動悸の原因とは?考えられる病気や治し方について解説
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緊張したり、不安を感じたりしたときに、胸がドキドキして息苦しくなるという経験をした方は少なくないでしょう。心臓は常に拍動して血液を送り出しています。
しかし、拍動を異常なまでに感じてしまい、緊張しているわけでもないのにドキドキすることがあります。このような症状が頻繁に発生する場合、まれに心臓の病気が隠れていることがあるため注意が必要です。
この記事では、動悸の原因や考えられる病気、治し方について解説します。動悸がして心配だという方は最後までお読みいただき、参考にしてください。
動悸とは
動悸とは、心臓の「ドキドキ」という拍動が強く感じられ、不快な状態のことです。感じ方は人によってさまざまですが、脈拍が早く感じられたり、逆に遅く感じたり、ところどころ脈が飛んだりすることもあります。動悸の原因は分からないことが多く、7人に1人は特定できないと言われています。
運動したり緊張したりしているときに心臓がドキドキする経験は誰にもあるものです。しかし、何もしていないのに急に胸がドキドキしたり苦しくなったりする場合は命にかかわる重篤な病気が隠れていることもあるため、動悸がするときは循環器内科、または内科を受診しましょう。
また、次のような場合は時間外であっても救急受診してください。
- 激しい動悸が30分以上続く
- 胸や背中の強い痛み
- 吐き気や嘔吐
- めまいやふらつき
- 息切れや呼吸困難を伴う
- 意識がなくなる
動悸の原因
動悸は健康な人にでも比較的よくあることで、その原因はさまざまです。ここからは、動悸が起きる原因について詳しく解説します。
自律神経の乱れ
心臓の収縮は、交感神経と副交感神経によってコントロールされています。長期にわたる強い精神的ストレスや睡眠不足、過度の疲労などによって自律神経のバランスが乱れると、心臓を動かす電気信号がうまく送れなくなり、動悸が起こる場合があります。
また、発熱やケガ、音や光、温度変化なども身体的ストレスとなり、自律神経が乱れる原因となることがあります。季節の変わり目など朝晩の温度変化が激しい時期に、動悸を含め体調が崩れやすいのは、自律神経の乱れが原因です。
規則正しい生活を送ることや、適度にストレスを発散することが大切です。
薬の副作用
医療機関で処方された薬や市販薬、漢方薬、サプリメントなどが原因となって動悸が起こることもあります。高血圧の改善や、狭心症の治療のために薬を服用している場合、血管を拡張する作用のために動悸が起きることがあります。喘息の薬を使用している方は、気管支拡張剤やβ刺激薬などの吸入薬や貼り薬などで動悸が起きることがあります。
そのほか、過敏性腸炎などで腸の蠕動運動を抑制するために、副交感神経の働きを弱める薬を服用することでも、動悸の症状があらわれる場合があります。さらに、糖尿病の治療による低血糖でも、同様の症状が起こることがあります。
このように、薬を飲んで動悸がしたり、逆に今まで飲んでいた薬を中断したりすることで動悸の症状があらわれることも考えられます。薬が原因で動悸が起きていると思ったら、自己判断せず、お薬手帳を持参のうえ医療機関を受診してください。
飲酒やカフェイン、タバコなど
アルコールには血管を広げる作用があります。血管が広がることによって血圧が下がるため、全身に血流を送るために心臓は拍動を増加させます。その結果、動悸を感じるのです。
交感神経を刺激するカフェインの摂取により動悸を感じることもあります。また、タバコに含まれるニコチンは交感神経と副交感神経の両方に作用し、動悸の原因となります。
動悸を伴うことがある病気
動悸を感じても、ほとんどの場合は病院受診の必要がなく、安静にすることで落ち着くでしょう。しかし、重篤な病気によって動悸が起きている場合もあるため注意しましょう。
心房細動
心房細動とは、4つに分かれた心臓の部屋のうち「心房」と呼ばれる部分が小刻みに震えて痙攣している状態のことです。自覚症状がなく、健康診断で指摘されて初めて気付く方もいます。心臓の血流が乱れることで血栓ができやすくなり、脳梗塞につながることもあるため注意が必要な症状です。
心房細動が起きると、心拍数が1分間に100回~150回以上にもなることがあります。動悸と共に息切れ、めまい、失神などがあるときは要注意です。心房細動は加齢とともに増えてくるといわれており、高齢者に多い症状です。
心筋梗塞・狭心症
動脈硬化で心臓へ血液送血が障害され、動悸を感じることがあります。
心臓弁膜症
心臓弁膜症とは、血液の逆流を防ぐためにある心臓の4つの弁のどこかに異常が起き、正常に働かなくなっている状態のことです。心臓弁膜症の原因はさまざまで、原因がわからないことも多くありますが、加齢やリウマチ熱、心筋梗塞などが関係します。
心不全
動悸と共に胸の痛みや足のむくみ、息切れ、体重増加などの症状があらわれることがあります。
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血とは、血中のヘモグロビンが減少し、酸素濃度が薄くなっている状態です。心臓には負荷がかかり、動悸を感じることがあります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンの分泌が過剰になり、全身のエネルギー代謝が異常に高くなる病気です。バセドウ病ともいい、自己免疫疾患のひとつです。
1000人中2人~6人ほどの確率で発症し、患者さんのほとんどは女性だといわれています。ジョギングしているような状態であり、動悸、息切れ、頻脈が見られます。
精神的なもの
緊張が続いたり、疲労や寝不足、ストレスなどで鼓動を必要以上に強く感じたりしてしまうことがあります。この場合、脈拍は正常であることが多いのが特徴です。
