金を設定できるので、上記の金額はあくまで目安となります。
まとめ~検査を受ける機会があったら積極的に検討してみてください
さまざま研究機関が、ピロリ菌を保有していると胃炎、胃潰瘍、胃がんの発症率が高くなることを確認しています。このことは、ピロリ菌を除菌すると、胃炎、胃潰瘍、胃がんから遠ざかることができる、ということを意味しています。
胃の不具合でクリニックにかかると、医師は「ピロリ菌の検査をしたことがありますか」と尋ねることがあります。もしまだピロリ菌検査を行ったことがなければ、ぜひ積極的に検討してみてください。
ピロリ菌がいることがわかれば、すぐに治療ができるからです。ピロリ菌の治療は、薬を飲むだけで済みます。
新宿 ヒロオカクリニックではピロリ菌の検査・治療や消化器内科の専門医による外来診療に加え、健診・人間ドックでの胃内視鏡検査も行っておりますのでお気軽にご相談ください。。詳細はこちら