不眠症かも?原因や症状・治療法など解説
INDEX
「眠りたいのに眠れない」「夜中に何回も目が覚めて寝た気がしない」「寝ているけどぐっすり眠れていない」そんな経験のある方は多いのではないでしょうか。不眠症って病気なの?不眠症になる原因とは?睡眠薬って飲んでも癖にならないかしら……
この記事では不眠症について詳しく解説しています。眠れなくて辛い。これって不眠症なのかしら、と考えている方はぜひこの記事を最後までお読みください。
不眠症とは
不眠症とは、「寝つきが悪い」「一度眠っても夜中に何度も目が覚める」「朝方になると目が覚めてしまい、それから眠れなくなる」「寝たような気がしない」などが一定期間続き、それに伴って「昼間に眠くなる」「頭痛がする」「倦怠感がありやる気が出ない」「食欲がない」などの問題が生じている状態です。
眠れない、というだけで不眠症と診断されることはありません。一時的に眠れない状態は誰でも経験するものです。遠足の前の日になると眠れない、心配事や気になることがあってなかなか寝付けない、というような経験をされた方も多いのではないでしょうか。
一次的なものであれば数日、または数週間で改善し、また眠れるようになるものです。しかし、もし不眠と、不眠から来る日中の不調が週に3日以上あるなら「不眠症」と診断されます。
不眠症には慢性的な不眠と日中の不調が伴う「慢性不眠症」と、比較的短期間で改善する「短期不眠症」とがあります。慢性的な不眠になると改善に時間がかかるだけでなく、日中の生活にも影響が大きくなります。うつ病や慢性的な頭痛、食欲不振や仕事の効率の低下、また不登校などの原因にもなるため「眠れない」を放置するのではなく、医療機関に相談し、適切な処置をとることが大切です。
不眠症のタイプ
不眠症といってもタイプはさまざまです。ここからは不眠症のパターンについてご説明します。
入眠障害
「寝つきが悪い」タイプです。布団に入ってもなかなか入眠できず、眠ろうと思えば思うほど眠れなくなることがあります。
中途覚醒
夜中に何度も目が覚めてしまい、熟睡感がないタイプです。夜間頻尿などによっても起きます。
早朝覚醒
早朝、起きるにはまだ早すぎる時間に目が覚めてしまい、それから眠れなくなってしまう、というタイプです。高齢者に多い傾向があります。
熟眠障害
眠りが浅く、ウトウトしているだけで眠った気がしないタイプです。
不眠症の原因
今や日本人の5人に1人は不眠症を抱えているという統計があります。原因はさまざまで、複数の要因が絡み合って起きていることもあります。
ストレス
現代はストレス社会といわれ、多かれ少なかれほとんどの人はストレスを抱えています。不安やストレスが原因で一時的に眠れなくなることは誰にでもあるものですが、眠れないことがさらにストレスとなり、悪循環を繰り返すことがあります。慢性的な不眠症に進行することがあるため注意が必要です。
生活習慣や環境
休みの前の日だからといって夜更かしをしたり、いつもより朝寝坊したりすると、体内リズムが狂ってしまい夜に眠れなくなることがあります。また寝る前ぎりぎりまでPCやスマホを見ていると、強力な光が原因で目が覚めてしまい眠れなくなることもあるため、寝る前のデバイスの使用には注意が必要です。その他、タバコや寝る前のコーヒーやカフェインを含む飲み物の摂取、お酒なども寝つきを悪くする原因になります。
精神や心の病気
うつ病は、脳がうまく働かなくなっておこる病気です。うつ病になると、不安感や焦燥感がおき90%の方に不眠の症状が見られるようになります。
うつ病や精神疾患などが原因の不眠症状は、単に生活環境を整えるだけでは改善できないことが多く、専門的な治療を必要とします。うつ病による不眠症かもしれないと思われる方は、心療内科や精神科など専門外来を受診してください。
その他の疾患
睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など、不眠症そのものではなく、さまざまな疾患が不眠症の原因になっていることがあります。そのような場合にはまず原因となっている疾患を治療することが必要です。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に気道が塞がれ、息苦しくなって目が覚めることがある病気です。むずむず脚症候群は、夕方から夜間にかけて、横になって安静にしている時に手足がむずむず・チクチクしたり、時には激しく痛みを感じたりする病気です。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠外来、または循環器内科を。むずむず脚症候群は脳神経内科もしくは神経内科を受診してください。かかりつけの医師に相談して紹介状を書いてもらうこともできます。
