免疫力アップがなぜ大切なのか、高める方法は
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「健康を維持増進するには免疫力を高める必要がある」と聞いて、否定する人はいないでしょう。
それくらい免疫の理解は健康意識が高い人に浸透していますが、正確に免疫を説明することは難しいと思います。それは、免疫が広い概念だからです。
そこでこの記事では、免疫の基礎知識を紹介したうえで、免疫アップを図る方法や、免疫と病気の関係について解説します。
免疫が難しいのは当たり前「定義があやふや」
免疫について説明するのが難しいのは、定義が「あやふや」だからです。
<免疫の定義(*1)>
免疫とは、ウイルスや細菌などの微生物や寄生虫、異物、他の個体の細胞など、外から侵入してくる異質なもの、体内に発生した変異細胞や老廃組織を排除して生体を守る仕組み
この定義は、免疫とは人の生存を脅かす存在から体を守る仕組みである、としかいっていません。この定義からは「何が何を守るのか」「どう守るのか」「何が起きているのか」が一切わかりません。
厚生労働省は「免疫力は厳密な定義がある言葉ではない」とまでいっています(*2)。免疫の専門家ですら「詳しい仕組みがまだまだ不明」といっています(*3)。
なぜこのような「あやふや」な定義になっているかというと、免疫が広い概念だからです。
新型コロナウイルスに感染しにくくなるのも免疫のお陰ですし、がん細胞を殺すのも免疫の効果です(*4、*5)。
そのため免疫は、1つずつ理解していったほうがよいでしょう。
コロナ予防につながる免疫、がん予防につながる免疫、ストレスに関係する免疫などを理解していけばよいわけです。
免疫が健康を害することもある
免疫に関する知識で重要なことがもう1つあります。それは、健康を害することがある、ということです。
免疫は体を守る機能ですが、守りすぎて攻撃と同じような悪影響を体に及ぼすことがあります。
免疫が、自分の健康な細胞を攻撃したり、体外から侵入した無害なものに過剰反応したりして生じる病気を自己免疫疾患といいます。
例えば、糖尿病のうち1型糖尿病は、インスリンを出すβ細胞が壊されてしまうことで発症しますが、これにも自己免疫が関わっています。β細胞は健康な細胞であるだけでなく、糖尿病を起こさないための重要な細胞なのに、免疫によって壊されてしまうのです。
そして花粉症の原因となる花粉は、本来はそれを人が吸いこんでも害はありません。しかし免疫が暴走して、鼻水を出したりくしゃみをしたり涙を流したりして体内の花粉を出そうとして、人を苦しめます(*6、*7、*8)。
ただ免疫の異常は例外的な働きなので、この記事ではよい面にフォーカスを当てて免疫を高める方法を考えていきます。
免疫力はこう高めよう
免疫力を高める方法を紹介します。キーワードは、食事、運動、生活習慣です。
免疫力アップ1:食事
免疫力を高める方法その1は食事です。食事と免疫力アップは深い関係にありますが、ここでは腸との関係を紹介します。
腸内には細菌が100,000,000,000,000個(100兆個)あるとされ、免疫に大きな影響を与えています(*9)。100兆個の細菌は1,000種類にわかれ、それらは健康によい影響をもたらす善玉菌、悪い影響を及ぼす悪玉菌、よくも悪くもない中間の菌の3つに分類できます。
善玉菌を増やす食事をすれば免疫力がアップして、悪玉菌を増やす食事をすれば免疫力が低下します(*10)。
善玉菌を直接腸内に送り込めるのは、プロバイオティクスを含む食材です。ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物がそれに該当します。
しかしプロバイオティクスは一定期間をすぎると腸内から消えてしまうので、ヨーグルトなどは定期的に食べることが推奨されています。
そしてプレバイオティクスは、腸内にある善玉菌を増やす効果が期待できます。オリゴ糖や食物繊維を多く含む野菜、果物、豆類はプレバイオティクスを摂取できます。