深呼吸したり、リラックスできる方法を見つけたりしてみてください。それでも症状が強く辛いときには、心療内科での受診やカウンセリングが有効かもしれません。
更年期障害
閉経の前後10年間を「更年期」と呼びます。更年期に入ると女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、さまざまな体調の変化やトラブルが起きます。自律神経がうまく働かなくなるため、それを動悸として感じるのです。
更年期を過ぎれば症状は治まることがほとんどですが、あまりにも動悸が強くて辛いときは婦人科を受診してください。
動悸の種類
「動悸」にはいろいろな種類があります。病院を受診する際には症状を医師へ伝える必要がありますので、ご自分の動悸がどれに当てはまるのかを考えてみましょう。
脈が飛ぶ・乱れる
脈がときどき飛んだり乱れたりすることがあります。これを「期外収縮」といいます。
心臓は常に一定のリズムで血流を送り出していますが、ときどき心臓を動かしている電気信号が早くなったり遅れたり飛んだりすることで脈が乱れるのです。基本的には誰にでも起こることであり、心配はありません。
ただし、心臓の持病がある方は、何らかの異常が起きている可能性が考えられますので、期外収縮を感じたときは、病院を受診されるようにおすすめします。
徐脈
一分間に脈拍が60回未満になり、脈が遅くなることを徐脈といいます。心臓の拍動が少ないために体が必要とする酸素を十分に送ることができず、静かにしている時や少し動いただけでもめまいや息切れを起こすことがあります。
遺伝的な原因や服用している薬の影響、また老化によって起きることがありますが、何らかの心疾患が隠れている場合もあるため、受診をおすすめします。
頻脈
一分間に脈拍が100回以上あり、脈が早くなることを頻脈といいます。脈拍は自律神経と深くかかわっているため、緊張したりストレスを感じたり、運動したりしているとき、また何らかの薬の影響によっても頻脈が起こることがあり、必ずしも病気というわけではありません。
ただし、頻脈と共に冷や汗が出る、立ち眩みがする、体重が減る、息切れ、胸痛がある、失神するなどの症状があるときは必ず受診しましょう。
動悸の検査
病院では動悸の原因を調べ、診断に応じて発作の予防や症状軽減のための処置・処方を受けられます。原因を知り、診断するためには検査が必要です。動悸の場合、どのような検査を実施するのかを見てみましょう。
安静時心電図検査
健康診断の時にもおこなう一般的な心電図検査です。体に12個の電極をクリップや吸盤で付けて、静かに横になっている時の心臓の動きを確認します。心臓の異常や、脈の乱れなどを検知できます。
血液検査
甲状腺機能の異常や貧血がないか、電解質の異常で心臓の動きが悪くなっていないかどうか、また、心不全の合併を調べるために必要です。
ホルター心電図
ホルター心電図は、24時間心電図とも呼ばれます。不整脈はずっと出ているわけではなく、検査をした時に異常を捉えられないことも多くあります。ホルター心電図を実施することで、自宅にいる間の不整脈を記録できる場合があります。
心臓超音波検査
心臓の大きさや動きを確認することができます。心臓弁膜症や心不全の有無などもわかります。
動悸の治療
動悸の原因が、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や、心筋症や心臓弁膜症などの心臓病にあると診断された場合には、根本的な治療をおこなうことがあります。ここからは、主に心臓に異常があると診断された場合の治療について解説します。
薬物療法
心臓の異常な電気信号を押さえるため、抗不整脈薬を使用します。主に頻脈に対して投与されます。
心房細動の発作で動悸が起きる場合は血栓ができやすくなります。血栓が脳に飛んで脳梗塞になる可能性があるため、血栓を予防するための抗凝固薬が処方されることもあります。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションとは、不整脈が起こる原因となっている部分を焼く、または冷凍凝固をおこなって不整脈を抑える治療です。
足の付け根の部分から、血管を通してカテーテルを心臓の中に入れ、高周波電流を流します。不整脈の原因となる部位を焼灼し、不整脈発生を抑えます。心房細動に対する根本的な治療として一般的です。
動悸を感じた際にチェックすべきこと
脈が測れるなら次のようなことをチェックしてみましょう。そしてそれらについて記録しておくと受診の際にスムーズです。このような情報は医師が診断をする際に重要な情報になります。
- 動悸を感じたときにしていたことや状況
- 動悸の具体的な症状
- 動悸の持続時間
- 動悸の経過について動悸がした時の脈拍数
- 脈拍の乱れ
脈拍は、手首の親指に近くで「トクントクン」と拍動している場所に、人差し指、中指、薬指を当てて一分間の脈拍数を測ってください。はじめはうまくいかないかもしれませんが、何度かやっているうちにだんだんと脈打っているところがすぐにわかるようになります。少し指を強めに当てる方がわかりやすいかもしれません。
脈拍は常に変動しています。静かにしている時の脈拍を知っておき、異常を感じたときにすぐに確認できるように練習してみましょう。
まとめ
動悸とは、心臓の拍動が強く不快に感じる症状のことです。ほとんどは心配ないものですが、まれに大きな病気が潜んでいることもあるので注意が必要です。普段から自分の安静時の脈拍数を知っておくと、動悸がするときにそれが早すぎるのか遅すぎるのかを知ることができます。心臓に負担がかかることを避けるため、動悸が続く時には一度医療機関を受診しましょう。
ヒロオカクリニックでは、動悸の診察をおこなっております。お困りの方は、循環器内科をご予約のうえ、ご相談ください
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