睡眠時無呼吸症候群の治療法とは?原因や検査法など解説
INDEX
日中の強い眠気や睡眠中の大きないびきが特徴的な睡眠時無呼吸症候群。車やバスの事故の原因としてニュースで見たことがある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群が起こるメカニズムや検査方法、治療の流れを解説します。セルフチェックの方法もご紹介しますので、自分や身近な人が睡眠時無呼吸症候群かもしれないと疑っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)はその名の通り睡眠中に無呼吸や低呼吸に陥る疾患です。この場合の無呼吸とは10秒以上にわたって気道の空気の流れが止まる(無呼吸)、あるいは呼吸が浅い(低呼吸)ことを指します。1時間に5回以上の無呼吸または低呼吸がありいくつかの症状が当てはまると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠時無呼吸症候群は日本の成人男性の約3~7%、女性の約2~5%の人に見られ、男性は40~50歳代が半数以上を占めています。女性は閉経後に見られるケースが少なくありません。
睡眠中の無呼吸によって深い睡眠が取れなくなると特徴的ないくつかの症状が見られるようになります。
いびき
睡眠中に大きないびきをかくようになります。疲れているときなどもいびきをかきやすくなりますが、途中でいびきが止まって無呼吸になり、また大きないびきが再開するのが睡眠時無呼吸症候群の特徴です。
睡眠中の覚醒
睡眠中に何度も呼吸が止まることで息苦しさを覚えたり、目が覚めてしまいトイレに起きたりします。
起床後のだるさや頭痛
夜中に何度も覚醒し、無呼吸によって酸欠状態になっているので、起床後にすっきりせずだるさや頭痛があります。日中も疲労感が続きます。
日中の眠気
夜間に深く眠れないことで、日中に強い眠気を感じます。集中力の低下、仕事のミス、気分の塞ぎ込みなどを引き起こし、運転のような危険を伴う作業中に眠気に襲われると大きな事故につながりかねません。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群は以下の3タイプがあります。
- ・空気が流れる道である上気道が閉塞してしまうことで起こる「閉塞型」
- ・呼吸を調整する脳の働きが低下して起こる「中枢型」
- ・無呼吸発作中に中枢型から閉塞型へ移行する「混合型」
このうち、大部分を占めるのが、閉塞型です。閉塞型の原因として、肥満、扁桃肥大、喉の筋肉のたるみ、生まれつきの形状などが挙げられます。
肥満
肥満の方は、舌やのど周りに脂肪があることで気管をふさいでしまうため、空気の通りが悪くなりがちです。学生時代(20歳)から10キロ以上太った人は注意が必要と言われています。
肥満は睡眠時無呼吸症候群の患者さんの半数以上を占めています。特に男性に多く、その比率は2~3:1です。これは男性に内臓脂肪がつきやすいことと関係していると言われます。
肥満は後述の口まわりの筋肉のゆるみにも繋がります。肥満を改善するだけで睡眠時無呼吸症候群が治ることもあり、適正体重を目指すことは睡眠時無呼吸症候群の治療において非常に重要です。
扁桃肥大
口蓋扁桃が肥大している状態です。主に口蓋垂周囲が腫れてしまうため、喉を圧迫し睡眠時無呼吸症候群を引き起こす可能性があります。
小児の場合、睡眠時無呼吸症候群の8割は、扁桃肥大が原因だと言われています。3歳から扁桃が発達し始め、7歳頃のピークに小さくなっていくからです。
上記で上げた年齢からくる原因の他、飲酒や喫煙などによりウィルスが感染することで肥大する生活習慣からくる事例や、生まれつきの顎の小ささからくる身体的原因が関係していると言われています。
扁桃は細菌やウィルスの影響を受けやすい場所です。
喉の筋肉のたるみ
仰向けに寝ているときなど、喉の奥の筋肉や舌が落ちてくることで気道が狭くなりいびきが発生します。肥満や老化によって口まわりの筋肉が弱くなると睡眠中に口が開き、舌を支えていることができなくなって落ちてきてしまうのです。
生まれつきの形状
生まれつき軌道の幅が小さい人や顎が小さい人、顎が後ろに引っ込んでいる人は気道が狭くいびきをかきやすいです。
睡眠時無呼吸症候群が引き起こす合併症
睡眠時無呼吸症候群は睡眠不足や日中の眠気が体に悪いだけでなく、高血圧、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞を引き起こす原因にもなりかねません。上質な睡眠が取れないことで精神のバランスが崩れ、うつ病になるリスクも上昇します。
睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック
思い当たる症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックをしてみましょう。睡眠中の様子を知っている家族などがいる場合は聞いてみてください。
- 1.大きないびきをよくかく(かいていると言われたことがある)
- 2.睡眠中に呼吸が止まっていると言われたことがある
- 3.就寝中、息苦しさを感じたことがある
- 4.日中、運転など集中しなければいけない場面でも強い眠気に襲われる
- 5.長時間寝ても疲れが取れない、だるい
- 6.朝起きると頭が痛い
- 7.心臓病がある
- 8.糖尿病である
- 9.高血圧である
- 10.浮腫がある
- 11.夜間にトイレに起きることが多い
- 12.肥満、メタボリックシンドロームの傾向がある
- 13.顎が小さい、二重顎
問1、2いずれかに当てはまるなら睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと言えるでしょう。
問3以降の項目に2つ以上当てはまる場合も睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
診断の確定には医師の診察が必要です。他の疾患が隠れている可能性もありますので、自分で断定せずに医療機関を受診してください。
睡眠時無呼吸症候群の検査を受けるには
検査を受けるためには、病院を受診しましょう。睡眠時無呼吸症候群を疑っているなら内科、循環器科、呼吸器内科、耳鼻咽喉科などで診察を受けてください。
中には、睡眠に特化したクリニックもあります。実際に睡眠時無呼吸症候群の検査を実施しているかどうかはクリニックによって異なりますので、受診前に近くのクリニックに確認するのがおすすめです。
いびきや無呼吸の症状がなく、不眠や眠気が気になるようであれば心療内科や精神科、脳神経内科を受診しましょう。
受診から検査の流れは以下の通りです。
- 1.呼吸器内科・耳鼻咽喉科を受診する
- 2.簡易検査を受ける
- 3.必要に応じて精密検査を受ける
- 4.確定診断・治療方法の決定
1.呼吸器内科・耳鼻咽喉科を受診する
問診に答えます。日中の眠気やいびき、既往歴などについて聞かれます。夫や妻など睡眠中の様子を知っている人と一緒に受診することが望ましいです。
2.簡易検査を受ける
問診で睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると、簡易的な検査を受けることになります。具体的には、自宅で検査できる機器を使い、睡眠中の様子を調べて睡眠時無呼吸症候群かどうか診断するのです。
検査内容として、酸素飽和度を調べる場合と、いびきの音や気流から呼吸状態を調べる場合があります。検査の結果によってすぐ治療に移行することもありますが、さらに詳しい検査に進むケースもあります。
3.必要に応じて精密検査を受ける
簡易検査より多くのことを調べられる精密検査です。終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査と呼ばれます。総睡眠時間における無呼吸や低呼吸の合計数がわかり、より正確な結果が得られます。
入院が必要ですが、仕事など生活への影響を少なくするために、仕事帰りに入院して翌朝退院できるように配慮しているクリニックもあります。
入院についてのスケジュールや持ち物、支払いについては各病院に確認してください。
検査項目は、主に以下の通りです。
- ・口と鼻の気流(空気の流れ)
- ・血中酸素飽和度(SpO2)
- ・胸部・腹部の換気運動
- ・筋電図
- ・眼電図
- ・脳波
- ・心電図
- ・いびきの音
- ・睡眠時の姿勢
検査では色々なセンサーを体につけて寝ることになりますが、痛みなどはなく、通常通り眠っていれば検査は終了します。普段の様子を調べるために、できるだけリラックスして臨みましょう。
4.確定診断、治療方法の決定
検査の結果と自覚症状から睡眠時無呼吸症候群だと診断された場合は、今後の治療の方針を医師とともに検討します。
検査の費用
睡眠時無呼吸症候群の検査は健康保険が適用されます。目安として、簡易検査は2,700円、精密検査で1~3万円程度です。入院での検査にはこの他に入院費用などもかかります。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法