悪玉菌を増やしてしまうのは、タンパク質や脂質が多い食事です。また、ストレスや不規則な生活も悪玉菌を増やす効果が確認されています。
免疫力アップ2:運動
適度な運動は免疫力を高めます。
運動をすると血液中の白血球数が増えます。白血球とは、好中球、単球、リンパ球などの総称です。
好中球は体内に侵入してきた細菌を飲み込み殺菌します。単球も細菌などを分解します。
リンパ球にはTリンパ球とBリンパ球という免疫を担当するものがあり、体に侵入した細菌やウイルスの抗体をつくって感染を防ぎます。
ただ、激しすぎる運動は白血球を減らし免疫を下げるという報告もあります。
1日1時間以内くらいの運動が、免疫にはよいようです(*11、*12、*13)。
免疫力アップ3:生活習慣
よい生活習慣が免疫力を高めるメカニズムは完全に解明されているわけではないのですが、その効果は高いとされています。
免疫力アップを期待できる生活習慣は、栄養バランスのよい食事、適度な運動、質の高い睡眠、ストレスのない生活、適切な体重です。また、喫煙は免疫を下げるとされているので、禁煙しましょう(*14)。
そして口のなかの健康も免疫に関係していると考えられています(*15)。
糖尿病になると免疫が低下することが知られていますが、そのせいで細菌やウイルスに感染しやすくなります。そうなると歯周病菌にも感染しやすくなり、歯周病が発生、悪化します。
さらに、糖尿病患者さんが歯周病の治療をすると血糖値が改善することもあります。
「糖尿病→免疫力低下→歯周病→糖尿病の悪化→免疫力のさらなる低下…」という悪循環を断ち切るためにも、糖尿病にならないことや口腔内の健康を保つことが大切です。
新型コロナと免疫
新型コロナウイルスの感染しないように、または、感染しても重症化しないように、国は国民にワクチン接種をすすめていますが、これにも免疫が関わっています。
ワクチンを打つと、体内に中和抗体という物質ができます。
中和抗体は、コロナのタンパク質に結合して感染を防ぐ作用を持ちます。
また、免疫を低下させる糖尿病を発症している人は、コロナに感染して感染症を発症すると重症化しやすいことが知られています(*18)。
したがって、糖尿病を発症しないようにして免疫を高めておくことは、間接的にコロナ対策になるといえます。
がんと免疫
がんと免疫もまた、深い関係にあります。
健康な人が、体内でがん細胞が発生しても病気としてのがんにならないのは、免疫細胞と呼ばれる免疫の機能を担っている細胞が、がんの増殖を防いでいるからです。
しかし免疫細胞のなかには、がんを防ぐ機能を失っているものがあります(*19)。そうなると免疫細胞があってもがんが増え、病気としてのがんが発症してしまいます。
また、免疫を抑制する制御性T細胞という細胞があります。免疫を抑制してしまうことは本来はよくないことですが、制御性T細胞は自己免疫疾患を起こさないために必要な細胞とされています。しかし、がん細胞がこの制御性T細胞を「悪用」して免疫からの攻撃を回避することがあります(*20)。
さらに、免疫を担うTリンパ球(T細胞)が疲弊したときに、これを若返らせて強い抗腫瘍効果を持たせる「CAR-T療法」という治療法があります(*21)。つまり免疫を高めてがんを叩くわけです。
がん治療では免疫からのアプローチが多く存在し、これもその1つになります。
まとめ~守りを固める
免疫が健康に貢献するのは、守りを固めることができるからです。
人の体は常に、細菌やウイルス、がんなどの攻撃にさらされています。そられから体を守ることができれば、健康を維持できます。
栄養バランスが取れた食事をするのも、適度な運動をするのも、しっかり眠ることも、すべて免疫を高めて守りを固めることにつながり、それが健康の土台になっています。
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