高濃度ビタミンC点滴ががん治療に利用されるわけとは
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ビタミンCと聞くと、身体に良い成分というイメージがありますよね。そんなビタミンCが、がん治療にも利用されていることをご存知でしょうか。
この記事では、高濃度ビタミンC点滴がなぜがん治療に利用されるのか、副作用はないのかなどについて詳しく解説します。高濃度ビタミンC点滴とがん治療の関係性を知りたいという方は、是非参考にしてください。
高濃度ビタミンC点滴とは
高濃度ビタミンC点滴とは、がん治療を補完する目的でおこなう治療法です。ノーベル賞を受賞したライナス・ポーリング博士によって発見され、アメリカでがんの代替療法として研究や普及が進み、現在は日本でも採用されています。
高濃度ビタミンC点滴では、経口では摂取困難な12.5g〜100gのビタミンCを点滴で投与します。その結果、ビタミンCの高い抗酸化作用によって免疫機能を高め、がん治療をサポートする効果が期待できるのです。
近年ではがん治療のほかにも、免疫機能の維持・向上や疲労回復など幅広い効果を期待して、美容や健康目的で高濃度ビタミンC点滴を受ける方も増えてきています。
高濃度ビタミンC点滴の特徴
高濃度ビタミンC点滴には、経口では摂取できない量のビタミンCが含まれていることが特徴です。
ビタミンCは、私たちが生きていく上では欠かせない成分です。ビタミンCは体内で作られないため、食事などから摂取する必要があります。ビタミンCが不足すると、貧血や筋肉量の減少などを生じるほか、血管がもろくなって出血しやすくなる「壊血病」を発症する恐れもあります。
しかし、ビタミンCは水溶性であるため、経口で摂取しても過剰分は尿と一緒に体外へ排泄されます。また、健康や美容に十分な効果を期待するためには、かなり多くの量を摂取する必要があります。
高濃度ビタミンC点滴では、経口では摂取困難な量のビタミンCを血管から体内に入れられるため、胃腸で消化せずとも、体内の隅々まで行き届かせることが可能です。
高濃度ビタミンC点滴ががんに作用するメカニズム
高濃度ビタミンC点滴ががんに作用するメカニズムには以下のものが挙げられます。
- ●高い抗酸化作用で細胞のがん化を防ぐ
ビタミンCには高い抗酸化作用があり、正常な細胞ががん化するのを予防する作用が期待できます。
がんの発生にはさまざまな要因が関与しますが、酸化物質の過剰摂取や喫煙、ストレスなどによって正常な細胞内のDNAが損傷を受け、がん化することもあります。
高濃度ビタミンCの高い抗酸化作用には、正常細胞内のDNAに生じた損傷を消去させ、細胞のがん化を防ぐ効果が期待できます。 - ●免疫機能を高める
がん細胞は日々体内で作られますが、免疫機能が正常であればがん細胞は適切に処理されます。しかし、免疫機能が低下するとがん細胞が増殖し、がんを発症するケースがあります。高濃度ビタミンCの高い抗酸化作用は、がんの原因となる活性酸素を抑制することで免疫機能の維持・向上に役立ち、がんの予防に効果が期待できます。 - ●抗がん作用のある「インターフェロン」の生成を促す
高濃度ビタミンC点滴を投与すると、体内でインターフェロンという物質の生成が促進されます。インターフェロンには抗がん作用があり、胃がんの原因でもあるニトロソアミンの生成を抑える効果が期待できます。 - ●「新生血管」の成長を抑制する
高濃度ビタミンC点滴は、がんに栄養を与える血管の成長を抑制する効果が期待できます。
通常、血管は無秩序に増殖することはありません。しかし、がん細胞は新たな血管(新生血管)を作って周囲から血液や栄養を取り込もうとします。新生血管がつくられると、がん細胞はどんどん大きくなったり、転移したりする恐れがあります。
高濃度ビタミンC点滴には、新生血管がつくられることを抑制してがん細胞の成長を妨げる作用が期待できます。 - ●がん細胞が糖の代わりにビタミンCを取り込む