薬の副作用
気管支拡張剤、カフェイン、ステロイドなどは覚醒を促すため、不眠の原因になることがあります。またカフェインは利尿を促すため、中途覚醒の原因にもなり、使用には注意が必要です。ただし、もともとの疾患の治療のために薬を服用している場合は、自己判断で服薬を中止するのではなく、かかりつけの医師にご相談ください。
運動不足
日中の活動が十分でないと体が疲れておらず、眠くならないものです。程よい疲れは睡眠を促します。逆にあまり激しい運動をするとドーパミンの産生を促し、交感神経を刺激して眠れなくなってしまいます。散歩や軽いジョギングなど、有酸素運動をメインに体を動かすことを意識してください。
不眠症のセルフケア
眠れないのは辛いものです。しかし、そんな時は眠ることばかりに集中するのではなく、まずはセルフケアとして睡眠の環境を整えてみるのはいかがでしょうか。次にいくつか、セルフケアとしてできることを考えてみましょう。
ストレス解消
ストレスの原因となるものは人それぞれです。ストレスに応じて解消の仕方も異なります。一般的にストレスを解消するためによく用いられるのは、軽い運動をして体を動かすことや、誰かに気持ちを打ち明けることなどです。
映画を見て思いっきり笑ったり泣いたりすることもストレス解消には役立ちます。また、ぬるめのお湯につかる、その際にお気に入りの入浴剤を使用してみるなど、自分なりのリラックス方法を見つけるのも良いでしょう。
1人で問題を解決するのが難しい時は心療内科医や精神科のカウンセラーの力を借りるのはいかがでしょうか。タバコやお酒を飲むことは、ストレス解消になりません。かえって眠りを妨げる原因となりますので避けるのがベストです。
睡眠環境を整える
眠るためには部屋の環境も大切です。ぐっすり眠るために最も適した室温は20℃~25℃、湿度は40%~70%といわれています。眠りには体の深部体温が関係しています。布団の中が冷え切っていて温度が低すぎると手足が冷たくなり、気になって眠れないものです。逆に部屋が暑すぎたり湿度が高かったりすると、体の中の熱を放出することができずに寝付けなくなります。
部屋の明るさも重要です。とはいえ、真っ暗にするとかえって眠れないこともあります。常夜灯などを利用して不安を感じない程度の明るさにしておくと良いでしょう。
不眠症の治療
それでも眠れないときは我慢せず医療機関に相談しましょう。日本人の30%~40%は不眠症であるという統計もあり、不眠症は恥ずかしいことではありません。一般的に不眠症は女性に多く、年齢が上がるにつれてさらにその割合は多くなります。
眠れないまま我慢していると、慢性不眠症に進行し、症状が長引くことにもなるため注意が必要です。慢性化した不眠症を改善するのは時間も長くかかるので、できるだけ早くに医療機関に相談しましょう。また、不眠症を改善しないまま放っておくと、睡眠障害のよって日中におきる眠気が原因でおきる事故や不登校、仕事上のミスなどで退学、退職を余儀なくされることもあるなど、二次的な問題を引き起こすことにもなりかねません。
生活習慣を改善する
不眠症の治療には服薬と同時に、眠ることについての意識を変えることや生活の改善がすすめられます。眠ろうとするとかえって眠れないものです。眠たくなってから布団に入るだけでも寝つきの悪さに悩むことがなくなるものですが、意外に思いつかないものです。
また必要な睡眠時間は一人ひとり異なります。4時間~5時間眠れば十分だと感じる人もいれば、8時間以上眠らないと昼間に眠くて困るという人もいます。睡眠時間にこだわる必要はありません。
規則正しい生活は良い睡眠に繋がります。不眠症の治療には生活リズムを整えることも含まれます。休日でもいつもと同じ時間に起きて生活を始めることも大切です。また眠りを誘うホルモン「メラトニン」は、朝起きて体内時計がリセットされてから14時間~16時間後に分泌が始まり、その2時間後にピークに達します。体内時計は朝日を浴びることでリセットされます。そのため夜眠くなるためには、夜早く寝ることよりも、朝きちんと起きることが大切なのです。
