インフルエンザワクチンの効果と副反応、接種すべき時期について解説
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夏が終わり、少し冷たい風が吹き出すと流行りだすのがインフルエンザです。自治体からインフルエンザのワクチンについてのお知らせが出はじめるのもこの頃です。「インフルエンザってただの風邪でしょ?」「ワクチンを打ってもかかるし、必要なの?」そんな風に思われたことがあるかもしれません。
この記事では、インフルエンザといわゆる「風邪」とはどう違うのか、またワクチンを打っておくことでどんなメリットがあるのかについて解説します。インフルエンザワクチンを受けるかどうか迷っている方はどうぞ最後までお読みください。
インフルエンザとは
インフルエンザとはインフルエンザウイルスによって起こる感染症です。重症化しやすいため、一般的な「風邪」とは分けて考えられています。歴史を見てもこれまで何度か世界的な大流行を起こしており、1918年のパンデミックの際には日本だけで45万人もの人が亡くなったといわれています。
インフルエンザウイルスは一年中存在していますが、ウイルスの活動は寒い時期の方が活発になるため、冬季に流行するのが一般的です。そのため、日本では例年11月頃から発生し、1~3月ごろにピークを迎え、3~5月ごろに収束するのが一般的な流れです。
通常、38度以上の発熱や頭痛、全身の倦怠感、筋肉痛を伴い、急激に増悪するのが特徴です。ほとんどの場合5日~7日ほどで解熱し軽快します。一般的な風邪はのどの痛みや咳などの上気道症状にとどまることが多いのですが、インフルエンザの場合は、全身症状が見られます。特に高齢者や基礎疾患のある方、乳幼児などの場合、重症化して死亡することもあるため注意が必要です。
注意すべき合併症
インフルエンザの合併症には肺炎、気管支炎、中耳炎、結膜炎などがあります。5歳以下の子どもの場合、もっとも注意すべきなのはインフルエンザ脳症です。厚生労働省の調査によると毎年50~100人ほどがインフルエンザ脳症に進行し、そのうち10~30%が死亡しています。
インフルエンザ脳症の原因は、インフルエンザによって脳に炎症がおこることです。脳がむくみ、頭蓋骨で圧迫されることによってさらに脳がダメージを受けるためにおこると考えられています。
症状としては全身の痙攣、意識障害、遅れて前身の臓器不全がおこり、やがて死に至ります。インフルエンザ脳症にかかるのは主に5歳以下の幼児に多く、致死率は30%です。死亡に至らないまでも50%はなんらかの後遺症を残すといわれており侮れません。
高齢者の場合は二次性の肺炎を起こすことが多く、やはり重症化することがあります。3~4日経っても熱が下がらない、息苦しさを感じるなどの症状がある場合は肺炎を起こしている可能性があり、注意が必要です。
インフルエンザワクチンを打つメリット
インフルエンザワクチンを受けても発症を完全に防げるわけではありません。しかしながら、いくつかの点においてワクチンの有効性は実証されています。その効果を見ていきましょう。
重症化・死亡率を下げる
まず、インフルエンザワクチンのメリットとしてあげられるのは、重症化と死亡率を下げることができるという点です。高齢者でワクチンを接種した時と接種していない時を比較すると、入院する率を約1/2~1/3にまで下げることができ、死亡率は1/5まで下がったと報告されています。
感染拡大を防ぐ
インフルエンザワクチンを接種するメリットとしてもう一つ大切なのは、感染拡大を防ぐことです。ワクチンを打った人のうち、65歳未満の発病予防効果は70%~90%といわれています。ワクチンを打っても完全に防げるわけではないとはいえ、予防効果があることは実証されています。
1人が発症しなければ、その周囲にいる人たちを守ることになります。特に、家族の中に幼児や高齢者、基礎疾患を持つ方など、インフルエンザにかかって重症化する可能性のある人がいる場合は、積極的にワクチンを打つことを検討してください。
インフルエンザワクチンの効果が持続する期間