がん細胞は糖を「餌」としており、食事から摂取した糖を取り込んで成長する特徴があります。ビタミンCの構造は糖と似ているため、高濃度のビタミン Cを摂取することでがん細胞が糖の代わりにビタミンCを取り込み、成長が抑制されます。 - ●大量の「過酸化水素」を生成してがん細胞を死滅させる
体内に高濃度のビタミンCが取り込まれると、酸化して「過酸化水素」という物質に変化します。過酸化水素は抗酸化作用が高い上、がん細胞の多くは過酸化水素を分解するための酵素(カタラーゼ)を持っていません。そのため、抗酸化作用の高い過酸化水素ががん細胞内に蓄積することで、がん細胞が死滅するのです。
高濃度ビタミンC点滴の副作用
高濃度ビタミンC点滴では、まれに以下のような副作用を認めることがあります。
- ●点滴刺入部の痛み
高濃度ビタミンC点滴に関わらず、点滴療法では針を指す部位に痛みを認めるケースがあります。血管に痛みを伴う場合には、点滴注入速度を緩やかにすることで痛みを軽減できることもあります。 - ●のどの渇き
高濃度ビタミンCの利尿作用によってのどの渇きを感じることがあります。点滴治療中は水分をこまめに摂取することでのどの渇きや脱水を予防します。 - ●低カルシウム血症
ビタミンCにはカルシウムを尿と一緒に排出する作用があるため、血液中のカルシウム濃度が低下することがあります。低カルシウム血症を認める場合には、カルシウム製剤を内服して経過を観察します。 - ●低血糖
糖と構造がよく似たビタミンCを高濃度で投与することで、血糖値を下げる「インスリン」が分泌されて低血糖を招くことがあります。そのため、点滴の前にはしっかりと食事を摂ることが重要です。 - ●見せかけの高血糖
ビタミンCはブドウ糖とよく似た構造をしているため、点滴後に血糖値を測定すると一時的に高血糖となることがあります。普段血糖値を測定している場合には、高濃度ビタミンC点滴後は12時間程度空けてから測定しましょう。 - ●アレルギー
まれではあるものの、ビタミンC以外に含まれる成分に対してアレルギー反応を認めることがあります。
高濃度ビタミンC点滴ががん治療に利用されるわけ
高濃度ビタミンC点滴ががんに利用される理由にはいくつか挙げられます。ここでは、高濃度ビタミンC点滴ががん治療に利用されるわけを詳しく解説します。
がん細胞だけを攻撃する
高濃度ビタミンC点滴ががん治療に利用される理由は、がん細胞だけを狙って攻撃するためです。
体内に投与された高濃度ビタミンCは、酸化して過酸化水素に変化します。がん細胞以外の正常な細胞は過酸化水素を分解するための酵素(カタラーゼ)を持っているため、影響を受けることはありません。しかし、がん細胞はカタラーゼが乏しいため、細胞の中に過酸化水素が溜まり、過酸化水素の高い抗酸化作用によって死滅します。そのため、高濃度ビタミンC点滴では、正常な細胞を傷つけずにがん細胞だけを攻撃することができるのです。
吐き気などの副作用のリスクが少ない
高濃度ビタミンC点滴では、吐き気などの副作用のリスクが少ないこともがん治療に用いられる理由の一つです。
一般的ながん治療である抗がん剤治療では、がん細胞だけでなく正常な細胞も壊すため、吐き気や貧血、脱毛などの副作用を認めることがあります。また、放射線治療でも、正常な組織に放射線を照射することで皮膚の異常を招く恐れがあります。
しかし、高濃度ビタミンC点滴では、正常な細胞に影響を与えないため、吐き気や貧血、脱毛などの副作用はほとんど生じません。そのため、副作用の心配なく治療を受けることができます。
がん治療に伴う不快な症状を和らげる
高濃度ビタミンC点滴には、がん治療に伴う不快な症状を和らげる効果も期待できます。
標準的ながん治療である抗がん剤治療や放射線療法では、吐き気や貧血、脱毛、皮膚障害などの副作用が出現します。また、がんが増大するにつれ、強い痛みを伴うケースもあります。
しかし、高濃度ビタミンC点滴には、がん治療によるさまざまな症状の程度を軽減する効果があるといわれているほか、がんに伴う痛みを抑制する効果も期待できます。そのため、標準的ながん治療を受けている方の生活の質を高めることにも繋がります。
高濃度ビタミンC点滴の適応