薬を服用する
生活環境を整えるのと同時に睡眠薬を使って強制的に眠るのも効果的です。医療機関ではさまざまなタイプの睡眠薬を処方することができます。その中から代表的なものをあげてみましょう。
ベンゾジアゼピン受動体作動薬(アモバン、マイスリー、ハルシオンなど)
一般的な不眠症の薬として処方されることが多いものです。ただし、長期的な服用は注意が必要です。実際には不眠症が改善されているにもかかわらず、薬がないと不安になったり、服用をやめると不安感が強くなったりイライラしたりといった離脱症状が出ることもあります。ただし、現在この薬を処方されている方は自己判断で止めるのではなく、かかりつけの医師に相談し、指示に従ってください。
メラトニン受容体作動薬(ロゼレム、メラトベルなど)
メラトニン受容体に働きかけて、体内時計を整えるサポートをします。睡眠と覚醒のリズムを整えることによって眠りのメカニズムにアプローチします。
メラトニン受容体作動薬は、睡眠導入剤として入眠を補助します。依存性はない薬ですが、ベンゾジアゼピン系の薬に比べて効果は穏やかです。副作用としてまれにめまいや頭痛などの神経症状、便秘や吐き気などの消化器症状を伴うことがあります。
オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ、ベルソムラ)
「オレキシン」とは覚醒を保つ働きをする物質です。オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシンの働きを弱めて眠りに導く作用を持ちます。入眠や中途覚醒に対してベンゾジアゼピン受動体作動薬やメラトニン受容体作動薬よりも効果が高く、依存性もないためよく用いられています。
不眠症の薬の副作用とリスク
メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬は、依存性のない薬としてよく処方されている薬です。しかしながら、リスクがないわけではありません。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には筋肉の緊張を緩める筋弛緩作用があることが知られています。薬のもたらすメリットとデメリット、リスクをきちんと理解しておきましょう。
持越し作用
持ち込し作用とは、薬の効き目が翌日にまで持ち越されてしまう現象です。薬の効果が残っていることが原因で眠気や頭痛、ふらつきや倦怠感などを感じることがあります。ベンゾジアゼピン系の薬を増量して服用したり、薬を変更したりした場合などに、効き目が強く表れるようです。
車の運転や機械の操作など、事故につながりかねないため、注意が必要です。薬を服用した翌日に、昼間もぼーっとしている、眠気があるというような場合は持越し作用を疑いましょう。
筋弛緩作用
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は筋肉の緊張を緩めてリラックス効果をもたらしますが、力が入りにくくなるというデメリットもあります。特に起き抜けにトイレに立った時など、ふらついて転倒する原因にもなるため、高齢者の使用には注意が必要です。
健忘
ベンゾジアゼピン系の薬は効き目が早いのがメリットですが、早く効きすぎるがゆえに薬を飲んだ後の記憶がすっぽり抜け落ちているという現象が起こりえます。特にアルコールと併用すると作用が強く表れるため、アルコールを飲んだときは薬の服用を控えましょう。
まとめ|不眠症の治療はセルフケアから
不眠症はいまや国民病とも呼ばれるほどありふれた病気です。成人のうち30%~40%は不眠症と診断され、睡眠薬を使用している人も5%におよびます。「眠れない」を我慢していると慢性不眠症に進行してしまうため、できるだけ早くに改善を図る必要があります。眠れない原因を取り除くとともに、眠りに入りやすい環境を整えましょう。
「眠れない」ことにあまりに囚われすぎることなく、まずはセルフケアから取り組んでみてください。眠りの環境を整えても効果が薄いと感じる時は、ぜひ一度ヒロオカクリニックにご相談ください。