睡眠時無呼吸症候群の治療は薬ですぐ治るようなものではなく、重症度にもよりますが基本的に長期間に渡り、根気が必要です。よく医師と話し合い、不安なども相談した上で決定してください。
治療には睡眠時無呼吸症候群の原因を取り除く根治療法と、症状を和らげる対症療法があります。どちらが優れているかということではなく、現在の状態に合った治療法を選ぶことが大切です。
肥満が原因の場合、体重の減量も重要な課題になります。生活習慣をあらため食事のコントロールや運動も必要です。
睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放置すると、眠気が重大な事故に繋がったり、心疾患や不整脈を引き起こしたりして最悪の場合死に至ることもあります。高血圧、動脈硬化、糖尿病といった合併症のリスクも上がりますので、放置せず積極的に治療しましょう。
治療には次のような種類があります。
- ・マウスピース治療
- ・CPAP療法
- ・外科手術
- ・食事療法
- ・運動療法
このほか、アルコールや喫煙を控えるのも効果的です。
マウスピース治療
寝ている間、専用の装具を歯に装着する治療方法です。装具はスリープスプリントとも呼ばれ、下顎を上顎より前に出した状態で固定して気道を確保します。
中等症までの患者さんには効果がありますが、重症だとあまり有効ではないという報告があります。疾患の程度を正しく診断した上で治療方法を選びましょう。
CPAP療法
CPAP(シーパップ)療法は閉塞性の睡眠時無呼吸症候群に対して欧米や日本で最も普及している治療方法です。CPAPとは「Continuous Positive Airway Pressure」の頭文字を取ったもので、経鼻的持続陽圧呼吸療法と訳されます。
CPAP療法では顔に専用の鼻マスクを取り付けて眠り、気道に空気を送り込みます。空気を送り続けることで気道が塞がらないようにするわけです。
CPAP治療は鼻マスクを正しく装着し、毎晩使用することで効果を得られます。違和感がある、鼻マスクがしっくりこない、お腹が張るなどうまくいかないときは装置の種類を変えるなど対策を取りましょう。鼻マスクは自分でこまめに洗って清潔に保つ必要があります。治療にかかる費用は月4,000円程度です。
外科手術
扁桃肥大やアデノイドが原因の場合、気道を塞ぐ部分を手術で摘出する治療方法(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)を取ることがありますが、現在ではレーザーによって切除する方法もあります。
その他、上下顎同時前進術という両顎の骨を切って前進させることで気道を拡大する治療方法があります。睡眠時無呼吸症候群への効果は高いと言われています。
食事療法
肥満が原因の場合、上記の治療とともに体重を減らすことでさらなる症状の改善が期待できます。不規則な食事や食べ過ぎを控え、食事内容も減量を意識したものに変えていきましょう。具体的には、以下の点に注意し、減量を目指してください。
- ・3食規則正しく食べる
- ・間食をしない
- ・腹八分目を心がける
- ・野菜を摂る
- ・夜9時までに食事を済ませる
- ・早食いやながら食べをしない
- ・砂糖の入ったドリンクを買わない
運動療法
内臓脂肪を減らすためには、運動が有効です。運動によってエネルギー消費が増え、脂質の代謝が改善されます。ウォーキングはすぐに始められ、無理なく行える有酸素運動です。一度に長距離歩くより、短い時間でもこまめに歩いたほうが効果はあります。
適切な運動の内容や強度は一人ひとり違うので、医師と相談の上で決定してください。運動療法と食事療法は並行して続けることでより効果が高まります。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は大きないびきが特徴的ですが、いびきがうるさいだけにとどまらず、その先に重大な疾患が潜んでいる怖い病気です。眠気による事故、睡眠の質の低下によるうつ状態、心臓の負担からくる心疾患など命の危険に晒されます。
セルフチェックで当てはまる点があったら、睡眠時無呼吸症候群を取り扱っているクリニックを受診し、検査と治療をおこないましょう。
ヒロオカクリニックでは、睡眠時無呼吸症症候群の診察をおこなっております。
睡眠時無呼吸症症候群の初診は、呼吸器内科(火曜日:長野医師、金曜日:中西医師)をご予約の上、ご相談ください。