高濃度ビタミンC点滴はさまざまながんに効果が期待できますが、中には治療が不向きな人もいます。ここでは、高濃度ビタミンC点滴が向いている人、不向きな人の特徴を解説します。
高濃度ビタミンC点滴が向いている人
高濃度ビタミンC点滴が向いているのは以下のようなケースです。
- ●抗がん剤や放射線などの標準的ながん治療で十分な効果が期待できなかった
- ●がん治療の効果を高めたい
- ●がん治療に伴う副作用を和らげたい
- ●標準治療と併用したい
- ●体調を整えながら寛解期を伸ばしたい
- ●がんの再発を予防したい
高濃度ビタミンC点滴は、あくまでも標準治療の代替療法として効果を発揮します。そのため、まずはがんのステージや症状などに応じた標準治療を受けた上で、治療効果をより高めたいという場合や、再発を予防したいという場合に主治医に相談の上検討することが重要です。
高濃度ビタミンC点滴が不向きな人
高濃度ビタミンC点滴が不向きなのは以下のようなケースです。
- ●G6PD欠損症の方
- ●腹水、胸水、強いむくみ(リンパ性浮腫)がある方
- ●心不全を発症している方
- ●透析治療中の方
- ●腎機能が低下している方
- ●頭蓋内腫瘍がある方
- ●過去に高濃度ビタミンC点滴でアレルギーを起こしたことがある方
- ●「メトトレキサート」「ベルケイド」を使用している方
- ●インシュリン注射を行っている方
- ●未成年の方
- ●妊娠中の方
G6PD欠損症という遺伝性の疾患を発症している方は、高濃度ビタミンC点滴によって血液中の赤血球が壊れてしまう可能性があるため、治療を受けることができません。また、透析治療中や腎機能が低下している方、頭蓋内腫瘍がある方、心不全を発症している方、腹水や強いむくみがある方も、高濃度ビタミンC点滴によって病状が悪化する恐れがあるため、治療が受けられないケースがあります。
メトトレキサートを使用中の方は、薬剤が結晶化して尿細管という部位に沈着する恐れがあります。そのため、メトトレキサートの使用前後は高濃度ビタミンC点滴が受けられません。また、ベルケイドを使用中の方は、ビタミンCによって薬剤の効果が減弱する恐れがあります。高濃度ビタミンCに関わらず、ベルケイドを使用中の方は経口でもビタミンCの摂取に注意が必要です。
高濃度ビタミンC点滴が受けられるかどうかは、主治医に確認しましょう。
高濃度ビタミンC点滴の最適な治療頻度
高濃度ビタミンC点滴の最適な治療頻度は、病状や目的などによって異なります。
がんの治療中で生活の質(QOL)を高めたいという場合や、がん治療の補完目的の場合には、高濃度ビタミンC点滴を週に2〜3回、3ヶ月程度継続して受けると良いでしょう。
しかし、がん治療に効果が期待できる高濃度ビタミンC点滴でも、短期間で劇的な効果を期待することは困難です。まずは検査データや自覚症状、現在受けている治療内容などを踏まえ、主治医と相談しながら経過に応じて治療頻度を検討する必要があります。
がんの治療中で高濃度ビタミンC点滴を検討している場合には、最適な治療頻度について主治医に相談してみましょう。
まとめ
高濃度ビタミンC点滴とは、ビタミンCを点滴によって体内に投与する方法です。ビタミンCがもつ高い抗酸作用によりがん細胞のみを効果的に攻撃するといわれており、がん治療にも利用されています。副作用のリスクが低く、現在受けているがん治療をサポートすることが期待できます。
しかし、中には高濃度ビタミンC点滴の適応にならないケースもあります。特にG6PD欠損症がある方や透析治療中の方、心不全を認める方などは治療が受けられないため注意が必要です。高濃度ビタミンC点滴の適応や最適な治療頻度などは主治医に確認しましょう。
がん治療において高濃度ビタミンC点滴を受ける際には、定期的かつ継続的に通院する必要があります。また、点滴には30分〜1時間程度の時間を要するため、通いやすい場所にあり、信頼のおける病院を選ぶと良いでしょう。
東京都新宿区にあるヒロオカクリニックでは、高濃度ビタミンC点滴をご用意しております。ご希望の方はご予約のうえご来院ください。