感染性胃腸炎の症状、原因、治療を解説:ノロやロタは「こうやってうつる」
INDEX
感染性胃腸炎とは、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスや細菌などに感染して発症する胃腸炎の総称です。
激しい腹痛や嘔吐などを引き起こすことから強い警戒が必要な病気ですが、感染しなければ発症しない、という性質があります。複数の要因が複雑に絡みあって発症する生活習慣病とは、病気のメカニズムがかなり異なります。
この記事では、感染性胃腸炎の感染のメカニズムと、症状、原因、治療などについて解説します。
症状
感染性胃腸炎の症状は次のとおりです。
<感染性胃腸炎の主な症状>
・腹痛
・下痢
・吐き気、嘔吐
・発熱
発熱は軽微ですが、それ以外の症状は重くなり、相当苦しむことがあります。
特に下痢と嘔吐は、脱水症状を引き起こすほど重症化することがあります。脱水症状では意識がもうろうとすることがあります。
ただ、すべての感染者が重症化するわけではなく、風邪のような症状しか感じない人もいます。さらに、ウイルスに感染しても発症しないこともあります。
<感染性胃腸炎のその他の症状>
・脱水症状に進むと意識がもうろうとすることもある
・風邪のような症状で済むこともある
・無症状のこともある
潜伏期間ののち1、2日続く
感染性胃腸炎の原因になるウイルスに感染すると、24~48時間の潜伏期間を経て、つらい症状が出ます。
症状は1、2日続き、大抵は3日以内に治まります。
後遺症が残ることはほとんどありません。
原因と感染メカニズム
感染性胃腸炎の原因になる主なウイルスは次のとおりです。
★ノロウイルス
・ロタウイルス
・サポウイルス
・アデノウイルス
これらのウイルスのなかでも特にノロウイルスが問題になるのは、感染力が強いうえに、ウイルスが小さく食品に含まれても検出することが難しいためとされています。
ウイルスだけでなく、細菌や寄生虫でも感染性胃腸炎が起きることがあります。
ノロの感染経路
多くの被害を出しているノロウイルスの感染経路を紹介します。
・人から二枚貝ルート
人の便に含まれるノロウイルスが下水→川→海へと流れ、牡蠣などの二枚貝に蓄積されます。二枚貝を十分加熱せず食べると感染することがあります。
・感染者の調理ルート
ノロウイルスに感染した人が、ウイルスが付着した手で調理をすると、その食事を食べた人に感染させることがあります。
・便、嘔吐物処理ルート
感染者の便や嘔吐物にはノロウイルスが含まれています。そのため、便や嘔吐物を処理した人が感染することがあります。
症状が治まっても感染させるかもしれない
ノロウイルスを含む病源体の感染は、多くの場合、直接的あるいは間接的に人が介在しています。
そのため、感染しないことと同じくらい、感染させないことが重要です。
ノロウイルスの場合、感染性胃腸炎が発症して、その後、症状が治まっても体内に生息している可能性があります。症状が治まった人の1週間後の便を調べたところ、ノロウイルスがみつかったこともあります。2週間生息するという報告もあります。
治療
感染性胃腸炎を根治する治療法はなく、医療機関で行うのは症状を和らげる対処療法になります。
脱水症状が悪化している場合は、医療機関で輸液(点滴による水分補給)などを行います。
症状が続くのは最長3日程度とされ、その間安静にして「やりすごす」しかありません。
対策
感染性胃腸炎は、症状が重くなることがあるのに根治する治療法がないため、感染しないことと感染させないことが、この病気の最も重要な対策になってきます。
ノロは100個でも感染する
感染性胃腸炎は、ウイルスなどの病原体が口のなかに入ることで発症します。
ノロウイルスの場合、感染者の便や嘔吐物には、1g当たり100万~10億個ものウイルスが含まれていますが、そのうちわずか100個が人の口に入っただけで感染することがあります。
少量のノロウイルスでも、人の体内に入るとものすごい勢いで増殖して健康を害します。
また、ノロウイルスは感染力が強いことでも知られていて、感染リスクに年齢は関係ありません。
感染性胃腸炎の対策は、これだけの強敵を相手にしなければならないことを覚えておいてください。
1)石鹸と流水での手洗い、2)換気、3)消毒
感染性胃腸炎の対策の基本は、石鹸と流水による手洗いと換気と消毒です。
病源体はまず人の手に付着して、その手が口に運ばれることで体内への侵入を果たします。そのため手はこまめに洗いましょう。
トイレは定期的に換気するようにしてください。
消毒対象は、トイレの便座、ドア、手すり、床、調理器具などです。
次亜塩素酸ナトリウムで消毒するか、可能なものは熱湯(85度以上)消毒してください。
便と嘔吐の処理は細心の注意を払って
感染者の便や嘔吐は新たな感染源になるので早急に処理しなければなりませんが、処理する人が感染するリスクがあります。
便や嘔吐物を処理するときは、手袋、マスク、エプロンを着用してください。処理後は、手袋などの使い捨てのものは1回処理したら捨て、エプロンなどの再利用するものは熱湯消毒をしてください。
二枚貝は加熱調理が望ましい
牡蠣などの二枚貝は生食が禁じられているわけではなく、しかも生食を希望する方は多いでしょう。
しかしノロウイルス対策としては加熱調理することが望ましいことを忘れないでください。
まとめ~警戒を怠らないように
感染性胃腸炎はつらい症状を引き起こし、特にノロウイルスは感染力が強く、小さなコミュニティで瞬く間に感染が広がります。とても恐い病気です。
しかし、感染性胃腸炎には「感染しなければ発症しない」という救いがあります。したがって対策としては、警戒を怠らないことが第一になります。
新宿ヒロオカクリニックでは健診・人間ドックでの胃内視鏡検査に加え、消化器内科の専門医による外来診療も行っております。詳細はこちら