インフルエンザ、今年(2022~2023年シーズン)は「流行しそう」警戒を|新宿ヒロオカクリニック
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「ウイルス感染といえばコロナ」という雰囲気はまだ消えていませんが、その一方でインフルエンザへの警戒も怠らないようにしたいものです。
厚生労働省は2022年9月16日に、2022~2023年シーズン(以下、「今年」)のインフルエンザ情報の第1号を発表しました(*1)。
2022年9月5~11日の週の報告件数は全国で133件で、前年同期の0件から急増しています(*2、*3)。
そして日本感染症学会は、今年は流行する可能性が大きいと警鐘を鳴らしています。
厚生労働省はインフルエンザワクチンの接種を国民に推奨しています。
今年のインフルエンザの様子を解説します。
コロナ対策でインフルエンザが減ったのは事実
「コロナ対策を徹底したおかげでインフルエンザに感染しにくくなった」という説を聞いたことがあると思いますが、これはあながち間違ってはいない見解のようです。
実際、コロナ禍のなか、インフルエンザ患者の報告は激減しています。
日本感染症学会は、コロナ禍でインフルエンザの発症が減った理由について次のように述べています(*4)。
■なぜコロナ禍でインフルエンザが減ったのか
これは、COVID-19(新型コロナのこと)対策として普及した手指衛生やマスク着用、3密回避、国際的な人の移動の制限等の感染対策がインフルエンザの感染予防についても効果的であったためと考えられます |
国内のインフルエンザ患者の報告数は、コロナ禍が始まった2020年2月以降激減し、2020~2021年シーズンも、2021~2022年シーズンもウイルス検出の報告は「ほとんどみられない」とのことです(*4)。
すなわち、1)手指衛生、2)マスク着用、3)3密回避、4)国際的な人の移動の制限が、インフルエンザの流行を抑えてきたのです。
今年と昨年の比較
今年と昨年(2021~2022年シーズン)のインフルエンザの患者報告件数を比較してみます(*5、*6、*7、*8、*9、*10、*11、*12)。
本稿執筆現在、今年の第36週(9月5~11日)から第39週分まで公表されていて、以下のとおりです。
■インフルエンザ患者報告件数
第36週
(今年は9月5~11日) |
第37週
(今年は9月12~18日) |
第38週
(今年は9月19~25日) |
第39週
(今年は9月26日~10月2日) |
|
昨年 | 0 | 1 | 3 | 5 |
今年 | 133 | 111 | 78 | 51 |
何倍か | - | 111倍 | 26倍 | 10倍 |
昨年の第36週は報告0件でしたが、今年は133件になっています。
第37週は昨年1件に対して今年111件(111倍)、第38週は昨年3件に対して今年78件(26倍)、第39週は昨年5件に対して今年51件(10倍)と、「急増」している様子がうかがえます。
今年とコロナ前の比較
では、今年とコロナ前(2018~2019年シーズン)と比べるとどのようになるでしょうか(*13、*14、*15、*16)
■インフルエンザ患者報告件数
第36週
(今年は9月5~11日) |
第37週
(今年は9月12~18日) |
第38週
(今年は9月19~25日) |
第39週
(今年は9月26日~10月2日) |
|
2018~2019年シーズン | 338 | 655 | 668 | 795 |
今年(再掲) | 133 | 111 | 78 | 51 |
何分の1か | 3分の1 | 6分の1 | 9分の1 | 16分の1 |
このように、今年はコロナ前の3分の1~16分の1と、明らかに少ないことがわかります。
つまり、ここまでの内容をまとめるとこのようになります。
・今年は、昨年と比べると「急増」といえる
・しかし今年の発生ペースは、コロナ禍前と比べると「遅い」といえる
データは上記の2項目を示しているのですが、まったく安心できない状況です。
安心どころか今年は流行する可能性すらあります。
なぜなのでしょうか。
日本感染症学会「今年は流行の可能性大」
それではもう一度、日本感染症学会の見解を紹介します(*4)。
同学会は、今年はインフルエンザが流行する可能性が大きいといっています。
「今年流行する可能性大」の根拠として挙げているのが、南半球の状況です。日本は北半球に位置するので、南半球の直近の冬の様子が参考になります。
南半球にあるオーストラリアでは、2022年4月後半からインフルエンザ患者の報告数が増加して、例年を超えるレベルの患者数となっているそうです。
そして日本は今、新型コロナへの警戒が弱まり、海外からの入国を緩和しています。そうなると海外との人的交流が増え、国内にインフルエンザウイルスが持ち込まれる頻度が高くなります。
これが「今年流行する可能性大」の根拠その1です。
集団免疫が低下しているので大きな流行も
「今年流行する可能性大」の根拠その2は、インフルエンザの集団免疫の低下です。
「集団免疫」という言葉はコロナ禍よく聞かれるようになりました。集団免疫とは、人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染者が出ても他の人に感染しにくくなる現象のことです。
日本感染症学会は、今の日本人のインフルエンザの集団免疫は低下している、とみています(*4)。
つまり、感染者が出ると感染しやすくなる状態といえます。
そのため、いったん(インフルエンザへの)感染がおこると、特に小児を中心に社会全体として大きな流行となるおそれがある、といわれています。
まとめ~流行前にワクチンを打って予防を
今年はインフルエンザが流行する可能性が高いので、予防に力を入れましょう。
インフルエンザ対策には、コロナ対策が有効なので、マスクや手指消毒、密回避を可能な限り継続したほうがよさそうです。
そして厚生労働省はインフルエンザの予防には、流行前のワクチン接種が有効であるとしています(*17)。
JR新宿駅前にあるヒロオカクリニックでも、インフルエンザワクチンを接種することができます。