帯状疱疹はうつる? うつらない?~新宿区のワクチン助成も紹介
INDEX
帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは、ウイルスに感染して起きる皮膚の病気で、痛みをともなう水ぶくれが多数発生します。
「ウイルスが引き起こす病気」と聞くと、他人にうつしてしまうことを心配するかもしれませんが、原則「うつらない」と考えておいてよいでしょう。
ただし、帯状疱疹のうつる・うつらないは少し複雑な内容になっているので解説します。
また、帯状疱疹の予防にはワクチンが有効とされ、自治体のなかにはワクチンの費用助成を行っているところがあります。新宿区(東京都)もその1つで、記事の後半で同区の帯状疱疹ワクチン費用助成制度について紹介します。
結論:病気ごとうつることはないが、ウイルス感染は否定できない
先に結論を紹介すると、このようになります。
A:帯状疱疹という病気がそれごと他人にうつることは原則ない
B:ただし帯状疱疹を発症した人がウイルスを他人に感染させてしまう可能性はある
AもBも正しい説明なのですが、Bが正しいのならば「帯状疱疹はうつる、といえるのではないか」と思うかもしれません。
しかし単純にそう言い切れない事情があります。事を複雑にしているのは、帯状疱疹を起こすウイルスが、水疱瘡(みずぼうそう)のウイルスであるという点です。
そこで次に、水疱瘡について解説していきます。
水疱瘡を知る
水疱瘡は、多くの場合は子供が発症します。水疱瘡を引き起こすのは「水痘・帯状疱疹ウイルス」です。水痘(すいとう)は水疱瘡の正式名称と理解してよいでしょう。
水疱瘡の症状は、水ぶくれ(水泡、すいほう)や38度前後の発熱、全身の発疹ですが、抗ウイルス薬などを使って治療をすれば6日ほどで治ります(*1)。
治っても水痘・帯状疱疹ウイルスは体内に居続ける
水疱瘡を発症した人は終生免疫を獲得するため、その後、新たに水痘・帯状疱疹ウイルスを体内に取り込んでしまっても水疱瘡を発症することはありません。
しかし、水疱瘡を引き起こした「最初の水痘・帯状疱疹ウイルス」は、水疱瘡が治ったあとも体内に居続けます。
最初の水痘・帯状疱疹ウイルスが大人になって帯状疱疹を引き起こす
そして、この体内にいた水痘・帯状疱疹ウイルスが、大人になったころ再び活動を始めて、帯状疱疹を引き起こします。
ここまでの流れを箇条書きでまとめます。
子供のころ水痘・帯状疱疹ウイルスに感染する
↓
水疱瘡(≒水痘)を発症する
↓
水疱瘡が治って、水疱瘡の終生免疫を獲得する
↓
しかし水痘・帯状疱疹ウイルスは体内に居続ける
↓
大人になって体内の水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活動する
↓
帯状疱疹を引き起こす
水疱瘡を発症した大人どうしならうつらない
さて、あらためて「帯状疱疹がうつるのか、うつらないのか」問題を考えてみましょう。例として、子供のころにそれぞれ水疱瘡を発症した夫婦の場合で考えます。
例えば夫のウイルスを妻が取り込んでも活動しない
例えば、成人男性が帯状疱疹を引き起こしたとします。この人は自分の体内にあった水痘・帯状疱疹ウイルスによって、この帯状疱疹を引き起こしました。
ではこの成人男性が、その妻に帯状疱疹をうつすのかというと、うつしません。
なぜなら、妻は妻で、子供のころに水痘・帯状疱疹ウイルスに感染して水疱瘡を発症して、自分の体内に水痘・帯状疱疹ウイルスを持っているからです。妻が夫(この成人男性)の水痘・帯状疱疹ウイルスに接触して体内に取り込んでしまったとしても、その水痘・帯状疱疹ウイルスは妻の体内で活動することはありません。つまり、うつらないわけです。
したがって「水疱瘡を発症した大人どうしならうつらない」ということが言えます。
水疱瘡を発症していない子供にうつしてしまうかも
続いて、先ほど紹介した「B:ただし帯状疱疹を発症した人がウイルスを他人に感染させてしまう可能性はある」について説明します。