インフルエンザワクチンの効果は、接種後5ヵ月と考えるのが一般的です。
ワクチンを打った後、1~2週間ほどで抗体が作られ始めます。抗体の量は接種後1ヵ月でピークとなり、その後3~4か月かけて抗体の量が減少していきます。
それでは、インフルエンザのワクチンをいつ打つのがベストなのでしょうか。
インフルエンザワクチンを打つべき時期
インフルエンザは通常11月頃から患者数が増え始めます。インフルエンザのピークは例年、年明け1月ごろから2月ごろにかけてです。ちょうどその頃に抗体の量がピークになる時期を合わせるなら、11月下旬から12月中には接種を完了しているのが望ましいでしょう。
インフルエンザワクチンの接種回数
インフルエンザワクチンでできる抗体は、一度インフルエンザにかかっていたほうが作られやすいといわれています。そのため、大人は1回でも十分な抗体の増加が期待できます。13歳未満の方はよりしっかり抗体を作るために2回接種が推奨されています。
何らかの事情でワクチンを1回しか打てなかったとしても、まったく打たないよりは抗体の上昇が見られるため受けるようにしましょう。
インフルエンザワクチンの副反応について
インフルエンザワクチンを打った後、接種した部位に赤みや腫れ、痛みなどが生じる可能性は10%~20%です。その他、発熱や頭痛、全身の倦怠感を感じる方もいます。このような副反応は通常3~5日ほどで消えますが、5日以上続く症状があるときには医療機関を受診してください。
また、まれに重篤なアレルギー反応をおこすことがあり、強いかゆみ、息苦しさを感じることもあります。
さらに、非常に稀ではありますが、インフルエンザワクチン接種後の重い副反応としてギレンバレー症候群や急性脳症、急性脊椎炎、けいれん発作、喘息発作などが報告されています。
インフルエンザワクチン接種後の注意
インフルエンザワクチンは卵白で培養されるため、まれにアレルギーを起こす方がいます。そのため、インフルエンザワクチンを受けた後、15分~30分間の観察時間が設けられています。接種を受けた場所で必ず待機し、異常がないことを確認してください。異常があったときはすぐに申告して、治療を受けるようにしましょう。
ワクチン接種後は発熱や頭痛、倦怠感を感じることがあります。ワクチンを接種する予定の日に、スケジュールを詰め込みすぎないように注意しましょう。これらの症状は長くても数日で良くなることがわかっていますが、無理をしないことが大切です。
ワクチン接種の副反応は24時間以内に現れるといわれています。ワクチン接種の当日は激しい運動を避け、静かに生活するよう心がけましょう。
また、入浴は差し支えありませんが、注射したところをゴシゴシ強く擦らないように注意してください。
インフルエンザワクチンを受けられない方
以下に該当する方はインフルエンザワクチンを接種できません。
- 1.ワクチン接種の当日に37.5度以上の発熱がある方
- 2.現在何らかの疾患にかかっており治療中の方
- 3.以前にインフルエンザワクチンを受けてアナフィラキシー症状のあった方
- 4.当日医師が接種できないと判断した方
インフルエンザワクチンを打つ際に注意が必要な方
インフルエンザワクチンは健康な時に打たなければ抗体が作られないため、効果を出すためには元気であることが前提です。そのため、ワクチンを打つ時に何らかの病気の治療を受けている方は注意が必要です。ただし、病気の治療中でもワクチンを受けたほうがメリットが大きいと医師が判断する場合はその限りではありません。病気を治療中の方は医師の判断に従ってください。
また、前回インフルエンザのワクチンを受けた後2日以内に発熱のあった方やそれまでにけいれん発作を起こしたことがある方、免疫抑制剤を使用している方や親族に免疫不全の既往を持つ人がいる方、卵アレルギーを持っている方なども注意が必要です。
ワクチンを打つ前の晩はしっかりと睡眠をとり、体調を万全にしておくようにしましょう。
インフルエンザワクチンについてのよくある質問
インフルエンザワクチンについてよくある質問にお答えします。
ワクチンを受けておけばインフルエンザにかからない?
