過敏性肺炎とは?原因と症状、治療方法について解説

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咳や息苦しさ、発熱など風邪のような症状が長期間続くと、それだけでストレスを感じますよね。このような症状が長期的・周期的に発生したり、特定の季節や場所、環境などで発生したりする場合は、過敏性肺炎かもしれません。

今回は、過敏性肺炎の症状や原因、治療方法についてご紹介します。上記のような症状でお悩みの方や、病院を受診すべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

過敏性肺炎とは

過敏性肺炎とは

過敏性肺炎は、持続する咳や発熱、呼吸困難の症状を呈するアレルギー性の肺炎です。原因物質(アレルゲン)を避けることで状態を改善できますが、長期間症状が持続したままでいると、肺が「線維化」という現象を起こして固くなり、十分に膨らみにくくなります。

硬くなった肺は本来の呼吸機能を維持することができず、最終的には呼吸不全につながる可能性があることから、早期より原因物質の特定と除去をおこない、改善に努めることが必要な呼吸器疾患です。

過敏性肺炎の原因

過敏性肺炎の原因

過敏性肺炎は、原因物質(アレルゲン)に長期間晒されることで発症します。原因物質は約300種類以上に及び、該当するものは人によって異なります。

このように、原因物質の種類が多い過敏性肺炎ですが、原因を特定できないケースも多く存在しており、全体の3〜5割を占めています。主な原因物質として代表的なものは以下のとおりです。

真菌(カビ)

過敏性肺炎の約75%は真菌が原因で発症します。真菌は、古くて湿気の多い木造住宅や畳がある家などに発生しやすいため、自宅で過ごすことの多い専業主婦や中年女性に多く発症するという特徴があります。

枯れ草や飼料

枯れ草や飼料に存在している高熱性放散菌という細菌を日常的に吸引することで発生します。過敏性肺炎は、このような環境で過ごしている農夫に多い職業病であることから、農夫肺とも呼ばれます。

鳥類の羽毛や排泄物

鳥の排泄物や羽毛由来のタンパクは、過敏性肺炎の原因のひとつです。鳥類を飼育している人は過敏性肺炎を起こしやすい傾向にありますが、直接的に鳥類と関わりのない方でも、羽毛布団やダウンなどの衣類に含まれる羽毛により誘発するリスクがあります。

加湿器

加湿器に発生したカビによって過敏性肺炎を発症することもあります。加湿器は乾燥対策に有効ですが、定期的に掃除をおこなわないと、加湿器の内部にカビが発生します。タンク内に発生したカビが水蒸気と共に放出され、何度も吸い込んでしまうことでアレルギー反応が起こるのです。

薬剤性(化学物質)

化学物質による持続的な曝露も大きな要因の一つとなっています。例えば、塗料として使用されるポリウレタンの原料である「イソシアネート」などが該当します。職業上、避けることが難しい場合は、N95マスクを使用しできるだけ吸入しないよう工夫が必要です。

過敏性肺炎を発症しやすい時期

過敏性肺炎を発症しやすい時期

過敏性肺炎は、四季のなかでも特に夏の時期に発症しやすい疾患であることから、夏型過敏性肺炎とも呼ばれています。過敏性肺炎の主な原因であるトリコスポロン(真菌)は、梅雨の時期の6月〜10月にかけて繁殖しやすくなります。日本特有の木造住宅や畳のある家は、高温で多湿になりやすく、夏の時期は特に細菌にとって好発部位となるのです。

生活拠点である家に大量に繁殖したトリコスポロンを、繰り返し日常的に吸い込んでしまうと、過敏性肺炎を引き起こす原因となります。毎年夏になると、風邪のような症状が出現したり、持続的な咳が続いたりする場合は、もしかすると風邪ではなく過敏性肺炎かもしれません。思いあたる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し一度相談してみましょう。

過敏性肺炎の症状と経過

過敏性肺炎の症状と経過

過敏性肺炎は症状の経過によって急性と慢性の2つの型に分類されます。

急性型

急性型は肺に強い炎症をきたしている状態です。原因物質の曝露によって、約4〜12時間後に発熱や息切れ、咳や痰などの呼吸器症状が出現しはじめ、数日~週単位で症状が持続します。原因となる物質を回避することで症状を消失でき、初期対応が早いほど完治する可能性が高くなります。