もし帯状疱疹を発症した成人男性に小さな子供がいて、その子がまだ水疱瘡を発症していない場合、成人男性の水痘・帯状疱疹ウイルスをその子に感染させてしまうかもしれません。
そうなると、その子は水疱瘡を発症し、将来、帯状疱疹になるかもしれません。このようなシチュエーションにおいては「帯状疱疹はうつる」といえるわけです。
帯状疱疹を発症するかどうかは免疫にかかっている
子供のころに水疱瘡を発症した人の多くは、成人しても水痘・帯状疱疹ウイルスを持っていると考えられます。それなのに帯状疱疹を発症する人と発症しない人がいるのはなぜでしょうか。
この違いは免疫力の差であると考えられます。
免疫が働いているうちは、体内の水痘・帯状疱疹ウイルスの活動を抑えられるので帯状疱疹を発症することはありません。しかし免疫力が低下すると水痘・帯状疱疹ウイルスがいわば暴走して帯状疱疹を引き起こします。
そして帯状疱疹が悪化すると、帯状疱疹後神経痛(PHN)という別の病気を引き起こす可能性があります。
そこでおすすめしたいのが帯状疱疹ワクチンです。
帯状疱疹を予防するにはワクチンが有効
成人の多くが子供のころに水疱瘡を発症しているわけなので、多くの人が帯状疱疹リスクを抱えていることになります。また、帯状疱疹の引き金になる免疫力の低下も、誰に起きても不思議はありません。
そこで考えなければならないのが、帯状疱疹の予防です。帯状疱疹予防のワクチンを打っておけば、高い確率で発症を予防できます。また、仮にワクチンを打ったあとに帯状疱疹を発症したとしても軽症で済む確率が高くなります(*2、*3)。
*2 国立感染症研究所 帯状疱疹ワクチンの導入について
*3 国立感染症研究所 帯状疱疹ワクチン ファクトシート(平成29年2月10日)
ワクチンの対象は50歳以上
帯状疱疹ワクチンの対象年齢は50歳以上です。
ワクチン接種は公的医療保険の対象外となるので、費用は全額患者さん負担となります。
ただ自治体のなかには費用助成を行っているところがあります。次の章で新宿区の事例を紹介します。
新宿区のワクチン助成の概要
新宿区は2023年4月から帯状疱疹ワクチン予防接種事業を行っています(*4)。その内容は以下のとおりです。
■新宿区の帯状疱疹ワクチン予防接種事業(費用助成)
・対象は50歳以上の新宿区民
・本人の自己負担額:1回4,000円または1回10,000円(ワクチンの種類によって異なる)
・自己負担額以外の費用を新宿区が助成する
・新宿区から予診票を受け取る
この制度は、本人に自己負担額以上の負担はさせない、という内容になっています。帯状疱疹ワクチンには2種類あって、「ビケン(生ワクチン)」の自己負担額は1回4,000円で、接種回数は1回になります。「シングリックス(不活化ワクチン)」の自己負担額は1回10,000円で、最大2回接種します。
費用助成を受けるには、新宿区から予診票を受け取る必要があります。
予診票を持って、新宿区内の指定医療機関でワクチンを接種することで費用助成が適用されます。
ヒロオカクリニックも、新宿区の帯状疱疹ワクチン費用助成の指定医療機関になっています。
まとめ~ワクチン費用助成はヒロオカクリニックでも使えます
記事の内容を箇条書きでまとめます。
・帯状疱疹は原則、大人から大人にはうつらないが、大人から小さな子供にはうつる可能性がある
・ウイルスに感染すると水疱瘡を発症し、そのウイルスは水疱瘡が治ったあとも体内に居続けて、大人になったときに帯状疱疹を引き起こす
・帯状疱疹は、ウイルスを保有している人の免疫力が低下すると発症する
・帯状疱疹の予防にはワクチンが有効とされている
・ワクチンは全額自己負担だが、新宿区は費用助成を行っている
・ヒロオカクリニックは新宿区の帯状疱疹ワクチン費用助成の指定医療機関である
帯状疱疹はつらい症状を引き起こし、治ったあとも帯状疱疹後神経痛に苦しめられることがあります。
「50歳以上になったら帯状疱疹ワクチンを」と覚えておいてください。