インフルエンザワクチンを接種しても、完全に予防できるわけではありません。しかしながら、発症予防率は70%~90%という報告もあります。まめな手洗いやうがいなどの予防策と共に、ワクチンを受けておくことで、インフルエンザにかかることをかなりの確率で防ぐことができると考えられます。
妊婦はインフルエンザワクチンを受けられますか?
妊娠中の方に対してもワクチンの有効性が実証されており、接種が推奨されています。インフルエンザワクチンはウイルスを不活化処理したものであり、ワクチンを打つことで体内にウイルスが増殖することはありませんし、胎児に影響もありません。
しかしながら、妊娠しているときは通常の体の状態とは異なるため、かかりつけの医師にご相談ください。授乳中の方もインフルエンザワクチンの接種は可能です。母乳にワクチンが移行することはありません。
コロナワクチンと同時に接種できますか?
インフルエンザワクチンとコロナワクチンは同日同時に接種することが可能です。特に冬季はインフルエンザの患者数が増加します。インフルエンザの症状とコロナの症状とは共に呼吸器症状がメインです。どちらかに先に罹患し、弱っているところにもう一方に罹患する例が見られます。同時に接種することでインフルエンザもコロナも予防しましょう。
インフルエンザにすでにかかっていても、ワクチンを接種した方がいい?
一度かかっていても、同じシーズンに2回かかることもあるため、ワクチンを打つのは有効です。インフルエンザは毎年流行する型が変わります。そのため、ワクチンは流行を予測して製造されています。流行が予測されていなかった型のインフルエンザにかかった場合、ワクチンを打つことで別の型のインフルエンザにかかることを防ぐことが可能です。
卵アレルギーですがワクチンを打てますか?
卵アレルギーの方は注意が必要です。インフルエンザワクチンは卵白を使用して培養しているため、卵アレルギーの方はワクチンに対してアレルギー反応を示すことがあります。ただし、必ずしも卵アレルギーがあるからワクチンを接種できないというわけではないため、かかりつけ医にご相談ください。
ワクチンの接種間隔はどれくらい空けるの?
生後6か月以上、13歳未満の方は2回接種が推奨されています。通常、初回接種の時から数えて2~4週間の間隔をあけて2回目を接種します。
毎年打たなくてはいけないの?
インフルエンザの型には数種類あり、どれが流行するかはわかりません。毎年5~6月頃にWHOの予測、また日本国内での流行状況などを考慮してその年のインフルエンザワクチンが決定されます。また、ワクチンの抗体価が約5~6ヵ月で低下するため、毎年打つ必要があるのです。
インフルエンザワクチンは何歳から打てますか?
生後半年から接種は可能ですが、1歳までの乳児に対してワクチンの効果がどれくらいあるかについてははっきりしたことがわかっていません。とはいえ、乳児がインフルエンザにかかると重症化することがあるため、保育園に通っている子や、幼稚園や小学校など集団生活をしている兄弟がいる子は積極的に検討すべきといえます。
一緒に受けておきたいワクチン
高齢者や生活習慣病などの既往がある方は、コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種を積極的に検討してください。
また、65歳以上の方は肺炎球菌のワクチンも受けておくことが推奨されています。インフルエンザにかかり重症化すると、肺炎球菌による2次感染を起こし、肺炎に至ることがあるためです。
インフルエンザを防ぐためにできること
インフルエンザの感染経路は空気感染です。他の人のくしゃみや咳などで唾液と共に飛び散ったウイルスを吸い込むことによって感染します。そのため、人が多いところを避けること、マスクをすること、こまめな手洗いなどは予防のために重要です。基本的な感染予防策に加えてワクチンを接種することで、感染のリスクをかなり抑えることができると期待できます。
その他、規則正しい生活を送ること、質の良い睡眠をしっかりとることなど、生活面でも予防のためにできることはたくさんあります。
まとめ|インフルエンザワクチンはヒロオカクリニックで
インフルエンザは重症化することがあるため、いわゆる「ただの風邪」ではありません。インフルエンザワクチンを打てば必ず防げるというものではありませんが、70%~90%の発症予防効果があると言われています。インフルエンザワクチンは12月の中旬までには接種するようにしましょう。
ヒロオカクリニックでは、インフルエンザの予防接種を受付しております。
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