慢性型

慢性型は月~年単位で症状が持続します。慢性型のなかでも、さらに2種類の型に分類されます。

1.再燃症状軽減型

初期の段階で、発熱や倦怠感、咳などの症状が出現します。時間の経過と共に発熱と倦怠感は改善しますが、咳や息苦しさなど呼吸器の不調は徐々に出現し憎悪します。

2.潜在性発症型

初期の段階では症状の出現がなく、徐々に呼吸器の不調(咳や呼吸困難)が出現します。自覚症状に乏しく気付きにくいという特徴があります。単なる風邪だと思っていたら、健康診断がきっかけで過敏性肺炎であることが発覚したというケースも少なくありません。

慢性型は、急性型と比較して肺の炎症は軽度です。しかし、長期的に肺へ負担がかかることよって、発覚した時にはすでに肺の線維化が進んでしまい、治癒を目指すことが難しくなることがあります。

過敏性肺炎の検査方法

過敏性肺炎の検査方法

過敏性肺炎を診断するための検査は主に3つあります。

入院検査

原因物質から離れるために環境を変え、症状は改善するのか、過敏性肺炎の診断で間違いないかを鑑別します。期間は2週間程度が一般的です。

環境を変えることで症状が落ち着く場合、生活環境のなかに原因物質があると考えられます。さらに入院して一旦なくなった症状が、自宅や職場に行って、抗原を再び曝露することにより症状が悪化することが特徴的です。

血液検査

採血を実施し、KL-6かSP-Dを確認します。検査項目のなかでも、過敏性肺炎の主な原因とされている2つの抗体について検査を実施します。

  • ●アサヒ・トリコスポロン(カビの一種)の抗体
  • ●鳥に関する抗体

これらの抗体にアレルギー反応が出ている場合は、過敏性肺炎の疑いがあると考えられます。

しかし、アレルギー性の疾患は個人によって大きく異なることから、必ずしも検査結果に状態が反映されるというわけではありません。血液検査は判断材料の一つであり、検査結果が正常の場合でも実際には過敏性肺炎であったというケースも存在します。

画像検査

レントゲンやCTによる画像診断をおこないます。急性型と慢性型では、それぞれ画像所見上で異なった特徴があります。

急性型

胸部X線では、中下肺野を主体とする均一で辺縁が不明瞭なびまん性粒状影を呈することが多いが、軽症例ではすりガラス影や正常の場合もあります。CTでは淡い肺野濃度上昇や淡い小葉中心性粒状影として認められます。

慢性型

肺に線状または蜂巣状の影が見られ、肺容積の減少を認めます。

組織採取

さらに詳しい情報を得たい場合は、気管支鏡を用いて肺の組織を一部採取し、検体検査を実施します。急性型では肺胞間質や細気管支の炎症がみられ、慢性型では肺の線維化が見られることが多いです。

このように、過敏性肺炎と診断するためには様々な検査を実施したうえ、類似している疾患の特徴から状態を比較し、総合的に評価して診断をおこないます。

過敏性肺炎の診断基準

過敏性肺炎の診断基準

過敏性肺炎を診断する際に最も重要なことは曝露評価になります。曝露評価とは、何らかの物質を吸入することによって呼吸機能に不調が起こり、要因と考えられる物質を回避することで症状が改善するかどうか調べることです。この確認を第一選択としておこなうことで、他に可能性のある呼吸器の病気と比較するための判断材料になります。

そのため、問診で、詳しい生活環境の確認をおこないます。家の状況(木造住宅か、畳の有無や住宅の周辺環境)や職場環境、日常的に身につけているものを聞かれるのは、原因として考えられそうな物質は何かを予想するためです。また、過敏性肺炎は季節によっても症状の出現に変動があることから、憎悪しやすい時期の有無も重要なポイントになります。

詳しい情報を得た後は、検査結果を評価します。各検査で肺胞の状態や線維化の有無を確認し、過敏性肺炎によるものであるかを総合的に判定のうえ、診断の確定をおこないます。

過敏性肺炎の治療方法

過敏性肺炎の治療方法

過敏性肺炎の治療は以下の3種類になります。それぞれ状況を見ながら段階を追って症状改善のための次のステップへと移ります。

原因物質の回避

過敏性肺炎の治療において最も重要なことは、アレルギー反応を引き起こす原因物質を避けることです。とくに、急性過敏性肺炎で原因物質が特定された場合、早期的に対処することで早い段階での症状消失が期待できます。

慢性過敏性肺炎の場合は、原因物質への曝露期間が長い状態であるため、回避しても症状の進行は止められない場合があります。しかし、曝露量が減れば症状の進行が緩やかになる可能性があるということが報告されています。

原因物質の除去

原因物質を一時的に回避することで症状が緩和しますが、それだけでは改善に繋げることはできません。再発を予防するためには、原因物質を完全に除去することが重要です。生活環境のなかに潜む原因物質の存在を確認し、接触することがないよう徹底的に対処する必要があります。

薬物療法

原因物質の回避や除去を実施しても症状が改善されない場合は、薬剤を使用して緩和を図ります。急性と慢性では薬剤治療の方法が異なります。

1.急性の場合

肺の炎症が進行している場合は、ステロイド剤を内服します。重症化し呼吸困難を呈している場合は、「ステロイドパルス療法」を実施します。これは、多量のステロイドを集中的に投与し、症状の改善を目指すものです。

2.慢性の場合

ステロイド剤や免疫抑制剤で改善を図ります。肺機能が低下して呼吸状態の改善が見込めない場合は、酸素供給を補助するために、自宅で酸素ボンベ機を使用する「在宅酸素療法」の開始も検討します。

過敏性肺炎と肺炎の違い

過敏性肺炎と肺炎の違い

過敏性肺炎と肺炎の違いは主に3つあります。

病変部位が異なる

肺炎の症状そのものは同じですが、過敏性肺炎は肺の奥に存在する肺胞(実質)の壁に炎症を起こした状態を示し、肺炎は肺胞そのものが炎症を起こしている状態を指します。

炎症を起こす原因が異なる

過敏性肺炎はアレルギー反応によって炎症を起こします。特定のアレルゲン物質や環境因子によって発症する病気です。一方で、肺炎の場合は細菌やウイルス感染が炎症の原因です。

治療方法

過敏性肺炎の状態を改善するためには、発症原因の解明と原因物質や環境の除去、回避が重要な初期対応となります。一方で、肺炎の場合は抗菌薬を服用することで治癒を目指します。

過敏性肺炎の予後

過敏性肺炎の予後

過敏性肺炎は、症状をそのままにして治療を受けないままでいると肺が「線維化」し、呼吸機能が徐々に低下するリスクを伴います。線維化とは、持続した炎症や傷を負うことで組織線維が固くなる現象のことをいいます。

例えば、転んで傷を負ったとき、皮膚が治癒する過程の中で表面が固く盛り上がることがあります。これを線維化した状態と呼びます。

過敏性肺炎も同様で、持続的な炎症が続くことによって肺胞の壁が固くなり、線維化を起こします。空気を取り込むために重要な役割を果たす肺胞が固くなると、酸素を取り込む機能が低下し、息苦しさが出現するようになります。そして、線維化の範囲が拡大することで肺機能はさらに低下し、最終的には呼吸不全という重篤な病状へと移行するケースもあります。

肺炎の自覚症状があっても、現段階で大きな支障がないことから医療機関を受診しない方は多くいますが、早めに診断を受けて治療に臨まない限り、線維化を予防することはできません。将来的に大きな病気のリスクを作らないためにも、早めに医師へ相談し必要な治療に臨みましょう。

まとめ

過敏性肺炎は、肺に存在する肺胞という部位の壁が炎症を起こすことにより、呼吸機能の症状を呈するアレルギー性の肺疾患です。ウイルス感染によって発症する一般的な肺炎との違いは、特定の原因物質によって起こること、原因物質を避けることで症状は改善されるという点です。

年齢や性別を問わず、誰にでも起こりうる可能性のある病気ですが、発症要因に曝露されることの多い環境に置かれている人であっても、必ずしも過敏性肺炎を発症するというわけではありません。アレルギー体質で感受性の高い人が症状を起こしやすいという特徴を持っています。

風邪のような症状が続いている人、呼吸器に何らかの持続的な不調がある人は、単なる風邪ではなく過敏性肺炎を起こしている可能性もあります。不調が生じた際は放置せず、早めに医療機関を受診して医師の診察を受けるように心がけましょう。症状から過敏性肺炎が疑われる場合は、早めに医療機関の受診をお勧めします。

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